「ビジネスで成功するには差別化が大事!」こんな感じのフレーズを、経営やマーケティングに携わる方であれば一度は耳にした経験があると思います。
考えてみると差別化は大事だなあ・・・と何となくは思うでしょうが、差別化はなぜ大事なのでしょうか?
そもそも差別化戦略って、具体的にどうやって進めるのでしょうか?
この記事では、ふわっとした感じで認識されがちな「差別化戦略」について、メリットや具体的な方法、差別化のポイントなどをわかりやすくお伝えしようと思います。
差別化戦略や差別化を意識したマーケティングについて知りたい方は必見です!
差別化戦略の意味とは?
まず初めに、差別化戦略の意味をご紹介します。
差別化とは、購入する顧客にとって魅力的な独自性を打ち出すことにより、競合他社に対する競争優位性を価格以外の面で築き上げる戦略です。
すごく簡単に言うと、他の会社とは違うやり方でお客さんに価値を届ける戦略を差別化と言います。
差別化戦略は、有名な経営学者であるポーターが提唱した3つの競争戦略の一つです。
ポーターによると、今回ご紹介する差別化戦略か「コストリーダーシップ戦略(低コスト生産)」、そしてニッチ市場に特化してビジネスを行う「集中戦略(ニッチャー戦略)」のいずれかの戦略により、競争優位性を構築できるとされています。
経営資源があまりない中小企業は、ニッチ市場にフォーカスした上で差別化戦略を図るのが個人的にはおすすめです。
中小企業にオススメのニッチャー戦略について知りたい方は、下記の記事をご覧ください!
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差別化戦略のメリット
多くの企業が実践している差別化ですが、果たしてどのようなメリットがあるのでしょうか?
結論から述べると、差別化戦略のメリットは「競争優位性の確立」と「価格競争の回避」、そして「高価格でも消費者に受け入れられやすい」の3つです。
この章では、差別化戦略の各メリットを詳しくお伝えします。
競争優位性の確立
差別化戦略の最たるメリットは、競争優位性を確立しやすい点です。
他社と異なる価値を提供できれば、顧客にとってはその企業の商品・サービスを利用することでのみ、その価値を得られることを意味します。
自社の商品やサービスを利用したい固定のファンを一定数獲得できるため、他社との競争に勝ちやすくなるわけです。
価格競争の回避
差別化戦略の持つ二つ目のメリットは、他社との価格競争を回避できる点です。
また価格以外の面で差別化できれば、万が一業界内で価格競争が発生しても巻き込まれずに済みます。
価格競争に巻き込まれると十分な利益を得られなくなるため、価格競争を回避できる点は差別化戦略の大きなメリットと言えます。
高価格でも消費者に受け入れられやすい
行動経済学の研究によると、ある商品について人は最初に購入した(目にした)価格により、その後その商品に対する価格の判断を行います。
※詳しくは行動経済学の本「予想どおりに不合理」を読んでみてください!
例えば最初に200円で購入した商品だと、その後は200円を基準に高いかやすいかを決定するわけです。
裏を返すと、すでに世の中で広く知れ渡っている商品やサービスを販売する場合は、相場よりも高い値段で買ってもらうのは困難というわけです。
そこで差別化が有効です。
消費者にとって画期的なサービスや商品を販売すれば、価値判断の基準がないため、比較的高い価格でも買ってもらいやすくなります(ただし継続的に買ってもらうには中身も大事です)。
高い価格で商品やサービスを販売できれば、多くの利益を獲得できます。
差別化は、マーケティングの視点から見てもメリットの大きい経営戦略であるといえます。
差別化戦略の具体的な方法
差別化戦略は、具体的に下記3つの方法により実現することができます。
商品そのもので差別化する方法
最もポピュラーなのは、製品やサービスそのもので差別化を図る方法です。
たとえば他社よりも高品質や多機能の商品を販売するのが、差別化の最たる方法です。
もしくは他社よりもスタイリッシュだったり独創的なデザインや包装で勝負するのもアリでしょう。
お客さんに差別化された商品の価値が認められれば、圧倒的な競争優位を確立できるでしょう。
商品の付加価値で差別化する方法
製品自体で差別化を図るのではなく、製品の提供過程や提供後の付加価値で差別化する方法もあります。
たとえば使い方が難しい製品であれば、アフターサービスを充実すればそれ自体が顧客にとって価値のある差別化となります。
またはAmazonの事例を参考にして、即日配送といった利便性の面で差別化を図るのも効果的です。
他にも商品やサービスの提供スピード、店舗数、品揃えの豊富さなど、差別化できる付加価値は考えればたくさん出てきます。
業界ごとに差別化できる付加価値の内容は異なるので、「他社がやっていないけど、やった場合には顧客に価値をもたらす」ような付加価値を自分自身で見つけ出すのがポイントです。
ブランティングにより差別化する方法
差別化は必ずしも製品や付加価値的なサービスといった「具体的な要素」でのみ実現される訳ではありません。
シャネルやロレックスといった高級ブランドを見れば分かるように、ブランド力により差別化を図るのも可能です。
ただしブランディングは簡単ではありませんし、十分なブランド力をつけるまでには時間がかかります。
地道な広告宣伝や販促はもちろん、カリスマ経営者の存在や他にはない価値の提供といったプラスの要素も必要です。
極端な話、提供する商品の質が他社よりも劣っていたり、他社と比べて優れた付加価値を提供できていないと、どれだけブランド力を強化しても意味はありません。
つまり、ブランド力の強化のみで差別化を図るのは現実的ではないのです。
基本的には商品やそれに付随するサービスなどの面で差別化を図りつつ、同時にブランディングを行うのがセオリーだと思います。
以上3つが差別化戦略の具体的な方法です。
とはいえ、「商品そのものや付随するサービスで差別化といっても、どうやれば良いの?」と思う方もいると思います。
そんな方は、ジョブ理論などのフレームワークを活用するのがオススメです。
ジョブ理論を活用すれば、顧客の抱える真のニーズを洗い出し、それに基づいた新規ビジネスのアイデアのヒントを得られます。
どのように差別化すべきか迷ったら、このようなフレームワークを活用すると思考を整理しやすくなるのでオススメです!
