経営学の中でも有名な用語の一つに「参入障壁」というものがあります。
聞いたことはあっても、参入障壁がどんな意味なのか、それを知って何に役に立つのかまでは意外と知られていないと思います。
そこで今回の記事では、参入障壁の具体例や作り方などについて自分なりにお伝えしようと思います。
参入障壁とは
参入障壁とは、ある業界で新しくビジネスを始める際に妨げとなる要因です。
参入障壁が高いほど新規参入がしにくい業界であるため、新しくビジネスを始める上では不利となります。
逆に既存業者の側から見ると、参入障壁が高いほど新規参入による脅威が小さいため、より安定的に事業を行いやすいといえます。
参入障壁の考え方は、アメリカのかの有名な経営学者マイケル・ポーター教授が提唱した「ファイブフォース」の一つ「新規参入の脅威」を考える上で有用です。
ファイブフォース分析について詳しく知りたい方は、下記の記事をご参考にしてください!
経営者の方や経営学を学んでいる方であれば、「ファイブフォース分析」について一度は勉強したり耳にした経験があると思います。しかし、ファイブフォース分析の意味を知っていても、実務にどうやって役立てれば良いか分からない方も多いかもしれません。[…]
参入障壁が生じる要因の具体例
参入障壁は、以下7つの要因で生じると言われています。
規模の経済性が働きやすい
規模の経済性とは、事業規模や生産量の増大に伴い、製品1つあたりの生産コストが逓減していく現象です。
たとえば大量に製品を製造する際には、原材料の大量仕入れにより生産コストを減らすことができます。
規模の経済性が働きやすい業界ほど、参入障壁は高くなります。
なぜなら、規模の経済性により低コストで生産できる既存業者と比べて、新規参入企業は高いコストで生産する必要があるからです。
差別化が進んでいる
品質やデザイン、ブランドなどの面で製品の差別化が進んでいる業界ほど、参入障壁は高くなります。
製品の差別化が進んでいる業界では、既存企業のPR活動や製品戦略により、顧客の間で確固たるブランドロイヤリティが形成されています。
つまり顧客の間で好きなブランドが確立しているので、新規参入企業が勝つには既存企業を上回る差別化が必要となります。
広告宣伝費やブランディング、製品開発などに多額の費用がかかり、これが新規参入企業にとっては大きな参入障壁となります。
「ビジネスで成功するには差別化が大事!」こんな感じのフレーズを、経営やマーケティングに携わる方であれば一度は耳にした経験があると思います。考えてみると差別化は大事だなあ・・・と何となくは思うでしょうが、差別化はなぜ大事なのでしょうか?[…]
巨額の投資が必要
研究開発や設備投資に多額の費用がかかる業界ほど、参入障壁は高いです。
費用をかけずに始められるビジネスは比較的誰でも参入できますが、最初に数千万円とか数億円かかるビジネスには参入しにくいですよね。
流通チャネルの確保が困難
既存企業が優れた取引先や流通網を確保している場合、新規参入の企業が新しく同等レベルの質の取引先や流通網を確保するのは難しいです。
流通チャネルを確保できないと商売できないので、コストや労力を割いて流通チャネルを確保する必要が出てきます。
流通チャネルの確保に多大なコストや労力がかかる点は、大きな参入障壁になります。
参入障壁を築き上げるには、優良な新規顧客を多く獲得する必要があります。
GeAIneという新規顧客の開拓ツールを使えば、AIを用いた顧客へのアプローチにより、あまり費用をかけずに効率的に顧客を開拓可能です。
無料でのお問い合わせ・資料ダウンロードも可能なので、どのようなサービスか確認してみてください。
技術力が特許などにより守られている
ある製品を製造する上で欠かせない技術が特許により守られている場合、参入障壁はとても高くなります。
特許が設定されている技術を使うには、使用料を既存企業に支払う必要が出てくるからです。
経験曲線効果が働きやすい
経験曲線効果とは、累積生産量が増加するに伴い、製品1単位あたりの生産コストが一定割合で減少する効果を意味します。
経験曲線効果が働きやすい業界では、累積生産量が多い既存業者ほど低コストで生産できます。
