MM理論とは?資本構成と企業価値やWACCとの関係性を簡単に解説!

ファイナンスの分野において、MM理論は特に難解で理解が困難です。

しかしMM理論を知っておけば、資本構成を工夫することで自社の企業価値を高められる可能性があります。

企業価値を高めれば、M&Aの時により高値で会社を売却できる可能性があります。

そこで今回は、なるべく簡単にMM理論の要点を解説します。

MM理論とは

MM理論とは、1958年にアメリカの経済学者であるモディリアーニ氏とミラー氏が提唱したファイナンスの理論です。

両氏の頭文字をとって「MM理論」と呼ばれています。

MM理論は、負債の利用による資本構成の変化が企業価値にどのような影響を与えるかを研究したモデルです。

MM理論では、法人税等の税金や売買手数料などのコストが一切発生しない「完全資本市場」を仮定したモデルとなっています。

一方で法人税の存在を考慮したモデルも存在し、そちらは「MM理論の修正命題」と呼ばれます。

MM理論とその修正命題における結論は以下のとおりです。

・法人税がない場合:企業価値は資本構成(自己資本と負債の割合)や配当政策によって変化しない

・法人税がある場合:負債価値が高まるほど、節税効果の現在価値分だけ企業価値が上昇する

資金調達と企業価値の関係を明確に示した点で、MM理論はファイナンスの分野を大きく発展させたと評価されています。

MM理論の内容をもとに、その後のファイナンス分野の学問は広がりを見せたと言っても過言ではないでしょう。

MM理論の命題

完全資本市場を前提としたMM理論は、3つの命題によって構成されています。

3つの命題では、資本構成と資本コストや企業価値との関係が示されています。

この章では、MM理論における3つの命題を簡単に解説します。

第一命題:資本構成は企業価値に影響を与えない

MM理論の第一命題は、「資本構成は企業価値に影響を与えない」というものです。

円の大きさで企業価値(株主価値+負債価値)を表す場合、以下のとおり自己資本と負債の割合を変えても円の大きさは変わりません。

つまり「自己資本や負債の割合を気にしても、企業価値は変化しない」というのが第一命題の趣旨です。

また第一命題では、円を大きくする(企業価値を高める)には、事業でより多くのキャッシュフローを稼ぐことが重要ということも意味しています。

第二命題:負債比率が高いほど、株主の要求する収益率は上昇する

MM理論の第二命題では、「総資本に占める負債の割合(負債比率)が高いほど、株主が投資に際して要求する収益率(株主資本コスト)は上昇する」というものです。

こちらは計算式よりも、具体的な例で考えた方が分かりやすいでしょう。

負債の割合を上昇させると、銀行などの金融機関に対する支払利息が増加します。

支払利息の増加は、配当金の源泉となる利益が減少することを意味します。

つまり利息の支払いにより利益が減少する結果、株主は配当金を受け取れなくなったり、受け取れる金額が減少するリスクがあります。

より大きなリスクを背負うことになるため、負債の割合が高まるほど株主はより多くのリターンを求める(≒株主資本コストが高まる)わけです。

リスクの大きい投資であるほど、より大きなリターンを求めるのは容易に想像できるでしょう。

第三命題:資本構成が変わってもWACCは一定

MM理論の第三命題は、「資本構成が変化してもWACC(加重平均資本コスト)は一定である」というものです。

加重平均資本コストとは、調達した資金額に占める借入と株式の調達にかかる費用の割合を意味します。

簡単に言うと、「資金調達した金額のうち、大体どのくらい債権者と株主に対して支払う必要があるか」を表す指標です。

MM理論では、自己資本と負債の割合がどうであっても、WACCの数字は変動しないと仮定しているのです。

MM理論の修正命題

MM理論における3つの命題は、法人税が存在しない前提にたったモデルです。

しかし現実の世界では、当然法人税が存在します。

そこで法人税を考慮したモデルとして、MM理論の修正命題というものが作られました。

この章では、MM理論の修正命題における資本構成と企業価値の関係をご説明します。

修正命題における企業価値の公式

MM理論の修正命題では、法人税が存在する場合の企業価値を以下のとおり表しています。

・借入がある場合の企業価値 = 借入がない場合の企業価値 + 税率 × 負債額

つまりMM理論の修正命題では、借入をしている企業は、借入をしていない企業と比較して「負債額×税率」の金額分だけ企業価値が上昇するとしているのです。

ただし負債比率が高すぎると、資金繰りの悪化による倒産リスクが高まります。

そのため実際のビジネスでは、倒産リスクも考慮して負債の割合を決めることが大切です。

修正命題における企業価値の計算例

たとえば、一切借入をしていないA社の企業価値が1億円であると仮定します。

一方で、A社と営業利益や資産・事業の内容がまったく同じであるものの、5,000万円分だけ負債を利用しているB社が存在しているとします。

税率が30%であると仮定すると、B社の企業価値は以下のとおり計算できます。

  • B社の企業価値 = 1億円 + 0.3 × 5,000万円 = 1億1,500万円

以上のとおり事業内容や利益がまったく同じでも、借入を利用することでB社の企業価値はA社と比べて1,500万円も高いという結果になります。

負債による節税効果

借入によって企業価値が高まる理由は、負債による節税効果を得られるからです。

負債による節税効果とは、支払利息を損金参入することで、法人税を減らせる効果です。

銀行などから借入を行うと、定期的に利息を支払う必要があります。

法人税法において支払った利息(支払利息)は、損金として参入できます。

つまり支払利息を支払うほど、課税所得の減少により支払う法人税を減らす効果が得られるのです。

負債による節税効果で企業価値はなぜ上昇するのか?

負債を利用しなければ、支払利息の支払いが発生しません。

そのため、負債を利用しない方がより多くの利益(税引後)を手元に残せます。

それにもかかわらず、なぜ負債を利用した方が企業価値は上昇するのでしょうか?

結論から言うと、MM理論では企業価値を「株主価値と負債価値の合計」として考えるからです。

株主価値とは、株主が得られるキャッシュフローの現在価値であり、「配当金を期待収益率で割った金額」となります。

そのため、株主価値の源泉は税引後の当期純利益と言えます。

一方で負債価値とは、債権者が得られるキャッシュフローの現在価値であり、「負債利子額を負債利子率で割った金額」となります。

そのため、負債価値の源泉は支払利息と言えます。

つまり、支払利息として支払った金額分も企業価値を構成するのです。

利息の支払いにより当期純利益(≒株主資本の源泉)は減るものの、その分だけ支払利息(≒負債価値の源泉)は増加するため、自己資本のみの場合と比べて企業価値が減ることはありません。

むしろ負債の節税効果が加算されることで、企業価値は向上するわけです。

MM理論のまとめ

MM理論は有用ではあるものの、専門的な知識を要するため、しっかり理解することは困難です。

したがって、実務では結論(「負債の利用により企業価値が上昇すること」など)のみを知っておけば問題ないでしょう。

ただし前述したように、安易に負債の割合を高めると、倒産するリスクも上昇してしまいます。

「企業価値の上昇」と「倒産リスクを高めすぎないこと」の両方を意識して、資本構成を考えましょう。

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