ブルウィップ効果とは?原因や影響、対策を解説

たとえば急な猛暑によりアイスクリームの需要が増えたとき、一般的には小売→卸売→製造→原材料業者などの順番で、需要が増加した事実が伝達されます。

それぞれの企業は、伝えられた情報を基に、生産量の増減を図ります。

しかし実際のビジネスでは、情報が伝達される過程で、実際の需要量の変化よりも大きな需要変化と認識されてしまうケースがあります。

その結果、製造や卸売などの現場では、過剰在庫や欠品などの事態に発展する恐れがあります。

こうした現象は「ブルウィップ効果」と呼ばれ、サプライチェーン(商品を販売するまでの流れ)上にある企業は対策を考えなくてはいけません。

今回の記事では、そんなブルウィップ効果の意味や原因、影響、対策を分かりやすく解説します。

ブルウィップ効果とは?

ブルウィップ効果とは、販売現場でのわずかな需要量の変動がサプライチェーンの上流で過剰に認識された結果、必要以上に需要予測が増幅する現象です。

簡単にいうと、「販売現場(川下)で認識した小さな需要変動が、卸売→工場→原材料の提供業者と川上に行くにつれて、大きな需要変動であると認識される現象」です。

ブルウィップとは、家畜である牛を扱うときに使うムチ(鞭)を意味します。

牛に使うムチを振ったとき、手元では小さな揺れとなる一方で、手元から遠くなるほど大きな揺れとなります(下記参照)。

(著作権者:Stern~commonswiki、<https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%AB%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%83%E3%83%97%E5%8A%B9%E6%9E%9C>)

川下から川上に向かうにつれて需要変動が増幅する様子が、ムチを振るう様子に似ていることから、「ブルウィップ効果」と呼ばれています。

サプライチェーンに当てはめると、手元が商品を販売する小売店、手元から離れた場所が卸売や工場(製造)、原材料の供給元となります。

小さな需要の変動が生じた際、小売店では需要の変動をありのまま認識します(上記の図で言うと手元付近)。

しかし小売店から卸売→工場→原材料の供給元とサプライチェーンの川上に向かうほど、認識する需要変動は実際よりも大きくなります。

「こんなこと起こり得るのか?」と思うかもしれませんが、実際にサプライチェーンの現場ではこうした事態が頻繁に発生していると言われています。

ブルウィップ効果の具体的な事例

ブルウィップ効果の理解を深めるために、簡略化した事例を使って考えてみましょう。

たとえばアイスクリームを消費者に提供するまでに、原材料業者→製造業者→卸売業者→小売業者というサプライチェーンを経ると仮定しましょう。

突然の猛暑により、小売業者が従来よりも需要が100個多くなると予想したとします。

ブルウィップ効果が生じると、小売業者から商品を受注した卸売業者は、さらなる需要増加に備えて、120個のアイスクリームを製造業者から仕入れることになります。

そして120個の製造を依頼された製造業者は、こちらも需要の増加に備えて150個分の原材料を業者から仕入れることになりました。

さて、このケースではブルウィップ効果により、川上の企業ほど需要変動を大きなものと捉えてしまっています。

最も川上にいる原材料業者に関しては、実際には100個の需要増加を、150個の増加と捉えてしまっています。

事業の規模が多い実際のビジネスでは、ブルウィップ効果により数万個〜数百万個もの差異が生じることもあり、ビジネスに大きな影響を与えかねません。

ブルウィップ効果が生じる原因

そもそもブルウィップ効果は、どのような原因で生じるのでしょうか?

