「会社の経営状態を分析してください」と言われたら、皆さんはどうしますか?
単純に「黒字or赤字」とか「資産や負債が○億円ある」といった感じで見るのも良いですが、「経営分析」を行うとより的確にその会社の現状を把握することができます!
簡単な経営分析ができるようになれば、自分自身が経営している会社の状態を把握し、的確な改善策を行えるようになります!
それだけでなく、株式投資する際の判断材料を得られたり、就職・転職する会社の安全性や将来性を判断しやすくなるメリットも期待できます!
とはいえネットで「経営分析 やり方」と検索してみたところ、会計やファイナンスに関してある程度知識を持っている方に向けた記事が多く、初心者の方向けの記事は中々見つかりません。
そこで今回は、初心者の方でも分かるように経営分析のやり方を、5つのステップに分けて説明しようと思います。
自分が経営している(働いている)会社の状態が知りたい方や、投資や転職する際の判断材料を得たい方は必見です!
ステップ1:財務諸表を準備する
まず初めに、経営分析を行う上で必要となる「財務諸表」を準備しましょう。他社の経営分析をやりたいのであれば、企業サイト上にあるIR情報から入手できるかと思います。
財務諸表には何種類かありますが、簡単な経営分析であれば「貸借対照表」と「損益計算書」があれば事足ります。
貸借対照表とは、企業の持っている資産や負債・純資産の種類と金額が載っている書類です。
資産は現金や建物などの固定資産、負債は企業が抱えている借金などを指します。
純資産は、株主の出資している資本金や前年度から蓄積されている利益などを意味します。
損益計算書とは、会社が一年間で得た収益や利益、費用が記載された書類です。
経営分析における収益とは、売上高を表します。
一方で利益は収益から費用を差し引いた部分を表しますが、損益計算書では利益が細分化されて表示されています。
細かく説明すると話がややこしくなるので、それぞれの利益については下記の認識を持ってもらえれば大丈夫です。
- 売上総利益(売上粗利益)→収益から原材料の仕入費用など(売上原価)を差し引いた利益
- 営業利益→売上総利益から人件費や光熱費など(販管費)を差し引いた利益(商品やサービスの販売で得られた利益)
- 経常利益→営業利益について、商品の販売過程とは無関係に生じた収益や費用を足し引きした利益(会社の経営活動全体で得られた利益)
- 当期純利益→あらゆる費用や税金を支払って最後に残る利益
貸借対照表と損益計算書を揃えれば、初心者の方が経営分析を行う準備は完了です!
ステップ2:どんな観点で何を分析したいか決める
経営分析と一口に言っても、どんな観点で何を分析したいかによって、経営分析のやり方は大きく異なります。
そこで最初に、どんな観点で何を分析したいかを決める必要があります。
経営分析では、主に「収益性」「安全性」「効率性」の観点から会社の現状を把握します。
どのくらい稼げているのかを調べたい場合は「収益性」、資金繰りが安全に行われているのかを調べたい場合は「安全性」、保有している資産が収益化に貢献しているのかを調べたい場合は「効率性」の観点から、それぞれ経営分析を行います。
経営分析の観点を決定したら、どの指標を算出するかについても決めなくてはいけません。
収益性の観点で経営分析する場合、「ROE(自己資本利益率)」や「売上高総利益率」などの中から、算出したい経営分析の指標を選びます。
例えば「売上高のうちどのくらい営業利益を得られているのか」を知りたいのであれば、売上高営業利益率を算出します。
ステップ3:指標を算出する
経営分析の観点や算出する指標を決めたら、具体的に指標を算出します。
例えば「売上高営業利益率」を算出する場合は、損益計算書の中から「売上高」と「営業利益」を見つけ出します。
そして営業利益を売上高で割れば、売上高営業利益率を算出することができます。
今回は、経営分析で頻繁に用いられる主な指標と算出方法をご紹介します。
①収益性
- 売上高総利益率=売上総利益÷売上高×100
- 売上高営業利益率=営業利益÷売上高×100
- 総資本事業利益率(ROA)=事業利益(営業利益+営業外収益)÷総資本(負債+純資産)×100
- 自己資本利益率(ROE)=当期純利益÷自己資本
②安全性
- 流動比率=流動資産(現金などの一年以内に換金できる資産)÷流動負債(買掛金などの一年以内に支払い義務がある負債)×100
- 固定比率=固定資産(建物などの一年以上に渡り使用する資産)÷自己資本×100
③効率性
- 総資本回転率=売上高÷総資本
- 固定資産回転率=売上高÷固定資産
経営分析の各指標を詳しく知りたい方は、下記の記事をご参照ください!
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ステップ4:算出した指標を分析・比較する
ただ指標を算出しただけでは経営分析とは言えません。
経営分析を実際に役立てるためには、その指標がどんな意味を持つのか分析したり、算出した指標を業界平均や他社と比較する必要があります。
先ほどご紹介した「流動比率」を例に出して、具体的なやり方を見ていきましょう。
流動比率とは、「一年以内に支払わなければいけない負債の金額と比べて、すぐに現金化できる流動資産をどの程度持っているのか」を表す指標です。
例えば一年以内に返済しなくてはいけない借金が100万円あった場合、すぐに現金化できる資産を最低でも100万円以上持っていないと、借金を返済しきれないので非常にまずいという事が分かります。
これを式に変換すると、流動比率は最低でも100%以上ないとマズいという訳です。
また算出された指標を他社と比較する事で、自社の経営状態を客観的に分析できます。
流動比率が140%だとすると、一見すると安全に見えるかもしれません。しかし同業他社の平均が180%である場合、他社と比べるとそこまで安全性が高いとは言えません。
ステップ5:経営分析の結果を基に改善策を検討・実践!
経営分析のやり方とは若干話がずれますが、非常に重要な部分です。
経営分析により発覚した問題点については、積極的に改善していかなくてはいけません。
例えば自社の売上高総利益率が1%で、競合他社よりも3%も低いとしましょう。他社と比べて利益率が低い状態は、あまり好ましい事態ではないので改善が必要です。
売上高総利益率を改善するためには、基本的に「費用を増やさずに収益を増やす」か「収益を減らさずに費用を減らす」というやり方のいずれかを選ぶ必要があります。
前者のやり方を選ぶのであれば、例えば集客方法を工夫したり、営業を強化する方法が考えられます。
後者のやり方を選ぶ場合は、交渉により原材料費を削減したり、仕入れ先を変更することで原材料費を削減する方法が考えられます。
結果を踏まえて様々な施策を実施し、課題を改善して初めて、経営分析を行う意味があると言えます。
以上が経営分析の基本的なやり方になります。
今回お伝えしたやり方をマスターすれば、簡単な経営分析であればできるかと思います。
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