小売店の運営に携わっている方であれば、一度は「インストアプロモーション」という用語を耳にした経験があるのではないでしょうか?
インストアプロモーションは、少ない労力かつ低コストで売り上げや利益を伸ばす手法として、多くの企業で活用されています。
今回の記事では、そんなインストアプロモーションの意味や手法、活用のポイントなどをお伝えします。
インストアプロモーションとは
インストアプロモーション(ISP)とは、店内で行う販売促進行動です。
もう少し詳しく説明すると、お客さんに商品を購入してもらうためにお店の中で行う活動です。
例えば、スーパーでやっている特売や値引きがインストアプロモーションの最たる例です。
特売や値引きを店内でアピールすることで、お客さんの購買意欲をかき立てることができます。
インストアプロモーションは、店内で行う施策によって売上高の増加を目指す「インストアマーチャンダイジング(ISM)」の一環として行われます。
インストアマーチャンダイジングには、ISP以外に「スペースマネジメント」があります。
インストアプロモーションが販売促進を目的とした活動である一方で、スペースマネジメントは売り場スペースの工夫による客単価の向上を目的とした活動です。
小売店がISMにより売上高(利益)を伸ばす場合は、インストアプロモーションと併せてスペースマネジメントも同時に実施するのが好ましいです。
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インストアプロモーションのメリット
インストアプロモーションのメリットは、比較的気軽に低コストで実施できる点です。
新聞やチラシを使ってお店を宣伝するとなると、手間と費用がけっこうかかります。
外部の企業に頼る部分も出てくるため、簡単にはできません。
一方でインストアプロモーションの施策は、ちょっとした工夫で実行できるものばかりです。
多少コストや手間がかかる施策もありますが、広告やチラシを活用するよりは負担が軽減されます。
低コスト・少ない労力で実施できる点で、予算に余裕がない小売店にとってインストアプロモーションはメリットの大きい施策です。
インストアプロモーションの具体的な手法
インストアプロモーションの手法は、大きく「価格主導型」と「非価格主導型」に分類されます。
ここでは、それぞれの手法について簡単にご紹介します。
価格主導型インストアプロモーションの手法
価格主導型インストアプロモーションとは、値段の変動に関係する手法です。
一般的に知られているインストアプロモーションは、ここでご紹介する価格主導型の手法が大半です。
特売(値引き)
特売は通常価格よりも安い価格で販売する手法であり、多くのスーパーや小売店で行われています。
安さを全面的にアピールすることで、顧客の購買意欲を高めることができます。
また、あらかじめチラシなどで特売をアピールすることで、来店客数の増加も期待できます。
バンドル販売
バンドル販売とは、複数の商品をまとめて1つの商品として販売する手法です。
各商品を別々に購入する場合の合計金額よりも安くする事で、消費者にお得感を植えつけて、購入率を高めることができます。
増量パック販売
増量パック販売とは、値段は変えずに通常よりも容量を多くして販売する行為です。
値段は変わらないものの通常よりも容量が多いため、お客さんにお得さをアピールできます。
会員価格販売
会員価格販売とは、会員になってくれている人に対しては、通常よりも安い値段で商品を販売する行為です。
会員になった人の購買意欲を高められる点はもちろん、会員の購買情報を記録することで、「どの商品が好まれているのか」などの貴重な情報を集められます。
非価格主導型インストアプロモーションの手法
非価格主導型インストアプロモーションとは、価格とは無関係に行われる手法です。
非価格主導型の手法は、商品への理解や自社ブランドの固定客化を目的に実施されるケースが多いです。
クロスマーチャンダイジング
クロスマーチャンダイジングとは、お互いに関連する商品を同じ場所に陳列する手法です。
たとえば野菜売り場にドレッシングを陳列する手法が考えられます。