一般的にブルウィップ効果が生じる背景には、下記3つの原因があると言われています。

川上にいくほど需要変動の原因が不透明になる

ブルウィップ効果が生じる大きな原因は、川上に向かうにつれて、需要変動の原因が不透明になることです。

たとえば小売店では需要増加の原因を分かっていても、それを川上の企業に伝えなかった場合を考えてみましょう。

川上にある企業は、過剰在庫による保管コストの上昇や、欠品による機会損失を避けたいと考えます。

しかし川下の企業から需要変動の原因を知らされないと、原因が分からない状態で突然発注量が増えたことになります。

原因が分からなければ、どのくらいの大きさの需要変動がいつまで続くかを見極めることが困難となります。

その結果、過剰在庫や欠品を恐れて、実際よりも需要変動を大きいものと認識する事態に発展する場合があるのです。

需要予測の精度が悪い

需要予測の精度が悪いほど、ブルウィップ効果は生じやすくなります。

需要予測が正確ならば、サプライチェーン上の各企業はそれぞれ正確に需要を予測し、結果的にブルウィップ効果は生じません。

しかし需要予測が不正確だと、小売や卸売、製造など、サプライチェーン上の企業それぞれが実際とは異なる需要を予測し、川上の企業に発注します。

その結果、川上に向かうほど実際とはかけ離れた認識となってしまうのです。

リードタイムの長さ

ビジネスに限らず、近い将来のことは正確に予測しやすい一方で、遠い将来のことは予測しにくいと言われています。

そのため、リードタイム(製品を生産してから最終消費者に提供するまでの期間)が長いほど、需要予測の精度が低下し、ブルウィップ効果が発生しやすくなります。

ブルウィップ効果がビジネスに及ぼす影響

ブルウィップ効果が生じると、サプライチェーンに属するあらゆる企業に深刻な悪影響を及ぼす可能性があります。

具体的には、下記2つの影響が生じ得ます。

過剰在庫によるコスト増加

需要増加が実際よりも大きなものと認識された場合、川上の企業(供給側)では、過剰在庫を抱えるリスクが高まります。

過剰な在庫を持った場合、その保管に多大なコストが生じてしまいます。

欠品の発生による機会損失

需要減少が実際よりも小さなものと認識された場合、川上の企業(供給側)では欠品が発生し、本来得られたはずの収益を得られなくなるリスクが高まります。

また、ブルウィップ効果の程度が大きいと、需要減少に備えて従業員の解雇などが生じるリスクも高まるでしょう。

ブルウィップ効果の対策

コストの増加や機会損失を回避するには、ブルウィップ効果が生じないように対策を講じる必要があります。

具体的には、下記4つの対策がブルウィップ効果を抑制する上で効果的です。

上流から下流までリアルタイムで情報を共有する(SCMの実施)

ブルウィップ効果が生じる原因は、上流の企業が需要変動の原因を正確に把握できていないことにあります。

そこで上流から下流まで、サプライチェーン上にいるすべての企業がリアルタイムで情報を共有するようにすれば、ブルウィップ効果が生じるリスクを大幅に削減できます。

こうした上流から下流までが、リアルタイムで情報を共有する考え方は、経営学の専門用語で「サプライチェーンマネジメント(SCM)」と呼びます。

ブルウィップ効果を防止する上で非常に効果的なので、SCMはしっかりと実践したい部分です。

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垂直的統合

サプライチェーン上の企業同士が、M&Aにより垂直的統合を図るのもブルウィップ効果を抑制する方法の一つです。

たとえば原材料業者が製造や卸売、小売などの会社を買収すれば、一つの企業だけで調達から販売までを行えます。

その結果、社内のみで需要変動を把握できるため、ブルウィップ効果が生じるリスクを大幅に減らすことが可能です。

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リードタイムの短縮

ブルウィップ効果が生じる原因の一つには、長いリードタイムの存在もあります。

そこでリードタイムを短くできれば、近い将来の需要だけ予測すれば済むようになるため、需要予測の精度が高くなります。

需要予測の精度が高まれば、ブルウィップ効果は生じにくくなるわけです。

ジャストインタイム生産方式の導入

ジャストインタイム生産方式の導入も、ブルウィップ効果の防止策として効果的です。

ジャストインタイム生産方式とは、すべ手の工程が後工程の要求に合わせて、必要なものを必要なときに必要な量だけ生産・供給する方式です。

この考え方を応用して、小売店が必要としている量だけを生産するようにすれば、ブルウィップ効果は理論上起こり得ません。

ただし、その都度川下企業からの要求量だけを柔軟に生産するのは簡単ではありません。

あくまで、ブルウィップ効果を防止する方法の1つとして、頭の片隅に入れていただければ問題ありません。

ブルウィップ効果のまとめ

ブルウィップ効果は、実際のビジネスでも頻繁に起こっている問題です。

しかしながら多くの場合、実効的な対策が取られておらず、その結果大きな損失が生じています。

この記事をお読みになった方は、思わぬ損失を被らないためにも、ぜひブルウィップ効果が生じないように対策を講じていただければと思います。

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