「リーダーシップのある人材を求めています」とか「経営者や管理職にはリーダーシップが欠かせない」といったフレーズは、ビジネスに携わる方であれば一度は耳にした経験があるでしょう。
リーダーシップが組織にとって重要なのはもちろんですが、一体どのようなリーダーシップが企業にとって必要なのでしょうか?
組織にとって好ましいリーダーシップについては、これまで様々な理論が提唱されてきました。
今回の記事では、リーダーシップの主要な理論について、これまでの変遷を辿りながらご紹介します。
リーダーシップを使って事業運営の効果を最大限高めたい方には、何かしらのヒントを与えられると思います。
資質特性論
もっとも古い研究アプローチであり、リーダーシップを最初から備わっている特性であるとする理論です。
資質特性論の研究では、実際にすぐれた功績を残したリーダーの人間性とリーダーシップの相関関係を明らかにする試みが行われました。
その結果、優秀なリーダーは主に下記の特性を持つという結論に至りました。
- 学力や想像力が高い
- 協調性や忍耐力がある
- 責任感にあふれている
とはいえ、優秀なリーダー全員が上記の特性を持っているわけではありません。
科学的な根拠に乏しく、昨今はリーダーシップは生まれ持った特性のみでは説明できないと考えられています。
行動類型論
行動様式からリーダーシップに欠かせない要素を特定しようとする理論です。
要するに、リーダーシップを持って生まれたものと捉える資質特性論とは異なり、行動類型論ではリーダーシップを行動次第で出せるものと捉えているのです。
様々な理論がありますが、ここでは主要な3つのリーダーシップ理論をご紹介します。
レビンのリーダーシップ類型論
レビンのリーダーシップ類型論では、アイオワ大学での研究結果を基に、リーダーシップを下記の3種類に分けました。
そしてその中で、どのリーダーシップがもっとも組織に対して良い効果をもたらすかを結論づけました。
- 民主型:リーダーはあくまでサポート役に徹し、意思決定は関与する人全員で行う
- 独裁型:リーダーが全ての意思決定を行い、全ての行動に対して細かく指示を出す
- 放任型:リーダーは組織運営に関与せず、現場に全てを任せる
結論としては、民主型のリーダーシップが「集団の団結力」や「メンバーの積極性」、「メンバーの満足度」、「組織の作業成果」のいずれの面でも優れているとなりました。
要するに、サポート役に徹して個々人を尊重するリーダーが、モチベーションアップや生産性向上の面でもっとも優れているという結論に至ったのです。
PM理論
リーダーシップを「Performance(目標達成機能)」と「Maintenance(集団維持機能)」の有無から、リーダーシップを4種類に分ける理論です。
前者は組織の目標を達成させる機能、後者は人間関係を良好にマネジメントする機能をそれぞれ意味します。
言うまでもなく、PM型(どちらの機能も持ち合わせている)のリーダーが生産性や組織の一体感といった面でもっとも優れているという結論に至りました。
とはいえ、どちらかの能力が不足している人材は少なくありませんよね。
そこで不足する能力を教育で補ったり、複数の人材を登用することでリーダーシップのバランスをとる動きが見られるようになりました。
状況適合論
先ほどご紹介した行動類型論は、すぐれたリーダーシップを紐解く上ではとても有用な理論であり、現代でも活用されています。
しかし行動類型論で良いとされる行動を真似しても、すぐれたリーダーシップは身につかないという課題が見つかりました。
そんな行動類型論の課題を解決するために生まれたのが状況適合論です。
状況適合論とは、組織が置かれている状況によって、効果的なリーダーシップは変わるとする理論です。
要するに、場面によって適切なリーダーシップは決まるという訳です。
代表的な理論には、「フィードラー理論」と「パスゴール理論」の2種類があります。
フィードラー理論
「部下と接する際のスタイル」と「リーダーが置かれている状況」が適合するのが重要だとするリーダーシップ理論です。
