公平理論とは?具体例で分かりやすく解説!

「なぜ報酬をたくさんあげているのにやる気を出してくれないのか」

優秀な従業員や部下が期待している成果を出さずに、上記のような悩みを抱える経営者や上司の方は少なからずいると思います。

「優秀な人にたくさんの報酬を与える」という考え方は、一見すると100%正しいように思えます。

ですが、上記の考え方だけでは不十分であり、実は「他社との公平性」も考慮して人事評価を行うのも重要となります。

こうした他社との比較によりモチベーションが決まるという考え方は、「公平理論」と呼ばれます。

今回の記事では、そんな公平理論の概要を具体例を交えて分かりやすく解説します。

公平理論の概要

公平理論とは、J・ステイシー・アダムスが提唱したモチベーション理論です。

自身と他人の報酬を比べた際に生じる主観的な公平感に焦点を当てながら、個人の動機づけを説明する点が公平理論の特筆すべき点です。

公平理論では、「自身のインプットとアウトプットの比率」と「他人のインプットとアウトプットの比率」を比較し、その結果を基に公平感やモチベーションが決まるとしています。

自身の比率が他人と比べて等しい場合は公平感を感じて、モチベーションが高まります。

反対に自身の比率が他人と比べて等しくない場合は不公平感を感じ、不公平な状況を変えようと行動します。

以上の公平理論を式で表すと下記の通りになります。

自身のアウトプット/自身のインプット = 他人のアウトプット/他人のインプット

→公平感を感じ、モチベーションが高まる

自身のアウトプット/自身のインプット ≠ 他人のアウトプット/他人のインプット

→不公平感を感じ、現状を変えようと行動する

公平理論を具体例を使って分かりやすく説明

公平理論の説明は以上ですが、これだけだと分かりにくいと思います。
そこで、実際の職場を想定して分かりやすく説明します。
たとえば、同じ営業課に下記のようなAさんとBさんがいたとしましょう。
⑴Aさん
  • 月間新規顧客獲得数:10件
  • 月収:45万円
⑵Bさん
  • 月間新規顧客獲得数:5件
  • 月収:30万円
一見すると、Aさんの方がたくさんの給与をもらっているため、モチベーションが高まりそうに思えます。
ところが、公平感という観点で見るとそうとは限りません。
インプットを顧客獲得数、アウトプットを月収と仮定して、AさんとBさんそれぞれの「インプットとアウトプットの比率(顧客1人獲得あたりの収入)」を算出してみましょう。
  • 顧客1人あたり収入(Aさん):45万円 ÷ 10件 = 4.5万円
  • 顧客1人あたり収入(Bさん):30万円 ÷ 5件 = 6万円
顧客1人あたりの収入で見ると、Bさんの方が大きいです。
つまり同じ仕事内容であるにも関わらず、Aさんのインプットとアウトプットの比率は、Bさんの比率と比べて低いわけです。
Aさんからすると、同じ仕事をしているのに、Bさんよりも顧客を1人獲得したときの収入が少ないのは当然納得できません。
そのため公平理論に基づくと、Aさんは不公平感を感じるため、公平感を感じない現状を変えようと行動します。
以上の通り、絶対的なアウトプット(報酬等)の大きさではなく、「他人との比較による公平感」によりモチベーションが変動する、とした点が公平理論の大きな特徴です。

不公平を感じた人の行動

公平理論では、不公平を感じた人は現状を変えようと行動するとしています。

では、具体的にどのような行動が想定されるでしょうか?

この章では、不公平感を感じた人が取り得る行動を具体例を使って解説します。

一般的に考えられる行動

一般的に不公平感を感じた人は、下記2つの行動を取ります。

自身のインプットを減らす

もっとも簡単に行えるため、「自身のインプットを減らす」という行動がとられるケースが多いです。

アウトプットが変わらない前提で自身のインプットを減らせば、他人と同じくらいの比率に変えることができるため、結果的に公平感を感じられるようになります。

仕事を例にすると、従来よりも熱心に仕事をしなくなったり、結果を出さない、といった行動が該当します。

先ほど使った例だと、Aさんは不公平感を解消するために、顧客獲得数を7〜8件に抑えるように仕事量を減らすと考えられます。

なぜなら、月間の顧客獲得数を7.5件にすれば、顧客1人あたり収入が45万円 ÷ 7.5件 = 6万円になり、インプットとアウトプットの比率がBさんと同じになるためです。

