「今後どのように事業を展開していけば良いのか・・・」
企業経営を存続させるためには、絶えず今後取るべき成長戦略を頭の中で考える必要があります。
そんな成長戦略の構築に役立つフレームワークに、「アンゾフのマトリクス」というものがあります。
有名なフレームワークなので耳にした経験がある方は多いかもしれませんが、実務でどう役立てれば良いかはいまいち分からないという方も多いかと思います。
そこで今回の記事では、成長戦略立案のフレームワークである「アンゾフのマトリクス」について、意味や使い方、実際にアンゾフのマトリクスを使って経営戦略を立てる例をご紹介します。
今後企業として取るべき成長戦略に悩んでいる経営者の方や、経営学を学んでいる方は必見です!
アンゾフのマトリクスとは
アンゾフのマトリクスとは、「製品」と「市場」の二軸から成長戦略を考えるフレームワークです。
「アンゾフの成長マトリクス」や「製品=市場マトリクス」とも呼ばれています。
アンゾフのマトリクスは縦軸に「既存市場」と「新規市場」、横軸に「既存製品」と「新規製品」を取った2×2の行と列で表され、この行と列に照らし合わせて実行すべき経営戦略を考えていきます。
なおアンゾフのマトリクス以外にも、経営戦略の策定に役立つフレームワークはたくさんあります。
下記の記事で、経営戦略策定に役立つフレームワークを紹介しています。
下記記事を参照し、状況や目的に合わせてフレームワークを使い分けるのがオススメです!
経営戦略は大きく分けて、経営資源の配分や事業領域の決定などを行う「企業戦略(成長戦略)」と事業ごとに競争に打ち勝つための戦略を考える「事業戦略(競争戦略)」に分けられます。企業戦略にせよ事業戦略にせよ抽象的なので、決めようと思っても「ど[…]
アンゾフのマトリクスの使い方
アンゾフのマトリクスは、「既存市場」「新規市場」「既存製品」「新規製品」 の4つの組み合わせにより、それぞれ採るべき経営戦略を構築します。
市場浸透戦略(既存市場×既存製品)
既存市場で既存の製品の収益をさらに伸ばそうとする場合は、市場浸透戦略を検討します。
簡単にいうと、「これまで自社の製品を使ってきたお客さんに対して、同じ商品を販売してより多くの売り上げを得よう」という経営戦略です。
「浸透」という言葉が表すように、既存市場で既存の製品での売上高をさらに増やすには、商品の宣伝強化により購入頻度や購入数を高めたり、価格を上げて収益を伸ばす必要があります。
ただし市場の成長が鈍化している場合や商品の標準化が進んでいる場合には、プロモーションや価格を変化させても十分な効果を得られない可能性が高いです。
そのため成長性を高めるという意味では、市場浸透戦略は難易度の高い経営戦略と言えます。
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新市場開拓戦略(新規市場×既存製品)
既存の製品を新規市場で販売する場合には、新市場開拓戦略を採用します。
新市場開拓戦略では、「これまで相手にしていなかった顧客層」や「新しい場所」で既存の商品を販売するのがセオリーです。
新しい顧客や新しい場所で既存製品に対するニーズが十分存在する場合には、新市場開拓戦略により十分な成長を期待できます。
しかし新規市場の中で既存製品に対するニーズがなければ、大きな収益増加は見込めません。
極端な例ですが、お年寄りが大好きな漬物や梅干しを、子供を新しいターゲットとして販売してもあまり大きな効果が見込めませんよね。
新市場開拓戦略を成功させるには、新規市場で自社の既存製品に対するニーズが十分あるかどうかを事前に確かめるのが重要です。
ニーズを確かめる際には、新規市場でテストマーケティングを行ったり、期間限定でサンプルを配布するなどの施策を行うのが効果的です。
新製品開発戦略(既存市場×新規製品)
新製品開発戦略とは、既存市場に新規製品を投入する形でさらなる成長を目指す成長戦略です。
自社の商品を買ってくれるお客さんに対して、既存製品に新機能をつけた新商品を販売したり、自社の技術を応用した新製品を販売するケースが典型例です。
アンゾフのマトリクスに照らし合わせると、飲料水メーカーやお菓子メーカーなどが新製品開発戦略を積極的に実施しています。
またAppleが定期的にiPhoneやMacBookの新製品を販売していますが、あれもアンゾフのマトリクスでいうところの「新製品開発戦略」に当てはまります。
新製品開発戦略では、新製品を開発する技術力やアイデアはもちろん、既存顧客に売り出すプロモーション施策を工夫するのも大事となります。
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多角化戦略(新規市場×新規製品)
多角化戦略とは、新規市場で新規の製品を販売する成長戦略です。
簡単にいうと、「これまで関わったことのない顧客に対して新商品を販売する」経営戦略です。
収益をもたらしてくれる顧客もいなければ基盤となる市場もない状態からスタートするため、アンゾフのマトリクスの中で最も難易度の高い成長戦略です。
多角化戦略を成功させるには、新市場(顧客)の特徴を徹底的に分析・理解することと、競合他社に勝つためのコアコンピタンス(強み)が欠かせません。
難易度こそアンゾフのマトリクスの中で一番であるものの、多角化戦略には他の成長戦略にはないメリットがあります。
多角化戦略に特有のメリットを下記の記事で紹介しているので、興味があれば参考にしてください!
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アンゾフのマトリクスの使い方は以上になります。
アンゾフのマトリクスを使うと、製品と市場の二軸から明確な成長戦略を打ち出しやすくなります。
アンゾフのマトリクスを用いて経営戦略を立てる例
アンゾフのマトリクスの使い方に対する理解を深めるために、具体的な例を用いて経営戦略を立ててみようと思います。
今回は架空の企業として、下記の設定を用います。
- 対象市場→フードコートに訪れる学生やファミリー層
- 製品→アイスクリーム(300〜400円台)
この企業を例にしてアンゾフのマトリクスを用いると、下記4つの成長戦略を導き出せます。
市場浸透戦略
- 学生やファミリー層が見る雑誌やテレビCMで宣伝を行う
- 価格を100円程度上げる
新市場開拓戦略
- 仕事帰りの会社員を新たなターゲットに加える
- 甘いものが好きな国に海外展開する
新製品開発戦略
- 新しい味のアイスクリームを販売する
- SNSにアップしたくなるような見た目のアイスクリームを販売する
多角化戦略
- 辛いもの好きな人向けにカレー屋を始める
- お年寄り向けに和菓子店を始める
アンゾフのマトリクスを用いると、上記のように様々な戦略を編み出せました。
なお経営戦略の策定にあたっては、適切なプロセスを経る大事となります。
下記の記事で経営戦略の策定プロセスについて解説しているので、参考にしてもらえれば幸いです。
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アンゾフのマトリクスに関するまとめ
今回の記事では、成長戦略を考えるフレームワーク「アンゾフのマトリクス」の意味や使い方、使用例をご紹介しました。
確かにアンゾフのマトリクスだけでは抽象的すぎるため、他のフレームワークを使うなどしてさらに具体的な戦略や施策を考える必要はあります。
ですが全く見当のない状態から、成長戦略の方向性を定める上では、アンゾフのマトリクスはとても有用なフレームワークです。
今後機会があった際には、アンゾフのマトリクスを活用してみてはいかがでしょうか?