野菜を購入しに来た人に対して、野菜を食べる際に使われるドレッシングをついでに買ってもらえる効果を期待できます。
ついで買いによる客単価の向上を促せる手法として、クロスマーチャンダイジングはとても効果的な手法です。
デモンストレーション販売
デモンストレーション販売とは、消費者の目の前で商品を使用することで、商品の良さや使い方をアピールする手法です。
たとえば包丁など、一目見ただけではすごさが分からない商品に効果的な手法です。
お客さんに商品の良さを知ってもらえれば、購買につなげることができます。
ただし商品の良さを知ってもらうには高いトークスキルが必要なので、外部から実演販売のプロを派遣してもらうケースが多いです。
試食・試飲
ご存知のとおり試飲や試食は、商品を実際に食べて(飲んで)もらって、商品の美味しさをアピールする手法です。
味が良いものであれば、その場で購入意欲をかき立てられます。
また、「少し酸っぱい」とか「もう少し甘い方が良い」といった、お客さんの生の意見を知れる点もメリットです。
店頭イベント
商品の製造会社や小売店自身が店頭で行うイベントも、非価格主導型の手法に含まれます。
店頭でイベントを行うことで、商品の購買意欲を高める効果はもちろん、会社全体に対するイメージを良くする効果も期待できます。
インストアプロモーションで利益を伸ばすためのポイント
インストアプロモーションは、ただ単に施策を数打っていれば当たるというものではありません。
ただ闇雲に実施すると、かえって悪い影響をお店にもたらす可能性があります。
ここでは、インストアプロモーションで利益を伸ばす上で意識すべきポイントを2つご紹介します。
価格主導型に依存しない(非価格主導型の手法を重視する)
価格主導型の手法は、値段を実質的に安くするので、顧客の購買意欲を掻き立てやすいです。
しかし価格主導型の手法には、お客さんがその商品に対して心の中で思っている妥当な価格(内的参照価格)を下げてしまうデメリットがあります。
たとえば本来200円で販売している商品を特売で150円にした場合、それ以降お客さんの心の中には、「この商品は150円で買えるもの」という認識ができあがってしまいます。
よって再び200円に戻した時に、高いと感じて買ってもらいにくくなるのです。
購入してもらうために無理に値段を下げると、今度は赤字となってしまいます。
価格主導型の手法にはこのようなデメリットがあるので、非価格主導型のインストアプロモーションを重点的に行うのがベストです。
関連商品を併せて陳列してついで買いを促したり、デモンストレーションによって購買意欲を高める方法であれば、お客さんの内的参照価格を下げずにすみます。
むしろ自社商品への理解が深まったり満足度が高まって、長期的にひいきにしてもらえる可能性も上がります。
価格主導型が完全にダメとは言いませんが、十分な利益を手元に残したいのであれば、非価格主導型のISPを重視するのが良いでしょう。
価格主導型の手法は、値段の変動による効果が大きいものに絞って活用する
価格主導型のインストアプロモーションは、価格の変動による効果が大きいもの(=需要の価格弾力性が高い商品)に絞って活用するのがオススメです。
なぜなら、価格を下げても需要量が増えない商品に適用しても、ただ消費者の内的参照価格を低下させるだけで売上は増えず、デメリットしかないからです。
価格主導型のISPを行う際は、価格を下げた際に需要量が明確に増える商品であるかどうかをあらかじめ確認しましょう。
なお需要の価格弾力性が高い商品の具体例としては、海外旅行ツアーや高級和牛など、ぜいたく品が挙げられます。
海外旅行や高級和牛のステーキなどは、ちょっと値段を下げると需要量が急激に増加する傾向があります。
ただしブランド物の場合、価格を下げるとブランド力が低下するケースがあるので注意です。
インストアプロモーションのまとめ
店舗内で比較的簡単にできる施策として、インストアプロモーションはとても効果的な手法です。
小売店を営んでいる方は、是非一度インストアプロモーションの手法を実践してみてはいかがでしょうか?
ただし価格主導型の手法は、長期的には悪影響を及ぼす可能性があるので多用は禁物です!