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M&Aのメリット〜売り手・買い手双方のメリットを分かりやすく解説!〜

M&Aのメリット

M&A(合併と買収)は、経営戦略を効率的に進める手段として、大企業のみならず中小企業やベンチャー企業からも大きな注目を集めています。

M&Aを実施すると、売り手と買い手共に様々なメリットを得られます。M&Aの実行を検討する際には、当然どのようなメリットを得られるのか知っておいた方が良いです。

「M&A メリット」と検索して出てくる記事の多くは、M&Aのメリットについて専門的で難解な説明をしていると思います。

学問的な知識が豊富な方であれば理解できるでしょうが、大多数の方には少々難しいかなと思いました。

そこで今回の記事では、買い手と売り手双方の観点から、M&Aで得られるメリットを分かりやすく解説しようと思います。

実際自分が事業売却に携わって得た気づきも踏まえた上で、M&Aのメリットをお伝えします!

M&Aのデメリットに関しては、下記の記事をご参照ください!

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売却する側がM&Aで得られるメリット

まず初めに、会社や事業を売却する側が得られるM&Aのメリットをご紹介します。

M&Aが売り手にもたらすメリットは、下記の5つです。

メリット①:多額の売却利益を得られる

会社や事業を売却すると、会社の価値に応じた金銭を受け取ることができます。

一般的には営業利益の3年〜10年分の金額を、M&Aにより受け取れると言われています。

事業内容が先進的であったり、独自の技術やブランド力といった強みを持っていれば、より大きな売却利益を得られる可能性もあります。

売り手の経営者にとって、多額の売却利益を得られる点はM&Aの魅力的なメリットです。

実際近年は、最初からM&Aを目的に会社を立ち上げる経営者も少なくありません。

メリット②:後継者不足により事業承継できない問題を解決できる

近年日本国内で進行している高齢化は、世の中の9割以上を占める中小企業にも影響が及んでいます。

多くの中小企業では経営者の高齢化が進行しており、会社を後継者に継ぐ(事業承継)タイミングが訪れています。

家業を継ぐことが当たり前ではなくなった現代においては、子供に事業承継してもらえないケースが少なくありません。

子供や従業員といった身近な人に事業承継してもらえずに、止むを得ず廃業する中小企業も少なからず存在します。

そんな事業承継問題を解決できるのが、M&Aによる会社売却です。

M&Aにより会社を第三者に売却すれば、会社を存続させることが可能です。

信頼できる身近な経営者などに会社を売却し、自社の培ってきたノウハウや技術力を残せるのは経営者の方にとっては嬉しいメリットです。

メリット③:自社のみでは実現できない事業の成長を実現可能

業種によって差はあるものの、事業を一定以上の規模に成長させたいのであれば、人員や資金といった経営資源が沢山必要です。

ご経験がある方もいらっしゃるかと思いますが、経営資源を多く持たない中小企業が事業を大きくスケールさせるのは正直困難だったりします。

しかし大手企業とのM&Aを行い大企業の傘下に入れば、潤沢にある経営資源を活用してさらなる事業の成長を実現できます。

経済のグローバル化や製品ライフサイクルの短縮化などの影響で、規模の小さい事業者が長期的に経営を存続するのはますます困難となっています。

会社の生き残りを優先して、M&Aにより大企業の傘下に入るのはとても合理的でメリットの大きい戦略だと思います。

メリット④:主力の事業に集中できる

M&Aには株式譲渡により会社丸ごと売却する手法だけでなく、事業譲渡や会社分割により一部の事業のみ売却する手法もあります。

一部の事業のみM&Aにより売却すれば、主力事業に集中できるメリットを得られます。

複数の事業を行う場合、稼ぎ頭となる主力事業があれば、あまり重要でない事業も出てきます。

あまり重要でない事業を売却すれば、その事業に費やしていた資金や人員を主力事業に回せるようになります。

主力事業に経営資源を集中させられるため、より一層会社全体としての競争力が高まります。

多くの中小企業は保有する経営資源に限りがあるため、得意分野に集中しつつ、苦手な部分は選択的にやらない戦略を採るのが大事です。

主力事業に集中する足がかりを得られる点は、中小企業にとっては長期的に見て大きなメリットです。

メリット⑤:廃業による支出を回避できる(従業員の雇用を守れる)

