ビジネスに携わる方であれば一度は耳にしたことがあるであろう「競争優位性」
できるビジネスマンが使う印象がある用語ですが、意味がふわっとしていて、具体的に何を意味するのかイマイチよくわからないという方もいるかと思います。
そこで今回は、自分の経験や中小企業診断士の学習から得た知見を基に、「競争優位性とは何なのか?」とか「競争優位性を築くにはどうすれば良いのか?」といった内容を自分なりに文章としてまとめてみようと思います。
競争優位性とは?
競争優位性といった場合、一般的には「競合他社との競争で有利に働く自社の強みとなる能力」を意味します。
たとえば「Apple製品のブランド力や洗練されたデザイン」とか「GU製品の圧倒的な低価格さ」などが競争優位性の例として挙げられます。
競争優位性をどうやって築くのかについては、経営者や専門家などビジネスに携わる多くの人が絶えず考えています。
その中でも、アメリカの経営学者”マイケル・E・ポーター”が提唱した「競争優位の戦略」は、特に的を得ていると思います。
ポーターは著書の中で、競争優位性を築く上で企業が取るべき3つの戦略を提唱しています。
次の項では、その3つの戦略についてわかりやすく解説します。
競争優位性を築く戦略(ポーターの競争戦略)
ポーターは企業が競争優位性を築く上で取るべき戦略として、「コストリーダーシップ戦略」、「差別化戦略」そして「集中戦略」の三つをあげています。
コストリーダーシップ戦略
コストリーダーシップ戦略とは、競合他社よりも低コストで製品を生産する形で競争優位性を築く戦略です。
大量生産や原材料を安く仕入れる等の施策により徹底的に原価を下げ、低価格で製品を販売するのがコストリーダーシップ戦略の基本的な考え方です。
ファーストリテイリング(ユニクロやGUを展開)やヤマダ電機などが、コストリーダーシップ戦略を採用しています。
差別化戦略
差別化戦略とは、価格以外の点で他社製品との差別化を図る形で競争優位性を築く戦略です。
ブランド力やデザイン性、性能などの面で差別化を図るのが一般的です。
コストリーダーシップ戦略では低コストの生産により安い値段でも利益を得られる状態を目指す一方で、差別化戦略では他社とは異なる製品を高価格で販売して利益を得る状態を目指します。
Appleやオリエンタルランド(ディズニーの運営)、スターバックスなどが、差別化戦略を採用しています。
集中戦略
集中戦略とは、細分化されたニッチ市場をターゲットとし、その中で差別化面もしくはコスト面で競争優位性を築く戦略です。
小さい市場で事業を展開するので、経営資源を豊富に持っている大手企業との競合を避けることができます。
そのことから、集中戦略は経営資源が不足している中小企業に適しています。
ポーターの提唱した理論をまとめると、企業が競争優位性を構築するには下記3種類のいずれかの方向性で事業を行うのが良いという結論に至ります。
- 商品やサービスを安く製造して利益を増やす
- 他社とは違う商品を販売してファンを作る
- ニッチ市場に特化して独自の地位を築く
自社にあった競争戦略を取り入れるのが、競争優位性を構築する上で重要です。
ポーターの提唱した3つの戦略についてさらに詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。
会社経営を成功させるには、他社との競争に打ち勝ち、より多くの利益を得つづける必要があります。アメリカの有名な経営学者ポーター教授は、他社との競争に打ち勝つための「3つの基本戦略」を提唱しました。今回の記事では、ポーターの3つの基本戦[…]
突き詰めると「経営資源」が競争優位性の源泉になる
ポーターの提唱した競争戦略は、自社の競争優位性を構築する上でとても役立つ考え方です。
たとえば独自ルートを持っていて他社よりも低価格で原材料を調達できるのであれば、コストリーダーシップ戦略が適していると判断できます。
もしくは経営資源に乏しいのであれば、集中戦略により大手との競争を避ける集中戦略が適しているでしょう。
とは言えいずれの戦略を採るにせよ、突き詰めると強みとなる「経営資源」が競争優位性の源泉であると思います。
どれだけ優れた戦略を立てたところで、それを実践する上で必要な「経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)」がなくては意味がありません。
たとえば「他社よりも3割コストを安くして商品を製造する!」という立派な戦略を立てても、それを実現するには大量生産を実現し得る工場や莫大な初期費用が必要です。
もしくは「ディズニーのようなブランド力で差別化する!」という戦略を立てた場合、ディズニーが長年培ってきたキャラクターの商品価値を一から構築しなくてはいけません。
つまり競争優位性を確立するには、戦略もさることながら、まずは強みとなる経営資源を築き上げる必要があるのです。
コストリーダーシップ戦略であれば、原材料を安く確保するための独自ルートを確保したり、大量生産の技術や設備をまずは持たなくてはいけません。
差別化戦略であれば、性能面で差別化できるだけの技術力だったり、ブランド力で差別化するために緻密かつ地道にブランドを育てていく必要があります。
競争優位性を築くには、「緻密な競争戦略」とそれを実現するための「経営資源」を1セットとして考えるのが大切なのです。
なお自社の持つ経営資源が、具体的にどれほど競争優位性を生む力を持っているのかは、VRIO分析というフレームワークを使うと見極めやすいです。
VRIO分析のメリットや使い方は下記の記事でわかりやすく紹介しているので、もしよければ参考にしてください!
優れた経営戦略を策定するには、外部環境(顧客のニーズや他社の施策など)だけでなく、自社の強みを把握しておく必要があります。今回ご紹介するVRIO分析は、自社の経営資源が強みとなるか否か、どのくらいの競争優位性を持つのかを分析するフレーム[…]
競争優位性のまとめ
今回の記事では、競争優位性の意味や競争優位性を築くための戦略、競争優位性の源泉について自分の考え方をお伝えしました。
競争優位性を築いて他社よりもより多くの利益を得るには、競争戦略をしっかりと立てた上で、その戦略を遂行する上で必要な経営資源をしっかり育てるのが大事です。
今回の記事を読んで、少しでも競争優位性に対する理解が深まってくだされば幸いです。