Aさんにとっては公平感を得られて良いものの、会社にとっては売上の減少につながるため好ましい事態ではありません。

自身のアウトプットを増やす

自身のアウトプットを増やす方法で、不公平感を解消しようとするパターンもあります。

インプットを減らさなくてもアウトプットを増やせば、自身のインプットとアウトプットの比率を他人と同じ水準まで下げることができるためです。

インプットを減らさないため、一見すると会社にとって好ましい事態に思えるでしょう。

ですが、本来は増えるはずのないアウトプットを無理やり増やすため、横領や会社内の備品等の窃盗につながりかねません。

本人が刑罰の対象となるのはもちろん、会社にも悪いイメージがつく可能性があるため、前述したケース以上に避けるべきでしょう。

行動しても不公平感が消えない場合

上記のような行動を行っても、かならずしも不公平感が解消されるとは限りません。

不公平な状況を解消して欲しいと申し出ても、上司や経営陣が要求に応じるとは限らないのは想像に難くないでしょう。

行動しても不公平感が消えない場合、その人は下記3つのうちいずれかの行動を取ると考えられます。

比較をやめる

現状を変えられないと分かり、比較をやめてしまうケースです。

仕事を例にすると、その会社を辞めて別の会社に転職するケースが該当します。

不公平感を持っているのが優秀な人材である場合、離職により大きな業績低下を招くリスクがあります。

モチベーションが低い状態のまま組織に留まる

モチベーションが低い状態のまま組織に留まるケースも考えられます。

今まで優秀だった従業員が、不公平感を理由に仕事を熱心にやらなくなる状態が該当します。

離職されるよりはマシかもしれませんが、いずれにせよ業績の低下を招くので好ましくありません。

別の比較対象を探す

中には、他の従業員や他社従業員など、別の比較対象を探すことで不公平感を解消しようとする人もいます。

会社にとっては、大きな損失とならないため好ましいケースとなります。

公平理論に基づいたモチベーションを高める方法

ここまでお伝えしたように、従業員の間で生じた不公平感を放置すると、企業全体の業績にとって良くない影響が生じるリスクがあります。

したがって、従業員の間で不公平感が生じないような評価体系にするのが重要となります。

具体的には、先にインプットとアウトプットの比率を決めた上で、一人ひとりの報酬を決める方法などが考えられます。

先ほどの例だと、顧客を1人獲得するごとに3万円という評価体系にすれば、すべての人が結果に応じて公平な収入を得られます。

ただし、あらかじめ1ヶ月あたりの給与が決まっている会社が大半なので、そう簡単には変更できないでしょう。

その場合には、追加のボーナスや昇進や表彰といった報酬を設定するのが良いかもしれません。

いずれにせよ、他人と比較した場合に不公平感を抱かないように工夫するのが、モチベーションを高める上では重要となります。

公平理論の問題点

公平理論は理にかなったモチベーション理論であり、一見すると疑いの余地がないように思えます。

ですが、公平理論には「主観に大きく左右される」という問題点があります。

営業などのように数字で明確に比率を確認できる職種ならともかく、企画や経理、新規事業のプロジェクトなど、数字でアウトプットを明確に測れない職種も少なくありません。

そのような職種の場合、インプットとアウトプットの比率は個人によって大きく変わります。

そのため、公平な評価制度を作るのがそもそも困難となります。

公平理論が万能な理論というわけではないため、職種や働き方に応じて他のモチベーション理論の考え方を取り入れるのも重要です。

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公平理論のまとめ

モチベーションがどのような要因で変動するかを合理的に説明している点で、公平理論はとても理にかなった理論です。

公平理論の考え方にしたがって、従業員のあいだで不公平感が生じないように、人事評価の制度を設計することを意識しましょう。

ただし公平理論は個人の主観に左右されるため、アウトプットを明確に測れない職種などの場合には役立てるのが困難です。

人事評価の制度を設計するときは、公平理論のみならず内発的動機づけ理論など、他の考え方も取り入れるのがベストです。

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