経営不振などを理由に会社を廃業するとなると、多額の廃業コストがかかります。

廃業コストに加えて、頑張って働いてくれた従業員を解雇するため、従業員を路頭に迷わせる恐れもあります。

廃業する代わりにM&Aを実施すれば、上記の事態を回避できるメリットを得られます。

会社を売却すれば自ら廃業する手続きが不要となる上に、基本的に従業員の雇用も買い手企業に引き継げます。 

売り手が得られるM&Aのメリットは、以上5つとなります。

お伝えしたように、M&Aにより事業や会社を売却すると、経営者はもちろん従業員にも大きなメリットがもたらされます。

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買収する側がM&Aで得られるメリット

次に、会社や事業を買収する側が得られるM&Aのメリットをご紹介します。

M&Aが買い手にもたらすメリットは、下記の5つです。

メリット①:事業の規模を拡大できる

自社と同じ事業を行う会社とのM&Aでは、事業規模を拡大できるメリットを得られます。

事業規模を拡大するには、販売網や人員、工場や機械設備などの数量を増やす必要があります。

M&Aにより自社と同じ事業を行う会社を買収すれば、事業の拡大に必要な販売網や人員といった経営資源を一度に全て獲得できます。

経営資源の数が増えるため、多くの製品やサービスを顧客に提供できるようになり、結果的に業績もより急速に伸びます。

また生産量が増えるため、「規模の経済性」というメリットも得られます。

規模の経済性とは、生産量が増えるに従って1個あたりの生産コストが逓減する現象です。

M&Aを行い規模の経済性を発揮できれば、他社よりも少ないコストで商品を販売できるため、ますます市場での競争が有利になります。

M&Aの対象先を探す際には、事業規模拡大のメリットをどれほど得られるかを基準にすると、ハズレくじを引くリスクを減らせると思います。

メリット②:多角化の成功可能性を高められる

自社と同種の事業を買収すれば規模拡大のメリットを得られますが、異種の事業を買収すれば「多角化」の成功可能性を高められるメリットを得られます。

多角化とは、簡単にいうと一つの会社で複数の事業を営む行為です。

多角化経営を行うと、ある事業がダメになっても全社的な業績を大きく低下させずに済むメリットを得られます。

多角化は本業とは異なる分野に進出する行為なので、成功する可能性はあまり高くありません。

時間を費やして多角化を行なった結果、思いの外結果が出ずに大赤字となるケースは多々あります。

一方で多角化したい分野ですでに成功している会社を買収すれば、失敗するリスクを大幅に抑えることができます。

本来であれば難易度の高い多角化を低リスクで実現できる点は、M&A特有のメリットと言えるでしょう。 

メリット③:弱みの補填・強みのさらなる強化につながる

M&Aによる買収には、弱みの補填や強みのさらなる強化を実現できるメリットもあります。

たとえばアイデアはあるものの技術力に難を抱える会社が、技術力のある企業を買収したとしましょう。

M&Aにより技術力という弱みを補填できるため、アイデアを技術力で実現化し、大きく業績を伸ばせる可能性が出てきます。

一方で東日本での豊富な販売網を強みとしている会社が、西日本に豊富な販売網を持つ会社とM&Aを実施すると、販売網という強みをさらに強化し、全国的にシェアを獲得できるようになります。

このようにM&Aには、業績アップを目指す上で必要な経営資源を獲得できるメリットもあるのです。

メリット④:シナジー効果を期待できる

M&Aを実施する多くの企業が期待するメリットに、「シナジー効果」というものがあります。

シナジー効果とは、ある複数の事業を一つの会社が運営することで、それぞれ別の会社が行う場合と比べてより大きな効果が生まれる現象です。

要するに「1 + 1」が3とか4になる現象です。

たとえば高級イタリアンレストランを経営する会社が、おしゃれなバーを経営する会社を買収したとしましょう。

レストランとバーの運営ノウハウが一つになることで、「美味しいイタリアンを出すおしゃれなバー」という新たなコンセプトのお店が生まれます。

新たなコンセプトのお店を経営した結果、それぞれ別々に経営する場合と比べてより多くの利益が生み出せた場合、その現象をシナジー効果と呼びます。

M&Aが上手くいけば、買収した会社とのシナジー効果が生まれ、業績アップやコスト削減など様々なメリットが期待できます。

M&A相手を探す際には、シナジー効果によるメリットを享受できるかどうかを基準にするのを強くオススメします。

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メリット⑤:スピーディーに経営戦略を実行できる

実はM&Aにおける最大のメリットは、「スピーディーに経営戦略を実現できる点」です。

多角化や事業規模の拡大といったM&Aで得られるメリットは、自社でコツコツ事業を行う場合でも十分実現できます。

しかし商品の流行り廃りが激しかったり、多額の資金を投入して急激に事業を拡大しようとする企業が存在したりと、企業を取り巻く環境は日々激変しています。

そんな変化の激しい環境で自社で一からコツコツ事業を成長させようとすると、他社との競争に追従できなかったり、市場のトレンドについていけなくなるリスクがあります。

多大な時間や費用をかけて新規事業を育成したにも関わらず、時代遅れとなったり他社との競争に負けてしまっては、それまでの競争が水の泡です。

もちろん自社でコツコツ強みを育てる事にもメリットはありますが、上記のようなデメリット(リスク)があるのも事実です。

一方でM&Aを活用すれば、多角化にしろ事業規模の拡大にしろ、他の会社を買収すれば基本的にその時点で実現できてしまいます。

スピーディーに戦略を実行できるため、他社に先駆けて市場でのシェアを獲得したり、ブランド力をいち早く育てられたりと、様々なメリットを得られます。

「お金で時間を買う行為」とも言われるように、M&Aは変化の激しい時代においては、とても大きなメリットをもたらす戦略なのです。

M&Aのメリットに関するまとめ

今回の記事では、M&Aのメリットに関して、売り手と買い手双方の観点からお伝えしました。

お伝えした通りM&Aには沢山のメリットがあり、上手く活用できれば絶大な効果を発揮します。

ただしM&Aにはメリットばかりでなく、買収する際に簿外債務を引き継ぐリスクがあるといったデメリットも多々あります。

M&Aは今後を左右する行為となりかねないので、メリットとデメリットを踏まえた上で慎重に実施するのが望ましいです。