「この人は高学歴だから仕事ができそう」
「この人は見た目に気を遣っていないから仕事ができなさそう」
ビジネスで誰かと対面した際、みなさんは上記のような考えを他人に対して抱いた経験はないでしょうか?
確かに学歴や見た目などにある程度比例することもあるでしょうし、第一印象で判断するのが良いという意見もあります。
ですが、必ずしも一部の印象でその人の能力や性格全体を正しく評価できるとは限りません。
このような考え方は「ハロー効果」によってもたらされるのですが、人事考課で間違った判断を下す要因となるかもしれないので注意が必要です。
今回の記事では、人事考課の課題と言われている「ハロー効果」や、ハロー効果に対処して正しい評価を下すポイントなどをご紹介します。
ハロー効果とは?まずは身近な例で解説
ハロー効果の意味
ハロー効果とは、ある特定の特徴や要素によって、他の要素に対する評価が歪んでしまう心理現象を意味します。
ハロー効果の意味を掴んでもらうために、まずは身近な例で説明します。
たとえば見た目が優れている人に対して「信頼できそう」とか「性格が良さそう」という良い印象を抱く場合や、逆に顔が怖い人に対して「性格が悪そう」とか「裏切ってきそう」という悪い印象を抱く場合、それはハロー効果が大きく影響していると言えます。
見た目が良くても性格が悪かったり裏切ってくる人はいますし、逆に人相が怖くても性格が良かったり信頼できる人はいますよね。
見た目と性格は必ずしも一致すると限らないのに、多くの人は見た目で性格を判断してしまいます。
このように、一部の印象で他の要素についても勝手に決めつけるのをハロー効果と呼ぶわけです。
ハロー効果の種類
後光効果とも言われるハロー効果は、「ポジティブ・ハロー効果」と「ネガティブ・ハロー効果」の二種類に分けられます。
ポジティブ・ハロー効果とは、ある人の良い面を見つけた際に、他の要素について実際よりも高く評価する現象です。
先ほどお伝えした「見た目が良いから性格も良いだろう」と判断する例は、ポジティブ・ハロー効果に該当します。
一方でネガティブ・ハロー効果とは、 ある人の悪い面を見つけた際に、他の要素について実際よりも低く評価する現象です。
「人相が怖いから性格が悪そう」と判断する例は、ネガティブ・ハロー効果に含まれます。
人事考課におけるポジティブ・ハロー効果と具体例
ハロー効果は、人事考課の大きな課題であると言われています。
というのも、ハロー効果が生じてしまうと、社員を正当に評価することができなくなり、優秀な人材を活用しないことで機会損失が生じたり、逆に高く評価しすぎてプロジェクトが失敗するなどの事態が生じるためです。
この項では、人事考課におけるポジティブ・ハロー効果についてお伝えします。
人事考課におけるポジティブ・ハロー効果とは
人事考課の場面におけるポジティブ・ハロー効果とは、ある人材を評価する際に、表面的な良い印象やたった一つの良い側面から、その人自身を過大評価してしまう現象です。
人事考課におけるポジティブ・ハロー効果の具体例
具体例は様々ありますが、今回は代表的なものを2つご紹介します。
具体例①:高学歴だから仕事ができると判断する
ポジティブ・ハロー効果の顕著な例は、学歴の高さを理由に仕事ができると判断するケースです。
確かに高学歴の人ほど、頭の回転や記憶力の面では優れている傾向があるでしょう。
しかし必ずしも「学歴が良い=仕事の能力が高い」とは限らず、学歴が低くても仕事ができる人はいますし、反対に高学歴でも仕事ができない人もいます。
具体例②:明るくてコミュ力があるから仕事の遂行能力があると判断する
こちらも良くあるケースですが、明るくてコミュ力がある人ほど、仕事の遂行能力があると判断されやすいです。
確かに明るくてコミュ力がある方が、社内でのチームワークや営業などでは有利かもしれません。
しかしただ人に好かれやすいだけで、マルチタスクが苦手だったり、論理的思考が苦手な人も少なくありません。
人事考課におけるネガティブ・ハロー効果と具体例
次に、人事考課におけるネガティブ・ハロー効果についてお伝えします。
人事考課におけるネガティブ・ハロー効果とは