新規参入企業はコスト面で不利な状況で事業を行う必要があるため、とても参入障壁が高くなるのです。
政府の政策により参入が制限されている
政府の政策によりその業界への参入が制限されると、コストや差別化面とは無関係に参入障壁ができます。
たとえばある業界で事業を始める際に許認可や資格が必要な場合、条件を満たさない限り気軽には参入できませんよね。
参入障壁が高い業界・低い業界
世の中には様々な業界がありますが、業界によって参入障壁の高さは異なります。
参入障壁が高い業界と低い業界をご紹介するので、新しくビジネスを始めたり転職する際の参考としてみてください。
参入障壁が高い業界
参入障壁が圧倒的に高い業界といえば、何と言っても携帯通信事業です。
携帯通信事業を始めるには、北海道から沖縄まで全国各地に通信に必要な設備を作り必要があります。
時間がかかるのはもちろん、数兆円以上もの莫大な費用がかかります。
それに加えてソフトバンクやKDDIなど、圧倒的な知名度やブランド力を持った企業がすでに存在するため、資金力が仮にあったとしても後発企業が勝つのは難しいです。
費用も時間もかかる上に既存企業との差別化も難しいため、参入障壁は極めて高いと言えるでしょう。
参入障壁が低い業界
参入障壁が低い業界として考えられるのが、ネットビジネス全般です。
インターネットを使うビジネスは、多額の資金や資格がなくても始められるので参入障壁はかなり低いです。
例えばブログを開設して広告やアフィリエイトで稼いだり、youtubeやSNSで情報発信して稼ぐのは、今すぐ始めようと思えば誰でもできます。
確かに有名なインフルエンサーやブロガーの方は、稼いでるだけあって独自の強みを持っているのは事実です。
しかし厳しい条件を満たしたり圧倒的な資金力が必要な業界と比べると、圧倒的に参入しやすいです。
スモールビジネスにおける参入障壁の作り方
結論から言うと、「大手企業に真似されにくい強みを作る」ことがスモールビジネスにおける参入障壁の最も効果的な作り方です。
確かに巨額の投資や生産量の増大、規模の経済性によって参入障壁を築くのは可能です。
しかし自身よりもはるかに資金面や労働量の面で優れいている大手企業が参入した場合、簡単に参入障壁を崩されてしまいます。
スモールビジネスを新しく始める際、資金面や労働量の多さといった面で参入障壁を築こうとしても、大手企業に対しては効果がないのです。
スモールビジネスにおいては、大手企業に真似されにくい強みを作ることが、もっとも効果の大きい参入障壁となります。
たとえば独自の技術力をいち早く確立し、それを特許により自社だけのものにする戦略が最たる例です。
もしくは大手企業がアプローチしにくい取引先を確保したり、大手企業が参入してくる前に確固たるブランドを確立する戦略も考えられるでしょう。
ビジネスに携わる方であれば一度は耳にしたことがあるであろう「競争優位性」できるビジネスマンが使う印象がある用語ですが、意味がふわっとしていて、具体的に何を意味するのかイマイチよくわからないという方もいるかと思います。そこで今回は、自[…]
参入障壁のまとめ
今回の記事では、参入障壁の具体例や作り方について解説しました。
新規事業立ち上げの実行可否を判断する際や、逆に新規参入の脅威を抑える方法を考える際など、参入障壁の考え方は様々な場面で応用が利きます。
なお新規参入に備えて参入障壁を高くする場合にせよ、参入障壁の高い業界に参入するにせよ、新規顧客の獲得が成功を左右します。
新規顧客の獲得には、人工知能を駆使して低コストで効率的に新規顧客を獲得できるGeAIneを使うのがベストです。
なお参入障壁と似た概念に「移動障壁」というものもあります。
移動障壁はターゲット顧客や商品の価格を変更する場合などに重要となる概念です。
そんな移動障壁について知りたい方は、下記記事を参考にしてみてください!
「移動障壁」は、経営戦略論の中でも特に重要な考え方の一つです。なぜなら、移動障壁の高さによって、企業の収益性や事業内容を変更した際の成功率などが変わってくるためです。今回の記事では、そんな「移動障壁」の意味や具体例などをわかりやすく[…]