ビジネスを行う上では、正確な需要予測を行い、その予測に基づいて行動計画を立てたり、経営資源を配分することが大事です。
需要予測の手法には、簡単な計算でできるものから複雑な分析やツールを使った難しいものまで様々あります。
今回はその中でも、比較的簡単に行える「単純移動平均法」、「加重移動平均法」、「指数平滑法」、の3つをご紹介します。
簡単な需要予測の手法を知りたい方はぜひ参考にしてください!
単純移動平均法
単純移動平均法の意味
最も簡便に需要予測を行える手法が「単純移動平均法」です。
この手法では、過去一定期間のデータ(売上高や利益など)の平均を計算し、その計算結果を需要の予測値とします。
一般的には、過去一ヶ月や一年間の売上高や利益、販売個数などを用います。
単純移動平均法を使った需要予測の例題
間近5ヶ月間の月間売上高が下記の通りだった場合、来月の予想売上高はいくらになるか?
- 今月:200万円
- 先月:180万円
- 2ヶ月前:240万円
- 3ヶ月前:190万円
- 4ヶ月前:210万円
単純移動平均法を用いると、来月の予測売上高は以下のようになります。
- (200+180+240+190+210) ÷ 5 = 204万円
加重移動平均法
加重移動平均法の意味
加重移動平均法とは、実績データに異なる重みを与えた上で平均値を求め、その計算結果を需要の予測値とする手法です。
単純移動平均法では単純にデータを足して平均を求めました。一方で加重移動平均法では、期間ごとにデータに重みを与えることで、期間ごとの重要度に差をつけた上で平均値を算出します。
これにより、突発的な需要変動の影響を小さくしたり、間近のデータを重視した需要予測が可能となります。
加重移動平均法では、下記の式で需要予測を行います。
- 予測値 = Σ{ある期間の売上高 × ある期間の重み}
期間ごとに設定した重みの合計が1となるように、各データの重みを設置する必要がある点には注意が必要です。
加重移動平均法を使った需要予測の例題
この手法を使って、先ほどの例題における来月の需要予測を行ってみましょう。
今回は間近のデータほど重視したいと仮定し、各データの重みを以下のように設定します。
- 今月:0.3
- 先月:0.2
- 2ヶ月前:0.2
- 3ヶ月前:0.2
- 4ヶ月前:0.1
以上の仮定より、来月の予想売上高は下記のように計算できます。
- 200×0.3 + 180×0.2 + 240×0.2 + 190×0.2 + 210×0.1 = 203万円
以上の通り、単純移動平均法を用いた場合と比べて、需要予測の計算結果が1万円異なります。
この違いは、間近のデータを重視したために生じているわけです。
指数平滑法
指数平滑法の意味
指数平滑法とは、過去の予測値(売り上げ予測)と実績値(実際の売上高)を用いて需要予測を行う手法です。
指数平滑法では、下記の計算式で需要予測を行います。
- 今期の予測売上高 = 前期の予測売上高 + α(前期の実績売上高 - 前期の予測売上高)
※来期予測の場合
- 来期の予測売上高 = 今期の予測売上高 + α(今期の実績売上高 - 今期の予測売上高)
αは「平滑化定数」というものであり、平滑化定数は「実績と予測とのズレを反映させる役割を持つ定数」です。
平滑化定数は0から1の範囲で設定します。
1に近い値(大きい値)を設定するほど、実績と予測のズレを大きく反映させることにより、最近のデータをより重視した需要予測が可能となります。
一方で0に近い値を設定すると、実績と予測のズレをあまり反映させないため、過去のデータを重視した需要予測を行えます。
したがって、需要変動が大きい商品・サービスであれば大きい値を設定し、需要が安定していれば小さい値を設定するのが良いと言われています。
指数平滑法を使った需要予測の例題
この手法を用いて、来月の需要予測を行ってみましょう。
なお今回は、下記のデータを用いて予測売上高を計算します。
- 今月の予測売上高:300万円
- 今月の実績売上高:320万円
- 平滑化定数:0.2
この手法を活用すると、来月の予測売上高は以下のように算出されます。
- 300万円 + 0.2 (320万円 - 300万円) = 304万円
一方で需要変動が激しい商品であり、平滑化定数を0.8に設定した場合は次の通りになります。
- 300万円 + 0.8 (320万円 - 300万円) = 316万円
上記の通り、平滑化定数の値次第で需要予測の結果が変わってきます。
需要予測の手法に関するまとめ
この記事では、 カンタンに使える需要予測の手法を3つご紹介しました。
今回お伝えした手法を活用すれば、数字が苦手な方でもカンタンな需要予測を行えるようになります。
ですが本格的に需要予測を行うとなると、回帰分析や専門的なツールを使った分析など、難しい手法を活用しなくてはいけません。
本格的に需要予測を行いたい方には、専門的なツールの導入や複雑な分析手法(重回帰分析など)の活用をおすすめします。