モチベーションは、一体どのような要因によって上がったり下がったりするのでしょうか?
モチベーションについては、多くの学者が研究を重ねており、そのうちいくつかの理論が実務でも活用されています。
今回は数あるモチベーション理論の中で、個人的に最も現実に即していると思う「期待理論」をご紹介します。
期待理論の意味や具体的にモチベーションを高める方法をお伝えするので、従業員や部下のモチベーションを高めたい方はぜひ参考にしてください!
期待理論とは?人は何によってモチベーションが高まるか
ブルームの提唱した期待理論
期待理論とは、「報酬を得られる主観的確率(期待)」と「報酬の持つ魅力度合い(誘意性)」の積が、モチベーションの強さを決定するとする理論です。
1964年に心理学者であるブルーム氏が提唱して以来、その実用性から様々な場所で活用されています。
ブルームの提唱した内容を簡略化すると、モチベーションは下記の式で表せます。
- モチベーション = 報酬を得られる主観的な確率 × 報酬の魅力
積(≒掛け算)とあるように、「期待」と「誘意性」のどちらも高くなければモチベーションは向上しません。
なおここでいう報酬には、金銭のみならず「達成感」や「昇進」なども含まれます。
期待理論の具体例
個人的にこの期待理論は、起業による成功を目指す人が少ない現状で説明するのが分かりやすいと思っています。
起業に成功した場合、サラリーマンよりも圧倒的に多額のお金を稼げます。その点で言うと、起業の持つ報酬の魅力(誘意性)は高いと言えます。
しかし起業が成功する可能性はとても低いため、大多数の人にとって報酬を得られる主観的な確率(起業が成功して多額の稼ぎを得られる確率)は、とても低いです。
誘意性は高くても期待は低いから、ほとんどの人は起業に消極的(モチベーションが沸き起こらない)だと考えられます。
逆も然りであり、例えば100%報酬を得られる仕事でも時給500円だとしたら、ほとんどの人はモチベーションなんて湧き上がってこないでしょう。
大多数の人は、報酬を得られる可能性と報酬自体の魅力度合いの両方を重視します。
自分自身や雇用している社員のモチベーションを高めたい場合は、「期待」と「誘意性」の両方が高い仕事のやり方を考えなくてはいけません。
ただしモチベーションは、報酬のみではなく仕事のやりがいや他人との比較などの要素によっても左右されます。
期待理論は「報酬面」からのみモチベーションを分析しているため、実際には他の理論も比較検討するのが好ましいでしょう。
他のモチベーション理論を知りたい方は、下記の記事をご参照ください!
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ポーターとローラーが提唱した期待理論
ブルームの提唱した期待理論は、後になってレイマン・ポーター氏とエドワード・ローラー三世によってさらに洗練された理論となりました。
ポーターとローラーが提唱した期待理論も、基本はブルームが発表した期待理論と変わりません。
モチベーションは「期待」と「誘意性」の積によって表され、どちらかが極端に低いとモチベーションは低くなります。
ポーターとローラーは、期待理論に「達成した要素(業績や成果など)」という要素を加えて、よりモチベーションの度合いが決定するプロセスを明確にしました。
ポーターとローラーの修正版期待理論に基づくと、下記の要素で従業員のモチベーションが決定します。
- 努力次第で満足できるほど業績や成果が上がるか
- 業績や成果の向上に応じて、自身が妥当だと思っているだけの報酬をもらえるか
努力次第で業績や成果が上がって、かつ頑張った結果得られた成果に応じて自分が妥当だと思う報酬を得られる場合に、モチベーションが高まるのです。
仮に努力しても業績や成果が向上しなかったり、満足できるほどの報酬を得られなければ、次からはモチベーションが下がってしまいます。
そのため会社としては、「努力次第で業績(成果)に結びつくような仕組み」と「努力量に応じて公正な報酬を与える仕組み」を作り出す必要があります。
期待理論に基づいたモチベーションを高める方法
最後に、期待理論に基づいたモチベーションを高める方法を2つご紹介します。
歩合制(成果報酬制)の導入
期待理論に基づくと、歩合制(成果報酬制)の導入がモチベーションを高める最たる手段です。
歩合制や成果報酬制は、結果を出せば出すほどもらえる給料(報酬)が増える仕組みです。
つまり自分の頑張りが報酬に直結する(「期待」が大きい)ために、モチベーションが高くなる仕組みです。
ストックオプションや資格取得手当なども同様の仕組みであり、うまく活用すれば従業員のモチベーションを大きく高めることができるでしょう。
目標と役割の明確化
モチベーションを高く保ち続けるには、努力が成果に結びつき、その結果正当な対価を受け取れることを経験している必要があります。
ポーターとローラーは、努力が業績向上などの成果に結びつくには、成果に直結する(方向性が正しい)努力を行う必要があると述べました。
たとえば売上高を増やすのであれば、なるべく多くの人に営業を行ったり、顧客のターゲティングなどを頑張る必要があります。
上司への提案資料の作成や高級なスーツの新調など、間違った方向に努力しても結果には結びつきにくいです。
結果に結びつかない間違った努力をすれば、評価されないので報酬をもらえません。
しかし本人には頑張ったという認識があるので、「不当な扱いを受けている」という認識を持ってモチベーションが低下してしまいます。
そんな事態に陥らないためにも、あらかじめ目標と役割を明確化して、正しい努力を従業員にしてもらう必要があります。
正しい努力を行えればそれ相応に結果を出すことができるので、それ以降のモチベーション向上につながります。
期待理論のまとめ
今回は、モチベーション理論の一つである期待理論をご紹介しました。
期待理論に対しては、「人はそこまで合理的に判断しない」という批判の声もあります。
ですが、報酬の魅力度や報酬を得られる可能性によりモチベーションの大きさが決まるというのは、割と当てはまっていると個人的には思います。
従業員を雇っていたり部下の教育を担っている方は、ぜひ期待理論を従業員や部下のモチベーション向上に役立ててみてください!