貢献利益は、複数の事業部それぞれの利益を確認する上で役に立ちます。
この記事では、貢献利益の意味や計算式、限界利益との違いなどをくわしく解説します。
貢献利益とは
共通固定費と個別固定費
まずは、貢献利益を理解する上で必要な「共通固定費」と「個別固定費」についておさらいしましょう。
固定費は「共通固定費」と「個別固定費」に分けられます。
共通固定費とは、各部門で共通して発生する固定費であり、具体的には以下が該当します。
・本社建物の固定資産税
・本社役員の給与
一方で個別固定費とは、ある部門や部署に直接関連する固定費であり、具体的なものは下記です。
・ある部門に特有の商品を生産するのに必要な機械の減価償却費
・ある部門に特有のサービスで必要な広告宣伝費
例えば飲食事業で必要となる広告宣伝費は、他の事業部門では発生しないため個別固定費となります。
貢献利益の意味と計算式
貢献利益とは、ある部門や部署が単体で稼いだ利益を意味します。
貢献利益は下記の計算式で求めます。
- 貢献利益 = 売上高 − 変動費 − 個別固定費
変動費は、売り上げや生産量の増減にともない変動する費用を意味します。
ちなみに貢献利益を売上高で割った値は「貢献利益率」と呼ばれます。
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貢献利益と限界利益の違い
貢献利益と似たものに、限界利益というものがあります。
限界利益とは、売上高から変動費を差し引いた利益を意味します。
- 限界利益 = 売上高 − 変動費
限界利益は、商品を1つ販売した際に増加する利益を表しています。
以上のように、貢献利益と限界利益には明確な意味の違いがあるのでしっかり使い分けましょう。
限界利益と貢献利益の違いを表にまとめましたので参考にしてください。
計算式 | 表していること | |
限界利益 | 売上高 − 変動費 | 商品を販売した際に増加する利益 |
貢献利益 | 売上高 − 変動費 − 個別固定費 | 各部門が単体で稼いだ利益 |
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貢献利益を用いた意思決定の方法
貢献利益を使えば、各部門や部署ごとの収益性から、今後もその事業を行うべきか判断することが可能です。
たとえば以下二つの部門があったとします。
a部門 | b部門 | |
売上高 | 500万円 | 1,000万円 |
変動費 | 200万円 | 400万円 |
個別固定費 | 100万円 | 700万円 |
a部門と比べるとb部門の方が2倍も多く売り上げを得ているため、一見するとb部門の方に力を入れた方が良いように見えます。
しかし各部門の貢献利益を計算すると、それぞれ以下の通りになります。
- a部門:500万円−200万円−100万円 = 200万円
- b部門:1,000万円−400万円−700万円 = −100万円
貢献利益はa部門の方がb部門よりも300万円も多いです。
つまりa部門の方が会社全体の業績に貢献しているのです。
しかも特筆すべきは、b部門の貢献利益がマイナスである点です。
貢献利益がマイナスというのは、業績に悪影響を及ぼしていることを意味します。
事業間のシナジーなどもあるため一概には言えませんが、少なくとも貢献利益のみの観点ではb部門からは撤退すべきであると判断できます。
以上のように、各事業部の貢献利益を計算すると、それぞれの収益性や事業続行の意思決定も行えます。
貢献利益のまとめ
貢献利益を計算すれば、各部門の貢献度合いや事業を続行すべきかの意思決定を行えます。
最低限の会計知識があれば活用できるので、ぜひあなたも貢献利益を実務で役立ててみてください!