Appleやシャネルの製品は、一体なぜあれほど世の中のお客さんを魅了しているのでしょうか?
確かに製品の性能や品質自体は、言うまでもなく十分優れているでしょう。ですがAppleやシャネルと同等レベルの品質や性能を持つ製品は他にも存在すると思います。
むしろ性能は品質だけで言えば、それ以上の製品を提供している企業は存在すると思います。
性能や品質が圧倒的に優れているわけではないAppleやシャネルが大成功している要因は、ブランドの持つ「ブランドエクイティ」にあると考察できます。
今回は、そんなブランドエクイティの意味や具体例などを分かりやすくお伝えしようと思います。
- ブランドエクイティの意味とは
- ブランドエクイティを強化するメリット
- ブランドエクイティの例〜ブランドエクイティ戦略で紹介されている5つの要素〜
- ブランドエクイティを測定する方法
- ブランドエクイティを創出(強化)する方法・戦略
- ブランドエクイティのまとめ
ブランドエクイティの意味とは
ブランドエクイティとは、ブランドが持つ資産価値を意味します。
ブランドを単純なロゴや商品名ではなく、企業に収益をもたらす価値のある資産として捉える考え方により、ブランドエクイティという概念は生まれました。
この考え方は、身近な例で考えてみるとしっくりくるのではないでしょうか?
たとえばシャネルやヴィトンといったブランド製品は、「シャネル」や「ヴィトン」というブランドの持つ価値があるからこそ、値段が高くても売れるのです。
ディズニーランドも、「ディズニー」という名前の持つブランド力があるからこそ、老若男女から愛されるテーマパークとなっています。
このようにブランドは、目には見えないものの企業に利益をもたらす「資産」として見なせます。
製品の価格(価値)を高めたり固定のファンを増やす上で、ブランドエクイティの創出は企業にとって非常に重要なマーケティング施策です。
ブランドエクイティを強化するメリット
上記でお伝えした通り、ブランドエクイティを強化することで得られるメリットは非常に大きいです。
例えば既存顧客の固定客化や購買頻度・購買単価の増加につながり、売り上げや利益を長期的に伸ばすことが可能です。
また、既存顧客によるポジティブな口コミや評判により、新規顧客を増やせる可能性もあります。
もしくは確固たるブランドエクイティを構築すれば、価格競争に巻き込まれて利益を得られなくなる状況を回避したり、同じブランド名で新しい事業を始める際に顧客を早期から獲得できる効果も得られるでしょう。
以上の通りブランドエクイティを作り上げると、長期的に事業を成長させる上で様々なメリットを得られます。
ブランドエクイティを作り上げる具体的な方法は、最後の方にご説明します。
ブランドエクイティの創出方法を知りたい方は、最後の方までぜひ読み進めてください!
