中小企業診断士クラゲの経営学・マーケティングラボ

中小企業診断士の資格や新規事業の経験を持つクラゲが、経営学やマーケティングをゆる〜く分かりやすく伝えるブログです。

ジョブ理論とは?ジョブ理論を分かりやすく要約してみる【徹底解説!ジョブ理論シリーズ:第1回】

ジョブ理論

突然ですが、新規事業のアイデアを考えようと思い立ったら、どのような方法でアイデアを立案しますか?

多少マーケティングをかじっている方であれば、顧客の抱えるニーズを満たすようなサービスや商品を提供するのが良いと思うでしょう。

確かにそれは正解だと思いますが、一体どうやって顧客のニーズを特定するのでしょうか?

一般的に知られているマーケティングの理論では、顧客のニーズを特定する方法について、詳しくは説明してくれていないなと思います。

そんな中、つい最近自分が読んだ「ジョブ理論」の本に、顧客のニーズを的確に捉える事と、それを基に事業のアイデアを形にする事に関する具体的なヒントが書かれており、マーケティングをかじっている身としてとても感動しました。  

そこで全3回にわたって【徹底解説!ジョブ理論シリーズ】と題して、ジョブ理論の本を読んで得た「ジョブ理論の有用性や実践方法」などについて、ジョブ理論を知らない方でも分かるように、分かりやすく解説してみようと思います。

第1回となる今回は、ジョブ理論の概要について特徴を要約します。

ジョブ理論を知る事で、顧客に受け入れられる新規事業のアイデアを形にできるかもしれません。

また、既存商品やサービスをどのように改良すれば良いかのヒントも得られると思います。

ジョブ理論とはどんな理論?

ジョブ理論とは、名門中の名門「ハーバード・ビジネス・スクール」で教員をしていたクレイトン・クリステンセン教授が発表したマーケティングの理論です。

クレイトン・クリステンセン教授は、経営学の分野では有名な「イノベーションのジレンマ」の理論を提唱したすごい人でもあります。

イノベーションのジレンマも、実際のビジネスにおいて知っておいて損はない理論ですので、良ければご覧になってください!

business-kurage.hatenablog.com

そんなクリステンセン教授が提唱したジョブ理論とは、「お客さんはどうしてその商品を買うのか」という観点から、お客さんの抱える潜在的なニーズを見出す考え方です。 

これだけではどんな理論かいまいち理解できないと思うので、次項からはジョブ理論の特徴について要約していきます。

特徴①:ジョブとは「特定の状況で顧客が成し遂げたい進歩」を意味する

これだけでは「特定の状況で顧客が成し遂げたい進歩?なにそれ」ってなると思うので、一つ一つ分かりやすく説明します。

・特定の状況

ジョブ理論における特定の状況とは、ある商品やサービスを購入する時点の前後最中の状況を意味します。

ジョブ理論では、商品・サービスを利用する前後最中の状況をストーリーとして考え、取るべき改善策や新規事業のアイデアを考えていきます。

例えばスポーツドリンクを購入する顧客を分析した場合、特定の状況は以下になります。

  • 特定の状況(前):運動して喉が渇いたから、喉の渇きを解消したいと思っている
  • 特定の状況(最中):スポーツドリンクを購入して飲んだものの、甘すぎて飲んだ気にならない
  • 特定の状況(後):次からはもっとさっぱりした味のスポーツドリンクを購入しようと思った

上記の分析結果をストーリー仕立てにして、アイデアや改善策を考えます。

・成し遂げたい進歩

ジョブ理論における「成し遂げたい進歩」とは、「やらなければならないこと」や「積極的にやりたいこと」など、お客さんが達成したい何らかの目標を意味します。

一見すると難しいですが、「〜がしたい」という願望を成し遂げたい進歩と考えてもらえれば大丈夫です。

ここで注意してもらいたいのが、ジョブ理論では「商品やサービスを利用すること」ではなく、「なにを達成したいのか?」という視点でお客さんの分析を進める必要がある点です。

先ほどの例で言えば、「飲み物を買いたい」というニーズではなく、「喉の渇きを解消したい」という願望を基に、分析を進めていかなくてはいけません。

何故なら商品やサービスの観点から分析を進めていくと、「根本的にお客さんは何を求めているのか?」という視点が薄れてしまい、的外れなアイデアが出来上がる恐れがあるためです。

たとえば「飲み物を買いたい」というニーズに基づいて商品改良を進めた場合、美味しさを追求するあまり、本来顧客が求めている「さっぱりした飲み物」からはかけ離れた甘ったるい飲み物になる可能性があります。

一方で「喉の渇きを解消したい」という願望に基づけば、喉をさっぱりさせることができる薄味でスッキリした味の飲料水を作れます。

的外れな商品やサービスを提供しないためにも、顧客が成し遂げたい進歩に着目する必要があります。 

・結局ジョブって何?

