マクドナルドの経営戦略【中小企業診断士が徹底解説】

ハンバーガチェーンのマクドナルドは、世界各地に進出しており、世界中から愛されています。

日本でも例外ではなく、ほとんどの方は1度はマクドナルドを食べた経験があるほど、知名度や人気度は高いです。

ではなぜ、マクドナルドは世界中に店舗を展開するほどの大成功を収めているのでしょうか?

今回の記事では、マクドナルドが大成功を収めている理由を、経営戦略の観点から徹底解説します。

マクドナルドの基本的な経営戦略

マクドナルドが実践している経営戦略は、大きく「コストリーダーシップ戦略」、「市場浸透戦略」、「リーダー戦略」の3種類に大別できます。

この章では、マクドナルドがそれぞれの経営戦略を、どのような形で実践しているかを詳しくご紹介します。

標準化とスケールメリットを活かしたコストリーダーシップ戦略

コストリーダーシップ戦略とは、他社よりも少ないコストで製品やサービスを作る経営戦略です。

マクドナルドでは、全店舗で共通したメニューを導入することや、店内での従業員教育の徹底により、マネジメントやサービスの標準化を実現しています。

また、店舗数の多さによるスケールメリットを活かし、最高品質の原材料を安価かつ安定的に調達できるサプライチェーンを構築しています。

これにより、同社では競合他社よりも少ないコストで商品を販売することに成功しています。

低コストで生産した商品を低価格で販売する戦略により、ファミリー層や若者からの支持を得るブランドとなったのです。

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継続的な新製品開発やサービス力向上による市場浸透戦略

マクドナルドを象徴する経営戦略には、コストリーダーシップ戦略に加えて「市場浸透戦略」もあります。

市場浸透戦略とは、すでに事業を展開している分野にて、既存製品・サービスの売上増加や新たな顧客獲得を目指す経営戦略です。

今ではファストフード業界で確固たる地位を築くマクドナルドですが、1990年代〜2010年頃は大幅な低コスト・低価格戦略を進めすぎたことで、業績が大きく低下していました。

一時は再起不能とも思われたマクドナルドですが、同社は過度なコストリーダーシップ戦略を控えつつ市場浸透戦略を進めることでV字回復を果たしました。

具体的には、メガマックやえびフィレオなどの新商品を絶えず開発・販売したり、創業者のレイ・クロックが掲げたQSC&V(品質、サービス、清潔さ、価値)を重視したサービス性の強化により、客単価の向上や新規顧客の獲得を実現しました。

コストや値段だけでなく、顧客を重視した経営戦略に切り替えたことが、マクドナルドの復活につながったのです。

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幅広い顧客・地域をターゲットとしたリーダー戦略

リーダー戦略とは、特定の市場でトップの市場シェアを誇るリーダー企業に適した経営戦略です。

具体的には、市場そのものを大きくする「周辺需要の拡大」、価格以外の面で競合他社と勝負する「非価格対応」などが該当します。

ハンバーガー業界でのリーダー企業として、マクドナルドもリーダー戦略を独自の形で実践しています。

たとえば従来はファミリー層や若者層が主な顧客となっていましたが、朝マックの導入により通勤中の会社員からの需要獲得につながりました。

また、プレミアムローストコーヒーの提供を開始したことで、食事だけでなくカフェとして場所を確保したい層にも需要を拡大しています。

このような周辺需要の拡大は、マクドナルドがリーダー企業だからこそ実現できる経営戦略と言えます。

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マクドナルドの経営戦略が持つ弱み

合理的な経営戦略により圧倒的な業績を誇るマクドナルドですが、その経営戦略にはいくつか弱みもあります。

この章では、マクドナルドの経営戦略が持つ弱みを2つお伝えします。

「低価格」というブランドイメージが強い

マクドナルドには、過度な低価格路線に走った経緯があります。

それが原因で失敗して以降は、多少は高付加価値の製品や質の高いサービスにも注力していますが、依然として「低価格」というブランドイメージは根強いです。

一般論ですが、消費者は「安いものは悪い」、「高いものは高品質」といった感じで、価格で品質を決める傾向があります。

この傾向を「価格の品質バロメーター機能」といい、人によって差はあれど飲食品にも当てはまります。

マクドナルドは低価格というブランドイメージがもたれているため、一定数の人に「品質が悪い」とか「味は他のハンバーガーチェーンよりも劣っている」と認識されていると考えられます。

