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社員のモチベーション向上施策を学術的視点から考えてみる

社員のモチベーション

「最近の若者はモチベーション(やる気)が低い!」という言葉をよく耳にします。実際社員のモチベーションが低い事実に頭を悩ませている経営者の方もいるかもしれません。

社員のモチベーションが高ければ、離職率の低下や業績の向上など様々なメリットを得られます。しかしモチベーションが低いと、それと全く逆の事態が生じてしまいます。

会社経営にとって社員のモチベーションは重要な要素なので、極力高める必要があります。

そこで今回の記事では、社員のモチベーションを向上させる施策を、中小企業診断士試験の学習で得た学術的な理論から考察してみようと思います。

なおモチベーション理論は、「内容理論」、「過程理論」、「内発的動機付け理論」の3つに大別されます。

今回は各理論の観点から、社員のモチベーション向上施策を考えていきます。

内容理論に基づく社員のモチベーション向上施策

内容理論とは、人は何によってモチベーションが上がるのかを考える理論です。

どんなモチベーション理論があるのか?

内容理論に分類されるモチベーション理論には、主に下記3つがあります。 

①欲求段階説

欲求段階説とは、かの有名な心理学者マズローが提唱したモチベーション理論です。

マズローの欲求段階説では、人の欲求は「生理的欲求→安全の欲求→所属と愛の欲求→尊重の欲求→自己実現の欲求」の順で段階的に欲求が生まれるとしています。

「下位の欲求が満たされなければ上位の欲求は満たされない」というのが、この理論におけるポイントです。

実生活に置き換えてみると、食べ物を満足に買えないほどの給料しか貰えていない状況では、自分の能力を向上させる目的で仕事を頑張ろうというモチベーションは湧かないと言えます。

相応の給与や職場環境があって初めて、仕事に対するモチベーションが社員の中で発生するのです。

②未成熟=成熟理論

未成熟=成熟理論とは、未成熟な状態から成熟した状態に向かいたいという欲求に基づいて、個人の人格は変化するとしたモチベーション理論です。

簡単に言えば、基本的に人間は「受動的であったり単純な行動を嫌い、主体的かつ自律的に行動したい」と考える生き物であるという前提に立った理論です。

この理論を提唱したアージリスは、社員を徹底的に管理する官僚的な組織形態は、社員の成熟に向かうモチベーションを低下させると主張しています。

ただ上司から言われたことを行う事を求める組織文化の中では、入社当初には持っていたモチベーションがどんどん削がれてしまうのは想像に難くないですよね。

③動機付け=衛生理論

動機付け=衛生理論(二要因論)とは、「仕事に対して満足する要因」と「不満をもたらす要因」は別だとするモチベーション理論です。

ハーズバーグが提唱したこの理論に基づくと、社員のモチベーションを高めるには「 仕事に対して満足する要因」を改善する必要があると言えます。

具体的には、「仕事により得られる達成感」や「昇進や承認」を与えるのが、社員のモチベーションを向上させる上で効果的とされています。

二要因理論について詳しく知りたい方は、下記をご参照ください。

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社員のモチベーションを向上させる具体的な施策

内容理論の諸学説を見ていくと、社員のモチベーションを向上させる上では、下記3つの施策が効果的だと考えられます。

①社員の持つ権限の範囲や仕事の種類を拡充する

内容理論では、「社員(人間)は自分自身を向上させたり、達成感を得られる仕事」に対してモチベーションを持つと考えています。

つまり単調な作業や責任が全く無い仕事よりも、様々な種類の仕事を経験させたり、仕事に対して社員が担う権限や責任を増やす施策が効果的であると考えられます。

たとえば一つのプロジェクトを丸ごと管理させたりすることで、モチベーション向上の効果が期待できます(もちろん無理のない範囲で)。

②社員自身に主体的に目標を設定させる

自分自身で目標を設定して主体的にその仕事に取り組ませる施策も、社員のモチベーション向上に効果的です。

言われた事を受動的に行う場合と比べて、自分自身を高められる充実感を得られるからです。

過程理論に基づく社員のモチベーション向上施策

過程理論とは、「人はどのようにモチベーションが高まるのか」に着目した理論です。

どんなモチベーション理論があるのか

過程理論に分類されるモチベーション理論には、主に下記2つがあります。 

①公平説

公平説とは、仕事に費やす時間や労力といった「インプット」とその結果得られる報酬などの「アウトプット」の比率が、他者の比率と比べて公平かどうかによってモチベーションが変動するとした理論です。

