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多角化のメリットとデメリット〜経営者が知っておくと有利な多角化〜

多角化のメリット

消費者のニーズが多様化していることや、一つの事業やサービスが生き残れる期間が短くなっている現状から、経営の多角化を図る企業が増えています。

中には、「企業はとにかく多角化すべき」という意見や考え方を発信している方もいます。

変化の激しい現代において、多角化は確かに大きなメリットを期待できる経営戦略です。

しかしながら、全ての企業に多角化戦略が向いている訳ではありません。

良い側面ばかり見て多角化戦略を実行すると、思わぬ大失敗を招く恐れがあります・・・。

そこで今回は、多角化のメリットとデメリットの双方を取り上げつつ、どんな企業に多角化戦略が向いているのかをご説明します。

そして最後に、多角化を行う上で重要だと思うことをお伝えしようと思います。

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多角化のメリットとは

企業が多角化戦略を行うと、一般的には以下のメリットを得られます。

メリット①:単一の事業に集中するよりも多くの収益を得られる可能性が高い

業種やタイミングにもよりますが、事業はある程度まで成長すると、成長率が鈍化していきます。

すでに成功している事業に資金や労働力を投入しても、急激な収益増加は実現しにくいです。一方で多角化により新規事業を始めることで、軌道に乗れば多額の収益を得られるようになります。

もう一つの収益源を作れる点は、多角化戦略の大きなメリットと言えます。

メリット②:企業経営に伴うリスクを低減できる

企業を取り巻く環境の変化が激しい昨今においては、多角化における最大のメリットだと思います。

単一の事業しか行なっていない場合、その事業の業績が悪化した時点で、経営に大打撃が発生します。場合によっては、廃業(倒産)に追い込まれるリスクもあります。

しかし多角化戦略を行なっていれば、主力事業がダメになっても、他の事業で収益を得られていれば、全社的な大損害を回避出来ます。

いつ主力事業がダメになるか分からない現代の状況を省みると、リスク分散のメリットはとても魅力的です。

メリット③:事業間のシナジー効果を期待できる

多角化している事業の間に関連性がある場合、 シナジー効果を期待できます。

企業経営におけるシナジー効果とは、「事業同士が互いに良い影響をもたらし合う事で、それぞれ単体で行なっている時よりも大きな結果を生み出す効果」を意味します。 

簡単に言うと、それぞれ個別に行なっていれば100万円の利益しか得られないものの、同時に行う事でそれ以上の利益を得られる状況がシナジー効果です。

複数の事業を営む多角化では、収益増加やコスト低減などのシナジー効果も期待できるのです。 

多角化のデメリットとは

多角化はメリットが多く魅力的な経営戦略ですが、下記のようなデメリットも存在します。

デメリット①:コストがかかる

これまでとは異なる事業を始めるので、多角化を行う前と比べて、余分に費用がかかるようになります。

新規事業を軌道に乗せる為には、広告宣伝費や研究開発費、設備の取得費用など、多額の費用がかかります。

不確実である上にノウハウがない新規事業に多額の費用が必要となるのは、多角化を行う上で避けて通れないデメリットです。

デメリット②:大損失を招くリスクがある

多角化戦略を行う二つ目のデメリットは、失敗すると大損失となるリスクがある点です。 

先ほどもお伝えした通り、多角化の実施には多額の費用が必要になります。成功すれば費やした費用を大幅に上回る利益を得られる一方で、失敗すると全ての費用が水の泡になります。 

自社の経営資源を投資していただけならばまだマシですが、M&Aによって多角化を進めていた場合には再起できないほどの大損失となり得ます。M&Aを一回実施すると数億円〜数百億円の費用が発生する為、失敗した際の損失は莫大なものとなります。

ダイエットの事業で急成長した某会社は、企業規模の拡大を目的に、従来では考えられないペースでM&Aを行い続けました。

当初はM&Aによる多角化が注目されていたものの、つい最近70億円の赤字が出ている旨を発表し、多角化は失敗だった事が判明しました。

某社の失敗事例からは、M&Aを主体とした多角化には、経営上大きなリスクを抱えている事が学び取れます。 

多角化と集中どっちが良い?

「多角化にはメリットとデメリットの双方がある 」という事が分かったところで、どんな企業には多角化戦略が向いているのかを考えてみましょう。

多角化した方が良いケース

独自の技術力やノウハウを駆使して、ある分野で成功している事業を持っている場合は、多角化した方が良いかと思います。

多角化に必要な資金や、多角化を有利に進められる技術やノウハウがあるため、多角化の成功可能性は比較的高いです。

また余剰資金で多角化を行えば、失敗した際の損失も最小限に抑える事ができます。

単一事業に集中した方が良いケース

「まだ主力事業と呼べるほど収益を得られる事業が無い場合」「資本力や経営資源に乏しい場合」は、多角化戦略は行わず、単一の事業に集中した方が良いでしょう。

多角化はハイリスクな経営戦略なので、失敗しても大損失とならない状態がベストです。その為には、豊富な資金力や安定した主力事業がなくてはいけません。

上記のケースに該当する企業は、まずは単一事業を成長させる事に集中するのがオススメです。 

多角化するならリスクを最小限に抑えるべき

多角化に向いているケースとそうで無いケースをご紹介しましたが、中には起業したばかりの状況でも、多角化を図りたいという方もいるでしょう。

企業の経営には正解がないので、起業した段階で多角化を図って成功する可能性も十分考えられます。

とはいえ多角化するのであれば、リスクを最小限に抑えるべきだと思います。潤沢な資金があろうと無かろうと、多角化が失敗すると少なからず損失が発生します。

ちょっとした損失であったとしても、その後大きな損失につながる可能性も考えられます。

起こり得る最悪の事態を回避する為にも、多角化する際には下記の2点を意識するのが良いと思います。

主力事業と関連性の高い分野で多角化を行う

多角化戦略には、既存事業と無関係の事業を行う「無関連多角化」と、関係性がある「関連多角化」の 二種類があります。

リスク分散の効果は無関連多角化の方が大きいですが、「関連多角化」の方が成功可能性は高いです。

リスク分散のメリットを期待して無関連多角化を行なっても、某社のように失敗しては意味がありません。

資金や労力を無駄にしない為にも、よほどの理由がない限り、関連性のある事業を行なった方が無難だと思います。 

加えて「関連多角化」には、失敗するリスクを低減するメリットだけでなく、シナジー効果を得やすいメリットもあります。

シナジー効果や成功可能性を高める為にも、自社のノウハウやスキル・既存設備を活かして行える事業分野で多角化を図る事をオススメします。 

初期投資は小さく

多角化に限らず新規事業は、不確実性が高い一方で成功可能性が低いものです。

どれほど緻密な戦略を練ったとしても、多くの新規事業は失敗に終わっています。

そもそも新規事業は失敗が当たり前だと思って、初期投資を小さく始めるのがオススメです。最初は少額の初期投資から初めて、十分ニーズがあると判明したら大規模に経営資源を投入すれば良いのです。

初期費用を小さくする事で、失敗した際の損失を最小限に抑えられる上に、資金が残るので再び多角化にチャレンジしやすくなります。

「少額の初期投資で起業する」という考え方は、米の起業家エリック・リース氏が自身の経験を基にした書籍"リーン・スタートアップ"にて公表したもので、シリコンバレーで大きな反響を呼びました。

多角化や新規事業を始める方にはとても役立つ内容なので、気になる方は読んでみてはいかがでしょうか?