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差別化戦略のポイント
差別化戦略を実施する上で、ただ単に「他の会社と違う行動をすれば良い」と考えるのは危険だと思います。
差別化戦略をやみくもに実施すると、全く効果が出なかったり、簡単に競合他社に模倣されて優位性を失ってしまう可能性があります。
この項では、そのようなリスクを避けるために(差別化戦略を成功させるために)、意識すべき3つのポイントをご紹介します。
自社の強みやイメージ、取り扱う商品に適した差別化を行う
「他社と違ければ良い」という視点で差別化戦略を実施すると、あまり大きな効果は得られない可能性があります。
たとえば何の変哲も無いティッシュペーパーを、高級ブランドの真似をしてブランディングを行ったらどうなるでしょうか?
確かに他社はしていないので「差別化」にはなっています。ですがティッシュペーパーは使えれば基本何でも良い製品なので、高級ブランドのような宣伝をしたところでコアなファンが増えるとは考えられません。
また、自社の強みや弱みを無視した差別化戦略もあまり良い結果を得られない可能性があります。
たとえば人員不足という弱みを抱えているにもかかわらず、無理してアフターサービスの面で差別化を図ろうとしても難しいのは明らかです。
差別化戦略で成功するには、自社の強みやブランドイメージ、商品の内容などに適したマーケティングを行うのが重要なポイントになります。
「顧客に価値を提供する部分」で差別化を図る
冒頭でもお伝えしましたが、「顧客にとって魅力的な独自性(価値)」を提供して初めて差別化戦略と呼べます。
他の企業と違う施策をしても、それが顧客にとって魅力的でない(価値がない)と収益増加や固定客化といったメリットは得られません。
たとえばラーメン屋を経営しているとして、差別化だからといって市販の家具を販売したらどうなるでしょうか?
ラーメンを食べたいと思って来た人に、全く関係ない上に持ち帰るのに苦労する家具を販売したところで、あまり買ってくれるとは思えませんよね。
ラーメン屋ならば味や見た目、提供スピードなど、顧客に価値をもたらすマーケティング施策で差別化を図る必要があります。
競合他社に真似されにくい差別化戦略がベスト
自社の強みや商品の性質にも適しており、かつ顧客に価値をもたらす差別化戦略であっても、簡単に真似されやすい戦略であると、すぐに競争優位性は失われてしまいます。
長期的に競争優位性を確立する上で、競合他社に模倣されにくい差別化戦略を実施することは重要なポイントです。
極端な話、誰にも真似できない差別化戦略を一度確立してしまえば、長期的に一人勝ちできる可能性もあります。
自社の差別化戦略や経営資源がどの程度の競争優位性を持っているか知りたい場合には、VRIO分析のフレームワークが役立ちます。
詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください!
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差別化戦略により成功した企業の事例
差別化戦略によりビジネスを成功させた企業は数多く存在します。
今回はその中でも、特に参考にすべき成功事例として「スターバックス」と「アップル」の2つをご紹介します。
成功事例①:スターバックス
古くから存在するカフェ事業で後発企業であるスターバックスが成功できたのは、緻密な差別化戦略があったからと言われています。
従来カフェは、休憩時間にコーヒーを飲む単なる場所としての意味合いを持っていました。
ですがスタバは、「居心地の良さ」や「おしゃれさ」を重視した空間作りを徹底しました。
この空間作りを徹底するために、同社では商品の質はもちろん内装や従業員教育を徹底しました。
その結果スターバックスは、既存のコーヒーチェーン店とは全く異なる独自のブランドの創出(差別化)に成功し、今では世界的に人気のカフェとなっています。
他ブランドより高い価格にも関わらず人気なのは、「差別化による独自の価値を顧客に提供しているから」という訳です。
成功事例②:アップル
二つ目の事例としてご紹介するのは、スマホやパソコンなどの販売で大成功を収めているアップル(Apple)です。
スマホやパソコン自体他の大手企業も販売していますが、アップルは他の会社とは徹底的に異なる部分(≒差別化のポイント)があります。
アップルの差別化ポイントとは、ズバリ「デザイン性」や「シンプルな操作性」です。
従来パソコンなどに見られる電子機器の製造・販売では、高度な技術力で優れた機能を実現することが重視されていました。
ですがAppleは、技術力や機能の豊富さよりも、洗練されたデザイン性やユーザーにとっての使いやすさを重視した製品を世に出しました。
その結果iPhoneやMacbookなどのアップル製品は、既存の製品とは異なるものだと消費者に認識され、多くの支持を集めるに至っています。
経営者のカリスマ性はもちろん、徹底したデザイン面での差別化戦略も、アップルの成功に貢献しているのです。
差別化戦略のまとめ
今回の記事では、差別化戦略の意味や方法、差別化戦略を成功させるポイントをご紹介しました。
差別化戦略が成功すれば、価格競争を回避しつつ競争優位性を確立できます。
簡単かつすぐに実現できる戦略ではないものの、差別化を意識して経営・マーケティング戦略を立ててみるだけでも違うと思います。
皆さんも、差別化戦略を意識してビジネスに関わってみてはいかがでしょうか?
差別化戦略を実施する際には、スターバックスやアップルなどのビジネスを事例として参考にするのも良いと思います!
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