この理論では、努力と結果の比率が公平だと感じられればモチベーションが高まり、不公平だと感じればモチベーションが下がると考えています。

たとえばAさんとBさんという2人の社員がいたとしましょう。

Aさんは一生懸命働いて月50万円の給料をもらう一方で、Bさんは大して働いていないのに月50万円の給料を貰っています。

この場合Aさんからすると、Bさんは大して働いていないのに自分と同じ給料を貰っているので不公平に感じます。その結果モチベーションが下がってしまうのです。 

②期待理論

期待理論とは、報酬を得られる「主観的な確率(期待)」と「報酬自体の魅力の度合い(誘意性)」の積和により、社員のモチベーションの度合いが決定するとした理論です。

つまり式で表すと、モチベーションは下記のように決定します。

  • モチベーション=報酬を得られる確率×報酬の魅力度合い

上記の式から分かる通り、報酬を得られる確率と魅力のどちらかが欠けていると、社員のモチベーションは湧き上がってきません。

たとえばある仕事を成功させたらボーナスで1,000万円貰えるとしても、その社員にとって明らかに無理難題な仕事では、社員にとってモチベーションは高まりません。

逆に、すごい簡単な仕事(報酬を得られる可能性が高い)であっても、得られるボーナスの額が低い場合も、社員のモチベーションは向上しません。

社員のモチベーションを向上させるには、「報酬を得られる確率」と「報酬の魅力度合い」の両方が高い必要がある訳です。

下記の記事で期待理論について詳しく紹介しているので、もしよかったら参考にしてください。

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社員のモチベーションを向上させる具体的な施策

過程理論の諸学説を見ていくと、社員のモチベーションを向上させる上では、下記2つの施策が効果的だと考えられます。

①社員間で公正な評価基準を設ける

公平説で述べた通り、不公平を感じてしまうと社員のモチベーションは下がってしまいます。

なので、社員全員が納得できる公正な評価基準を設定するのが重要です。

「社長の息子だから」とか「上司のお気に入りだから」といった理由で人事評価していては、他の社員のモチベーションは下がる一方です。

感情的な部分はひとまず置いて、社員の結果や努力量に応じた人事評価制度を設けるのが、モチベーションを向上させる上で重要になります。

②努力すれば十分実現できる目標を設定しつつ、魅力的な報酬を設定する

期待理論で述べた通り、報酬を得られる可能性と報酬の魅力の両方が高い場合に初めて、社員のモチベーションは向上します。

社員のモチベーションを向上させたいのであれば、努力次第で十分達成できる仕事を社員に任せつつ、達成した場合にはそれに見合う報酬を与えるのが重要です。

内発的動機付け理論に基づく社員のモチベーション向上施策

最後に、内発的動機付け理論に基づいた社員のモチベーション向上施策について考えてみましょう。

内発的動機付け理論とは?

内発的動機付け理論とは、その人自身の内部で生じるモチベーションに着目した理論です。

過程理論では人は金銭などの報酬により外発的に動機付けられるとしていますが、内発的動機付け理論では「仕事そのものの楽しさ」や「仕事から得られる有能感や満足感」などによりモチベーションが生じると考えます。

会社で働いている社員は、必ずしもお金や昇進などを目当てに働くとは限りません。中には、追加でボーナスが出るわけではないにも関わらず、一生懸命意欲的に仕事に取り組むケースもあります。

そのような場合、社員の中に内発的な動機付けが発生していると考えられます。

社員のモチベーションを向上させる具体的な施策

ボーナスや昇進などの条件を提示せずに、社員の内発的な動機付けを促す為にはどのような施策を行えば良いのでしょうか?

内発的動機付けを高める施策を考える上では、「職務特性モデル」というフレームワークを活用すると便利です。

職務特性モデルでは、内発的にモチベーションが向上する上で必要となる仕事の特性を定めています。

今回はその中でも、内発的なモチベーションを向上させる上で特に重要な特性を3つご紹介します。

①多様なスキルや技能を活用できる業務を社員に任せる

ひたすら部品を組み立てるといった単調な作業では、飽きやすいのでモチベーションが低下しやすいです。

逆に経営企画やプロジェクトの管理などの仕事には、たとえばマーケティングや経営学、会計など多様なスキルや技能が必要になります。

多様なスキルや技能を駆使する仕事を任せれば、単調感が生じないため社員のモチベーションが向上しやすいです。

②自発的に社員に仕事を進めさせる

内容理論の項でも説明しましたが、上司から言われたことをやるだけでは、社員にとってモチベーションが生じにくいです。

逆に自分自身で仕事をある程度自由に進められる場合は、自分で工夫しながら主体的に仕事を行えるため、心理的にモチベーションが向上しやすいです。

コントロールされるよりもコントロールできた方が、モチベーションが向上しやすいのは想像に難くないでしょう。

③社員が仕事の成果を把握できるようにする

自分が行った仕事により、どの程度の効果(売上高や新規顧客数など)が得られたかを把握できる方が、社員のモチベーションは向上しやすいです。

その都度部下の行った仕事の効果などを共有すると、ますますモチベーションは高まるでしょう。

社員のモチベーション向上施策のまとめ

今回は、社員のモチベーションを向上させる施策について、学術的な理論の観点から考えてみました。

社員のモチベーションを向上させる方法は、おおよそ以下のようにまとめられます。

  • 社員が極力自由に仕事を行えるように配慮する
  • 公平な評価制度を整える
  • 努力に見合う報酬を用意する
  • 単調ではない仕事を任せる

以上の項目を意識すれば、社員のモチベーションを向上させやすくなると思います。