こうした根強いブランドイメージは、ブランド名を変えない限り簡単には払拭できません。

そのため、今からスターバックスのように、付加価値の高い製品で利益を取る経営戦略や、徹底的なサービス面での差別化は図りにくいです。

以上より、経営戦略やマーケティングの軌道を修正しにくい点が、マクドナルドの持つ弱みと言えます。

外食に対する需要減少に影響を受けやすい

多くの企業が複数の事業を営む「多角化戦略」を取り入れる一方で、マクドナルドは基本的にハンバーガーチェーンの運営に特化した経営戦略を続けています。

そのため、外食に対する需要減少に大きな影響を受ける可能性があります。

たとえば日本では人口の減少に伴い、国内全体で外食の需要が減少しています。

また、リーマンショック級の不景気が起きれば、節約志向の高まりにより外食需要が減少する可能性が考えられます。

ハンバーガーチェーンの運営に特化した経営戦略である以上、需要の変動次第では大きく業績が悪化するでしょう。

マクドナルドが目指す今後の経営戦略とは

外食チェーンのマクドナルドは、今後どのような経営戦略によりさらなる成長を目指すのでしょうか?

マクドナルドの決算発表を読むと、下記2つのポイントを重視した経営戦略に取り組んでいることが分かります。

未来型店舗体験やサービス力向上による顧客満足度・収益性の向上

一昔前までマクドナルドでは、マネジメントの標準化や原材料費の削減などにより、徹底したコストリーダーシップ戦略をとっていました。

ですが近年は、顧客のニーズを満たす質の高い商品・サービスを提供することで、収益性を高める経営戦略にシフトしている傾向があります。

それを如実に表しているのが、未来型店舗体験への注力です。

マクドナルドでは、従来とは異なる下記のサービスを提供する「未来型店舗」の導入を進めています。

・モバイルオーダー(公式アプリでの注文・支払いにより、列に並ばずに注文できる仕組み)

・テーブルデリバリー(出来立ての商品をお客さんのテーブルまで運ぶ仕組み)

・おもてなしリーダー(顧客のおもてなしやサポートを行うスタッフの導入)

こうした取り組みが上手くいけば、顧客の満足度向上につながり、客単価の向上や来店頻度の増加といった効果が期待できます。

前述したように、簡単に低価格のイメージを払拭するのは難しいです。

とはいえ、コストの削減ではなく顧客に向き合った経営戦略に舵を切ったのは、今後の人口減少や需要減のリスクを考慮すると正しい選択であると言えます。

新規出店やデリバリーの強化によるさらなる市場浸透戦略・リーダー戦略の推進

これまでマクドナルドでは、業界トップのシェアを誇るリーダー企業として、またハンバーガー市場に特化する企業として、リーダー戦略や市場浸透戦略を重点的に進めてきました。

決算資料を確認すると、新しい店舗を続々出店することで、より一層の新規顧客獲得や外食需要の取り込みを強化することが見て取れます。

また、近年新たな取り組みとして自宅等へのデリバリーサービスも積極的に行っています。

自宅や職場でハンバーガーを楽しみたい層をターゲットに、周辺需要の拡大につながっていると考えられます。

マクドナルドの経営戦略まとめ

マクドナルドでは、一昔前と現在・今後で注力する経営戦略に違いがあると考えられます。

・過去力を入れていた経営戦略:コストリーダーシップ戦略(低価格路線)

・現在および今後の経営戦略:市場浸透戦略・リーダー戦略(高付加価値、顧客ニーズを重視した戦略)

一度は過度な低価格路線で失敗したものの、顧客や付加価値を重視した経営戦略に注力するようになった結果、マクドナルドは見事に業績のV字回復を果たしました。
低価格やコスト削減を重視した経営戦略が上手くいっていない企業にとって、マクドナルドの方向転換は業績向上を目指す上でモデルケースとなるでしょう。
ぜひ今回お伝えしたマクドナルドの経営戦略から、ご自身のビジネスに役立つヒントを得ていただければと思います。
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※参考文献

https://www.mcd-holdings.co.jp/ir/individual/business_strength/

https://ircms.irstreet.com/contents/data_file.php?template=1547&brand=74&data=268450&filename=pdf_file1.pdf

https://www.mcdonalds.co.jp/shop/eotf/

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