経営分析とは?手法や指標、ツールをご紹介!

勘や経験ばかりに頼っていると、投資で大損したり経営改善の効果がいまいち発揮されない可能性があります。

投資判断や経営改善で失敗しないためには、合理的な視点から対象となる企業の財務状況を分析することが重要です。

合理的な視点で財務状況を分析する際には、「経営分析」が非常に役立ちます。

今回の記事では、経営分析とは何かを、具体的な手法や指標を交えつつ解説します。

経営分析とは?

経営分析とは、財務諸表(貸借対照表や損益計算書)の数値を用いて、分析対象となる企業の経営状態を分析することです。

具体的には、分析対象となる企業の収益性や安全性、効率性などを分析し、問題点や優れた部分を見つけ出します。

簡単にいうと、経営分析とは「会社の健康診断」のようなものです。

あらゆる観点から経営状態を分析することで、分析対象の良いところや問題点などを明確にし、必要に応じて改善を施していくのが経営分析の趣旨というわけです。

経営分析を行う目的

経営分析は、主に「経営者や財務担当者が自社の経営状態を分析するケース」と「金融機関や投資家が融資・出資先の経営状態を分析するケース」という2つの場面で実施されます。

つまり、経営分析の分析主体(誰が分析するか)は、「経営者・財務担当者」または「外部の利害関係者(金融機関や投資家など)」のいずれかとなるわけです。

経営分析の目的は、分析主体によって異なるので注意しなくてはいけません。

分析主体が経営者や財務担当者の場合、主に以下の目的で自社の経営分析を行います。

・現時点での問題点や優れた部分の洗い出し

・経営改善の具体案の策定

・経営戦略や財務戦略の立案

一方で分析主体が外部の利害関係者(金融機関や投資家など)の場合、主に以下の目的で投資先や融資先の経営分析を行います。

・投資(融資)可否の判断

・投資(融資)条件の決定

・得られるリターンの計算

経営分析を行うメリット

経営分析を行うメリットは、「客観的に現状把握や改善策の策定、投資可否の判断などが可能となる点」です。

たとえば「収益力の高さ」が自社の強みと思い込んでいても、実際にはあまり収益力が高くない可能性は十分考えられます。

経営者自身の主観や希望などが入り、過大評価する傾向があるからです。

一方で経営分析では、会計のルールに基づいて作成された財務諸表の数値を使って、収益性や安全性などを分析します。

そのため、主観や楽観的観測が入りにくく、客観的に現状を把握することが可能です。

客観的に経営状態を把握することで、的確な意思決定も可能となるでしょう。

経営分析の手法と代表的な指標

経営分析の手法は、分析の観点によって複数の種類に大別されます。

この章では、特にビジネスで重要となる「収益性分析」、「安全性分析」、「効率性分析」という3種類の手法について、概要と代表的な指標を解説します。

収益性分析

収益性分析とは、企業が利益を生み出す力を分析する手法です。

収益性分析の指標は、総じて投下したした資本に対してどれほどの利益を獲得したかを表します。

利益率であるため、数値が大きいほど収益性があると判断できます。

利益を金額ではなく「資本に対する割合」で分析することで、事業規模が異なる企業間での比較が可能となっています。

収益性分析の指標としては、主に以下の3種類があります。

総資本事業利益率(ROA)

総資本事業利益率とは、企業がすべての資本(資産)を使って経営を行った結果、どのくらいの事業利益を得られたかを表す指標です。

資産に対する利益の割合であることから、「ROA(Return On Assets)」とも呼ばれています。

なお事業利益とは、営業利益に受取利息と受取配当金を足した利益であり、「本業の営業活動および財務活動による成果の合計」を表します。

つまり総資本事業利益率は、経営活動全体でどのくらいの収益性を誇っているかを表している指標と言えます。

・総資本事業利益率(%) = (事業利益 ÷ 総資本) × 100

自己資本利益率(ROE)

自己資本利益率とは、返済義務のない自己資本を使ってどのくらいの利益を稼いだかを表す指標です。

自己資本に対する利益の割合であるため、「ROE(Return On Equity)」とも呼ばれています。

なお自己資本は、株主から企業が調達した資本でもあります。

したがって、ROEは投資家やオーナー経営者が重視する経営分析の指標となっています。

・自己資本利益率(%) = (当期純利益 ÷ 自己資本) × 100

売上高総利益率(粗利益率)