ブランドエクイティの例〜ブランドエクイティ戦略で紹介されている5つの要素〜
ブランドエクイティの理論を提唱したアーカー氏は、ブランドエクイティの具体例(組成要素)として「ブランドロイヤルティ」、「ブランド知名度」、「ブランド連想」、「知覚品質」、「その他のブランドエクイティ」の5つを挙げています。
ここでは、ブランドエクイティの組成要素を実際の例を交えつつ解説します。
ブランドロイヤルティ
ブランドロイヤルティとは、あるブランドに対して消費者が持つ「愛着や忠誠心」を意味します。
例えばシャネルの財布が好きな人は、シャネルというブランドに対して強い愛着を持っているため、新商品が出るたびに購入するでしょう。
このように、一つのブランドに対して愛着を持っている状態は、「ブランドロイヤルティがある」と言えます。
当然ながらブランドロイヤルティが高いほど、継続的にそのブランドの商品を継続的に買う可能性が高くなります。
ブランド知名度
ブランド知名度とは、ブランド名が知られている度合いを意味します。
例えば「シャネル」や「グッチ」などのブランドは比較的誰でも知っているので、ブランド知名度が高いです。
なおブランドの名前を単純に知っているよりも、ブランドの具体的な中身(商品の特徴など)について知っている方が、ブランドエクイティとしての価値は高いです。
具体例をあげると、シャネルという名前を知っているだけの人よりも、シャネルの商品のデザイン性や価格について具体的に知っている人の方が、商品を購入してもらえる可能性が高く、企業にとっては好ましい存在です。
ブランド連想
ブランド連想とは、あるブランド名を耳にした際に思いつくイメージです。
例えばシャネルなら「高級」、スタバなら「接客態度や店内の雰囲気が落ち着く」といったものがブランド連想になります。
思いつくイメージは個性的(ユニーク)かつ強いものである方が、ブランドエクイティとしての価値は高いと言えます。
要するにありきたりでぼんやりとしているブランド連想よりも、独特ではっきりしたイメージの方が、ブランドの価値を高めるのです。
知覚品質
知覚品質とは、消費者がブランドに対して感じている品質を意味します。
知覚品質が良いほど、ブランドエクイティとしての価値は高くなります。
ただし企業の感じる品質ではなく、「消費者」が感じる品質である点に注意が必要です。
企業側が高品質であると思っていても、消費者が低品質であると感じた場合、そのブランドの持つ知覚品質は低いということです。
消費者は製品の性能などといった事実的な部分のみならず、信頼性やサービスの質などといった感情的な部分によっても品質を判断します。
よって知覚品質(ブランドエクイティの価値)を高めたいのであれば、性能向上だけでなく、信頼性やサービスの質の向上にも努める必要があります。
その他のブランドエクイティ
知的財産権(商標や特許)や取引先との関係性など、上記以外の無形資産もブランドエクイティを組成する要素となります。
ブランドエクイティを確立したいのであれば、無形資産全体の強化が不可欠というわけです。
ブランドエクイティの組成要素の例は以上となります。
ブランドエクイティの例(組成要素)に対する理解をさらに深めたいのであれば、アーカー氏の理論を実際に見るのが一番です。
オススメなのは、アーカー氏が執筆した「ブランドエクイティ戦略」をわかりやすく解説した本「ブランド論」です。
ブランドエクイティ戦略を日本語訳した本もあるものの、訳し方がわかりにくいという声もあるので、こちらの本で勉強するのをオススメします。
価格もこちらの方が安いのでお買い得です!
ブランドエクイティを測定する方法
ここまでの話を聞いて、「ブランドエクイティってどうもぼんやりとした概念だなあ」と感じた方もいると思います。
確かにブランドエクイティはぼんやりとした概念ですが、ブランドエクイティの価値が大体どのくらいかを測定する方法はあります。
正確に測定できるわけではないものの、そのブランドがどのくらいの価値(ブランドエクイティ)を持つのかを推測することは可能です。
今回は、「楽天インサイト株式会社」顧問であり、日本マーケティング・リサーチ協会の会長も務めた三木康夫氏によるコラムを基に、ブランドエクイティの測定方法をご紹介します。
測定方法①:WTP(Willing To Pay)
WTPとは、ブランドエクイティを価格プレミアムの大きさで測定する手法です。
この方法では、同じ商品にブランド名を付ける場合と付けない場合で、お客さんがそれぞれに対して「いくらまでなら支払えるか」を比較します。
そしてブランドの有無によって生じた金額差を、ブランドエクイティの持つ価値だとみなします。
例えば全く同じ財布についてお客さんが、ヴィトンというブランド名をつけた場合は20万円まで払って良いと答えた一方で、ノンブランドの場合は1万円までしか払えなかったとしましょう。
この場合、差額の19万円がヴィトンというブランドの持つブランドエクイティであると見做すことができます。
測定方法②:NPS(Net Promoter Score)
NPSとは、あるブランドを他人に伝えたいと思う人の割合(NPS)から、ブランドロイヤルティを測定する方法です。
こちらの手法では、「あなたはこの商品を知人にオススメする可能性はどのくらいありますか?」という質問を顧客に投げかけて、オススメしたい度合いを「0(全くオススメしたいと思わない)〜10(強くオススメしたいと思う)の10段階」で回答してもらいます。
そして9〜10と答えた人を推奨者、0〜6と答えた人を批判者に分類し、「推奨者の割合から批判者の割合を差し引く」ことでNPSを求めます。
NPSの計算結果は、そのブランドに対して批判者しかいない-100から、熱狂的なファンしかいない+100までに収まります。
NPSの測定結果が+100に近いほど、そのブランドの持つブランドエクイティは強い(好ましい)と判断できます。
比較的簡単にブランドエクイティを測定できる手法として、多くの企業で活用されています。
※以下の記事を参考にしました!