人事考課の場面におけるネガティブ・ハロー効果とは、ある人材を評価する際に、表面的な悪い印象やたった一つの悪い側面から、その人自身を過小評価してしまう現象です。
人事考課におけるネガティブ・ハロー効果の具体例
ネガティブ・ハロー効果についても、主な具体例を2つご紹介します。
具体例①:営業が苦手だから仕事の遂行能力が低いと判断する
多くの会社では、新卒採用されたらとりあえず営業の仕事を任されるかと思います。
もちろんコミュ力があって営業が得意な人もいますが、中には営業で思うような成績を残せない人も出てきます。
そのとき営業ができない人に対して、「仕事ができない人」というレッテルを貼るのはネガティブ・ハロー効果の最たる例です。
なぜなら営業が仮に苦手だとしても、マーケティングや経営企画といった発想力や論理的思考力が問われる仕事は得意だったりするためです。
人には得意不得意あるにもかかわらず、一つの仕事ができないからって何もできないと決めつけるのは、その人にとっても会社にとっても勿体無いことです。
具体例②:根暗だから仕事ができないと判断する
根暗な人はどうしても仕事ができないと判断されがちです。
確かに営業などの職種では不利かもしれませんが、発想力や論理的思考力があれば他の職種で結果を残せるかもしれません。
先ほどの例でも言いましたが、一つの側面で何もかも決めつけると評価される社員の可能性を潰してしまいます。
「最近の若者はモチベーション(やる気)が低い!」という言葉をよく耳にします。実際社員のモチベーションが低い事実に頭を悩ませている経営者の方もいるかもしれません。社員のモチベーションが高ければ、離職率の低下や業績の向上など様々なメリットを[…]
ハロー効果により間違った人事考課を行わないためのポイント
これまでお伝えした通り、ハロー効果の影響があると相手のことを正当に評価できなくなります。
これは社員にとっても会社にとっても、長期的に見ると大きな機会損失となるかもしれないので対処が必要です。
ハロー効果により間違った人事考課を行わないためには、下記3つのポイントを実践するのが良いでしょう。
定量的な評価基準を明確に定める
主体性ややる気といった曖昧な基準により人事考課を行うと、どうしてもハロー効果が生じて評価者の主観が入った評価となってしまいます。
これでは正しい評価を下すのは困難ですし、不当に低く評価された社員はモチベーションが低下してしまいます。
そのような事態を防ぐには、「新規契約数」などといった定量的な評価基準に基づいて評価するのが良いでしょう。
定量的に測れる基準で評価すれば、公平かつ正しい評価を下しやすくなります。
複数の評価項目を設ける
そもそもハロー効果は、一つの要素や特徴のみで判断するからこそ生じる心理現象です。
つまりハロー効果の影響を小さくしたいのであれば、複数の評価項目を設定すれば良いのです。
複数の評価項目を設定すれば、「その人は何ができて何ができないのか」を明確にでき、正当な評価を下せるようになります。
また複数の項目で評価すれば、その人の強みである能力やスキルに合った仕事を任せることができ、「適材適所の人材配置」が可能になります。
多面評価を取り入れる
ハロー効果の効果を抑える上では、多面評価の導入も一つの手です。
多面評価とは、複数の評価者によって対象者を評価する仕組みです。
一人の評価者により評価すると、どうしてもその人の好き嫌いや重視する価値観などによって評価が左右されてしまいます。
しかし立場の異なる複数の評価者によって評価を下せば、様々な観点からその人を評価できるため、比較的公平な評価を下しやすくなります。
ハロー効果のまとめ
今回の記事では、ハロー効果とは何なのかを、身近な例を交えつつご紹介しました。
社内の人材を評価する際、どうしてもハロー効果により誤った評価を下しやすいのは仕方ありません。
ですがそのままでは会社にとっても社員にとっても不利益となるので、 ハロー効果の影響を小さくする対処を施す必要があります。
何かしらの機会に他人を評価する際、ハロー効果により誤った評価を下さないように意識するだけでも、正当な評価を下しやすくなると思います。