売上高総利益率(粗利益率)とは、売上高に占める総利益(粗利益)の割合を表す指標です。

総利益とは、売上高から仕入れや製造などにかかった費用(売上原価)を引いた利益です。また、販管費や営業外費用などを差し引く前の利益でもあります。

以上より売上高総利益率は、企業が提供している商品・サービス自体が持つ収益性を表していると言えます。

・売上高総利益率(%) = (売上総利益 ÷ 売上高) × 100

安全性分析

安全性分析とは、財務面から見た企業の安全性や、企業の支払能力を分析する手法です。

基本的に安全性分析では、貸借対照表に記載された資産と負債・純資産のバランスを見ていきます。

安全性が低いほど、財務面で不安定であることや、支払能力が低いことを表しており、倒産リスクが高いと判断できます。

なお安全性分析の指標は、収益性分析と同様に割合(%)で表します。

ただし収益性分析とは異なり、指標によって数値が高い方が良いかどうかは変わってくるので注意です。

安全性分析の手法は、大きく「短期安全性分析」、「長期安全性分析」、「資本調達構造分析」の3種類に大別されます。

今回は、手法ごとに代表的な指標を1つずつ紹介します。

流動比率

流動比率とは、短期安全性の経営分析に用いられる指標です。

具体的には、1年以内に返済義務がある流動負債に対して、1年以内に現金化できる流動資産がどのくらいあるかを表します。

流動比率が高いほど短期安全性は高いと判断でき、最低でも100%、理想としては200%以上あることが求められます。

100%を下回っている場合には、流動負債を返済しきれずに資金繰りが悪化するリスクが高いので注意を要します。

・流動比率(%) = (流動資産 ÷ 流動負債) × 100

固定比率

固定比率とは、長期安全性の経営分析に用いられる指標です。

具体的には、1年以内には現金化されない固定資産が、返済義務がない自己資本によってどの程度カバーされているかを表します。

固定比率が低いほど長期的な安全性は高いと判断でき、100%であることがベストだと言われています。

・固定比率(%) = (固定資産 ÷ 自己資本) × 100

自己資本比率

自己資本比率とは、資金調達の構造における安全性を分析する際に用いる指標です。

具体的には、総資本に占める自己資本の割合を表します。

返済義務がない自己資本の割合が高いほど、資金繰りが安定しやすいです。

したがって原則的には、自己資本比率は高いほど安定性が高く好ましいと言えます。

ただし、負債を一切利用しないと、事業の成長速度が停滞する恐れがあるので注意を要します。

・自己資本比率(%) = (自己資本 ÷ 総資産) × 100

効率性分析

効率性分析とは、どのくらい効率的に資産(資本)を活用できているかを分析する手法です。

効率性分析の手法では、「回転率」または「回転期間」という指標を用います。

回転率は資本の使用効率性を表しており、数値が高いほど効率性が高い点で好ましいと言えます。なお回転率では単位に回数(〜回)を用います。

一方で回転期間は投下した資本を回収するまでの期間を表しており、数値が小さいほど短い時間で資本を回収できていると判断できます。なお回転期間では、単位に「年」や「月」、「日」を用います。

今回は、回転率と回転期間それぞれについて、代表的な指標を1つずつ紹介します。

総資産回転率

総資産回転率とは、総資産をどのくらい効率的に使って売上高を獲得できたかを表す指標です。

たとえば総資産回転率が10回ならば、総資産の10倍にあたる売上高を稼いだことを表します。

・総資産回転率(回) = 売上高 ÷ 総資産

棚卸資産回転期間

棚卸資産回転期間とは、棚卸資産を販売するまでにかかる期間(在庫として滞留する期間)を表す経営分析の指標です。

例えば棚卸資産回転期間が10日の場合、在庫を販売するまでに10日かかったことを表します。

棚卸資産回転期間が短いほど、在庫の保管コストなどを削減できるので好ましいと言えます。

・棚卸資産回転期間(日) = 棚卸資産 ÷ 1日あたり平均売上高
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経営分析に役立つツール一覧

手法を一つひとつ見てきて分かる通り、経営分析では多量な計算をこなさなくてはいけません。

計算量が多いため、本業の活動と並行して行うのは決して簡単ではありません。

そこでおすすめなのが、経営分析ツールの活用です。

ツールを活用すれば、財務諸表を作成する手間を省いたり、財務諸表の数値を入力するだけで簡単に経営分析の指標を算出できたりします。

この章では、経営分析に役立つ3つのツールをご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

経営自己診断システム(中小機構)

経営自己診断システムは、国の機関である中小機構が提供する無料ツールです。

こちらのツールでは、財務諸表に記載されているデータ(売上高や資産など)を入力することで、簡単に経営分析の指標を算出してくれます。

成長性や効率性、安全性はもちろん、今回ご紹介していない成長性や生産性といった指標まで算出してくれる点が魅力です。

また、資金繰りに関連する指標を他社と比較した場合の良し悪しも表示してくれるため、詳細に経営分析したい場合に最適です。

関連サイト:経営自己診断システム 中小機構

ke!San(カシオ)

ke!Sanは、時計で有名なカシオが提供している無料の経営分析ツールです。

こちらのツールでは、財務諸表の数値を入力することで、成長性、収益性、安全性、効率性に関する指標を算出できます。

中小機構のツールと比べると分析できる項目は少ないですが、入力する項目が少ない上に、計算したい指標のみを選ぶことができます。

以上より、簡易的に経営分析を行いたい方におすすめのツールとなっています。

関連サイトke!san カシオ

やよいの青色申告オンライン

ここまで経営分析に役立つツールを紹介しましたが、そもそも貸借対照表や損益計算書が手元にないと、ツールを活用することはできません。

こうした財務諸表を手書きで作成するのは面倒であるため、会計ツールを活用して作成するのがおすすめです。

数ある会計ツールの中でも、経営分析にも役立てる上では「やよいの青色申告オンライン」が特におすすめです。

こちらのツールでは、日々の取引を入力していくだけで、自動的に貸借対照表や損益計算書を作成できます。

日々の取引さえ入力していれば、一目で営業利益や流動資産といった指標を確認できるため、経営分析の手間を大幅に削減できます。

また、取引先別や科目別に損益を表示する機能もついているため、経営分析のみならず日々の経理作業にも役立ちます。

関連サイト:やよいの青色申告オンライン

経営分析のまとめ

経営分析は、自社の経営状態を把握・改善するのはもちろん、投資可否を判断する際にも役立つ手法です。

収益性分析や安全性分析など、経営分析の手法は多岐にわたるため、ご自身の目的に応じて最適な手法・指標を選択するのが重要です。

計算自体は決して難しくないため、経営者や財務担当者の方はぜひ経営分析にチャレンジしてみてください。

経営分析のやり方(プロセス)を知りたい方は、下記の記事を参考にしてみてください。

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