やや説明が回りくどくなりましたが、要するにジョブとは、お客さん一人一人が商品を購入する前後で解決したい事柄を意味します。

「飲料水を購入する」という表面的には同じ行動であっても、お客さん一人一人が持つジョブは全く異なったりもします。

疲れているから甘ったるい飲み物が飲みたい人は「甘い飲み物を飲みたい」というジョブを持っているかもしれませんが、先ほどの例のように「さっぱりした飲み物で喉を潤したい」というジョブを持っている人もいます。 

顧客の属性(年収や年齢など)を重視する従来型のマーケティングとは異なり、ジョブ理論では顧客一人一人が直面している状況を考慮するため、より詳細かつ的確に顧客が抱える真のニーズを分析することができます。

特徴②:お客さんが持つ「ジョブ」を解決することがジョブ理論の目標

ジョブ理論では、お客さん一人一人が抱えている課題(成し遂げたい進歩)を分析する方法でした。しかしただ分析しただけでは、ビジネスにおいては何の役に立たないでしょう。

分析によって気づいた顧客の抱えている「成し遂げたい進歩」を実現する方法を提供し、満たしたいと思っていた願望を成就させることで初めて、ジョブ理論の効果を期待できます。

先ほどの例で言えば、「喉の渇きを解消したい」という成し遂げたい進歩を実現させるために、さっぱりした飲み物を提供する必要があります。

顧客からすると、これまで達成できなかった進歩を達成できるため、その企業の商品を積極的に「雇う(利用する)」でしょう。

特徴③:顧客は必ずしも機能的な目的でのみ、商品やサービスを利用する訳ではない

マーケティングの落とし穴でもある部分ですが、お客さんは必ずしも商品やサービスが本来持つ機能を求めて商品を購入するとは限りません。

こちらの特徴は、時計で例えると分かりやすいと思うので、そちらの例で説明します。

例えば時計は、「時間を表示する」という機能を提供してくれます。しかし時計を購入する人は、「時間を表示する機能が欲しいから」という目的だけで購入するでしょうか?

「デザイン性が良くて、身につけると贅沢な気分を味わえる」とか「高級ブランドだから、身につけると他者から羨ましく思われるから」といった理由で購入する人もいますよね。

このように商品やサービスは、「贅沢を味わいたい」といった感情的な理由や、「他人から羨ましく思われたい」といった社会的な理由でも利用されます。

機能的な側面にのみ着目していては、思い浮かぶアイデアや改善策に限界があります。時計であれば性能の改善くらいしか思い浮かびません。

しかし感情や社会的な側面に目を向ければ、これまでは気づけなかった側面に気づくことができ、新たなアイデアを見出せます。

例えばゴージャスで贅沢な気分になれる時計を製造したり、ブランド力を高めることで商品の社会的な価値を上げる事で、従来とは異なる顧客層を獲得できる可能性があります。

新規事業のアイデアを考える際は、感情的側面や社会的側面にも目を向けるのがオススメです。 

ジョブ理論を使うと何ができるの?

結局のところジョブ理論で何ができるの?ってところが一番気になる部分だと思うので、ジョブ理論で出来ることを簡単に要約します。

ジョブ理論の効果①:既存の製品・サービスを、より顧客に受け入れられるものにできる

ジョブ理論を活用すれば、既存の製品やサービスをより顧客のニーズに沿ったものに改良できます。

たとえば自社製品を利用している顧客を対象に、ジョブ理論を活用してみるとしましょう。

既存顧客が直面する特定の状況をアンケートや行動観察により分析すると、自社のサービスや製品にどんな不満を持っているか見当をつける事ができます。

その分析に基づいて、顧客が成し遂げたい進歩を解決できるように商品やサービスを改良すれば、より顧客からの支持を集める事ができるでしょう。

既存製品やサービスにジョブ理論を用いる際は、「顧客がどんなジョブを持っているのか」、「顧客の持つジョブを解決する上で、自社製品やサービスには何が足りないのか」という観点を持つのが重要だと思います。

ジョブ理論の効果②:既存産業からマネタイズできる新規事業のアイデアを見つける事ができる

ジョブ理論は、十分成熟していて新規参入する余地がなさそうに見える産業の中で、ニッチなサービスや商品を開発できる際に役立つと思います。

たとえば美容室や飲食店などは十分成熟している業界なので、今更差別化されたサービスを思いつくのは不可能だと思われるかもしれません。(言うまでもなく、既存他社と同じサービスを始めるのでは、上手くいく可能性は低いでしょう。)

しかし成熟している業界であっても、現状のサービスや商品では自身の抱えるジョブを解決できない顧客は存在します。

そこでジョブを的確に解決できるサービスや商品を提供すれば、成熟した産業であっても十分新規事業として成立する可能性はあるのです。

たとえば「QBハウス」さんという会社は、「仕事の合間で短時間かつ低価格で髪を切りたい」というジョブを持つ顧客が多いことに目をつけ、ヘアカットのみを短時間で行えるサービスに特化し、見事大成功を収めています。

このように成熟した業界であっても、顧客が抱えているジョブを見つけられれば、ニッチな市場でマネタイズできるアイデアを形にできるのです。 

ジョブ理論のまとめ

今回の記事ではジョブ理論の特徴や出来ることを分かりやすく要約してみました。

真の顧客視点に立てるジョブ理論の考え方は、事業を進める上でとても役立つと思います。

新規事業のアイデアを考えるのは難しいですが、ジョブ理論を使えばその苦痛や難しさが多少なりとも軽減される上に、失敗する可能性を減らす事ができるでしょう。

新規事業のアイデアを考える際や既存製品やサービスを改良する際には、ぜひジョブ理論を活用してみてください! 

【徹底解説!ジョブ理論シリーズ】の第2回では、ジョブ理論の実践方法(フレームワーク)について解説します。

ジョブ理論を実務で役立てる方法をわかりやすく解説するので、是非次の記事も見てくれると嬉しいです!

business-kurage.hatenablog.com