ブランドエクイティを創出(強化)する方法・戦略
ブランドエクイティの意味や例を知っても、どうやってブランドエクイティを作り上げるかを知らなければ、実務的な観点では意味がありませんよね。
確固たるブランドを創出する企業が少ないことから分かるように、ブランドエクイティを作り上げるのは簡単ではありません。
優れたブランドエクイティを作り出す確実な方法は、残念ながら見つかっていません。
ですので、自身で試行錯誤しながらブランドエクイティを作り出す必要があります。
とは言え、ブランドエクイティを作り出す方法を思いつくのは難しいと思います。
そこで今回は、経営学やマーケティングの様々な理論や事例を勉強したり、実際に新規事業に携わった経験から、ブランドエクイティを創出する方法(戦略)について自分なりの考察をお伝えしようと思います。
徹底的な顧客志向を実践する
ブランドエクイティを創出する上で、もっとも重要なのは「徹底的な顧客志向」だと思います。
良いブランドかどうかは、企業ではなく消費者の判断により決まります。
企業がどれほど良いものだと思っても、消費者がイマイチだと思ったらそのブランドはイマイチなのです。
消費者に良いブランドだと思ってもらう(要するにファンになってもらう)には、消費者に好まれる形で商品やサービスを提供する必要があります。
単純に顧客のニーズに合う商品・サービスであるのは当然として、価格やデザイン、販売方法、プロモーションの方法など、あらゆるものをお客さんに好まれる形で実施しなくてはいけません。
例えばどれほど自分が好きな商品でも、プロモーションに大嫌いな芸能人が出ていたら、それだけでそのブランドに対するイメージが下がってしまいます。
細部にまでこだわって初めて、ブランドエクイティは創出されると思います。
他社とは違うユニークな独自性をアピールする
お客さんに好まれる方法で商品やサービスを提供できても、他の企業と同じことをしていたら、価値のあるブランドエクイティは構築できません。
どこの会社から購入しても変わらない場合、わざわざ特定ブランドのファンになる人はいないのは想像に難くないでしょう。
価値のあるブランドエクイティを構築するには、他の会社とは異なるユニークな独自性を創出し、それを顧客にアピールする必要があります。
例えばApple製品のような洗練されたデザインや、ディズニーのようにオリジナルのキャラクターなどのように、業界他社とは異なる一面があれば、顧客にブランドのイメージを強烈に植え付けることができます。
独自性を確立してそれをアピールするのは簡単ではありません。
ですが一度顧客に好まれる独自性を創出すれば、確固たるブランドエクイティを創り出すことができると思います。
ブランドエクイティのまとめ
ブランドエクイティを持つことで、企業は長期的に大きな利益を得られるようになります。
ブランドエクイティを育てるのは簡単ではありません。ですが確固たるブランドを創出した際のメリットは大きいので、挑戦する価値は十分あると思います。
今回お伝えした情報を基に、ご自身のビジネスでブランドエクイティの強化にチャレンジしてくださると嬉しいです!