フィードラー理論では、「仕事内容のクリアさ」や「リーダーの権限の強さ」、「リーダーと従業員の人間関係の良好さの程度」によって、「仕事を重視するリーダーシップ」と「従業員との関係を重視するリーダーシップ」のどちらが優れているかは異なるとしています。
それぞれのリーダーシップは、下記のケースに適しているという結論に至りました。
- 仕事を重視するリーダーシップ
→3つの要素が極端に良いor悪い場合
例1)人間関係がよく、仕事内容も明確、リーダーの権限が強いケース
例2)人間関係が悪く仕事内容も不明瞭、リーダーの権限が弱いケース
- 従業員との関係を重視するリーダーシップ
→3つの要素が中程度の場合
例)人間関係は普通、仕事内容は適度に明確、リーダーの権限もそれなりにあるケース
パス・ゴール理論
従業員に必要な道筋(パス)を示して、業務目標(ゴール)の達成を助けることが、有能なリーダーシップであるとする理論です。
具体的には、「部下の特徴」と「仕事環境の特徴」という2つの要因の組み合わせによって、取るべきリーダーシップは変わるとしています。
パス・ゴール理論の結論は、「リーダーはあくまでチームを補完するスタイルを取るべき」というものです。
従業員の能力が高かったりタスクが明白である場合には、過度なフォローはむしろ好ましくないとしているのが特徴的です。
会社などの組織が目標を達成するには、計画の策定や戦略に加えて、リーダーシップの発揮も非常に重要です。リーダーシップと聞くと、カリスマ性を発揮したり、積極的に部下を引っ張っていくことを想像するかもしれません。ですが実は、リー[…]
コンセプト理論
過去の研究を踏まえ、近年もっとも主流となっているリーダーシップ論が「コンセプト理論」です。
コンセプト理論とは、ビジネスシーンで起こり得る状況などを考慮した上で、各場面に応じたリーダーシップを考える理論です。
今回は、その中でも代表的なリーダーシップ論を2つお伝えします。
カリスマ的リーダーシップ論
「通常では取らない行動」 や「リスクを取ること」など、周囲に対して圧倒的な影響を及ぼすリーダーの個人的な資質をリーダーシップとする理論です。
たとえば画期的な商品を世の中に輩出し続け、Appleを世界的な大企業に押し上げたスティーブ・ジョブズ氏などのリーダーシップはこの理論で説明できます。
カリスマ的リーダーシップは、従業員のモチベーションや満足度を高めたい場合や、事業を大きく発展させる場合に効果を発揮するとされています。
変革型リーダーシップ論
組織に変革をもたらすリーダーシップに着目した理論です。
具体的には、従業員全体に危機感を持たせるように働きかけたり、大きなビジョンを掲げてそこに向けて小さい成功を短時間で積み重ねるといった行動が、変革型リーダーシップの特徴です。
経営危機に陥っている企業が回復を果たす上では、変革型リーダーシップを取り入れるのが有用だと推察されます。
自社に合ったリーダーシップの理論を見つけるのがポイント
これまでご紹介してきたように、リーダーシップの理論は時代によって移り変わっており、100%正しいと言えるリーダーシップは見つかっていません。
確固たる正解がない以上、様々な理論を知った上で、状況に応じて適したリーダーシップを選択するのが大切だと思います。
たとえば一般的な中小企業であれば、行動類型論に基づいて従業員との関係や従業員の意思や能力を重視しつつ、自身はサポートや調整役に徹するリーダーシップが良いでしょう。
一方で事業の大きな成長を目指すスタートアップであれば、カリスマ的なリーダーシップも必要となってくるでしょう。
リーダーシップの理論をただ勉強するだけでなく、自社の状況に落とし込めて有効活用するのが大事です。
リーダーシップの理論まとめ
一口にリーダーシップといっても、理論によって「どの様なリーダーシップが良いのか」は変わってきます。
一概に100%正しいリーダーシップはないため、自社の状況や達成したい目標などに応じてリーダーシップの理論を適切に使い分けるのが大事です。
今回ご紹介した内容を踏まえて、一度リーダーシップのあり方について考えてみても良いのかなと思います。