中小企業診断士クラゲの経営学・マーケティングラボ

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マルチブランドとは?〜難しいけど成功すればメリットの大きい戦略〜

マルチブランド

商品やサービスを販売する上で重要となるのがブランド戦略。

顧客に支持されるブランドを確立すれば、価格競争に巻き込まれることなく、長期的に多くの利益を得続けるのが可能になります。

一般的には限りある経営資源を集中投入し、一つのブランドを徹底的に育て上げるのがセオリーと思われがちです。

しかし世の中には、一つの商品カテゴリーに複数のブランドを持つ戦略「マルチブランド戦略」により、大成功を収めている企業も少なからず存在します。

一見すると経営資源が分散する点で、役に立たなそうに思える戦略ですが、実は上手くいけば大きなメリットを得られたりします。

今回の記事では、マルチブランド戦略の意味やメリット・デメリット、そしてマルチブランド戦略により大成功を収めている企業の事例をご紹介しようと思います。

自社のブランド戦略にお悩みの方や、経営学やマーケティング学を勉強している方はぜひ参考にしてみてください!

マルチブランドとはどんな戦略なのか

マルチブランドとは、ある一つの商品・サービスのカテゴリーで、複数のブランドを展開する戦略です。

言い換えると、既存製品と同一の商品カテゴリーに対して、新しいブランドを展開する戦略です。

マルチブランド戦略を採用する際には、ターゲットの好みや特徴に合わせて、一つ一つのブランドを構築することが重要です。

例えば「チョコレート」という商品カテゴリーで、マルチブランド戦略を行うとしましょう。

この場合、健康志向の方向けには甘さ控えめのチョコレート、子供向けには甘さ強めのチョコレートをそれぞれ異なるブランドで展開できます。

個人的な意見ですが、同じターゲットに対して複数のブランドを展開すると、自社の商品同士で市場シェアを奪い合うこととなるのでオススメできません。

異なるターゲットに対して、それぞれのニーズに合わせた商品・サービスを展開して初めて、マルチブランド戦略による恩恵を得られると思います。

なおマルチブランドとは逆に、既存ブランドの名前を新しい製品カテゴリーで使用する戦略は「ブランド拡張」と呼ばれます。

ブランド拡張について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてくれると嬉しいです。

www.bizkurage.com

マルチブランドのメリット

マルチブランドを実践すると、以下3つのメリットが期待できます。

メリット①:より多くの市場シェアを獲得し得る

同じ商品やサービスのカテゴリーでも、購入する人の好みは様々です。

消費者はそれぞれが持つニーズに応じて、購入するブランドを決定しています。

「チョコレート」というカテゴリーがあった場合、全ての人が全く同じタイプの商品を購入する訳ではありません。

例えば甘いチョコレートを販売した場合、甘い物好きな顧客の支持は得られますが、健康志向の人やビターチョコが好きな人からの購入は望めません。

一方で甘いチョコレートだけでなく苦いチョコレートも販売すれば、甘い物好きな顧客に加えて、健康志向やビターチョコが好きな人からの購入を期待できます。

つまりマルチブランドにより、異なるニーズを持つ顧客ごとに商品やサービスを販売すれば、より多くの市場シェアを獲得できる可能性があるのです。 

メリット②:ブランドスイッチを行うお客さんを自社内に留めやすくする

商品やサービスの種類にもよりますが、お客さんの中には毎回購入するブランドを変える(スイッチする)方が少なくありません。

※一般的には、チョコレートなどの「日常的に購入する安価なもの」や「ブランド間の違いが分かりにくいもの」ほど、ブランドスイッチしやすいと言われています。

企業にとっては、毎回お客さんにブランドスイッチされると、安定的に利益を得続けるのが難しくなります。

万が一他の企業が自社よりも圧倒的に優れている商品を販売すれば、自社の市場シェアが大きく低下する恐れもあります。

そのような事態を回避するには、自社内にお客さんを留める必要があり、その上で有効なのが「マルチブランド戦略」です。

同一カテゴリー内に複数の商品やサービスを展開していれば、自社内の他のブランドにスイッチしてもらえます。

自社内のブランド内でスイッチしてもらえれば、結果的には市場シェアを低下させずに済むのです。

メリット③:万が一の際のリスク分散になる  

マルチブランドの実施は、リスク分散の面でもメリットを発揮します。

新規事業を行う際には、あらかじめターゲットを選定し、そのターゲットのニーズに沿ったモノやサービスを開発・提供するのが一般的です。

しかし必ずしも事前の予想通り、ターゲットのニーズに則したサービスや商品を提供できるとは限りません。

消費者のニーズを的確に捉えたサービスや商品を提供するのは極めて困難であり、予想に反して全く売れないケースは少なくありません。

一方で様々なターゲットに複数ブランドの商品を提供すれば、ある意味「数打てば当たる」の理論で、何かしらの商品やサービスが当たる可能性があります。

つまり幅広いターゲットに向けて商品を提供するので、リスク分散になるわけです。

なお経営(会社)全体でのリスク分散を図るのであれば、「多角化戦略」が有効です。

多角化戦略について詳しく知りたい方は、下記の記事を参照してみてください。

business-kurage.hatenablog.com

マルチブランドのデメリット

一見するとメリットの大きいマルチブランド戦略ですが、実はマルチブランドはそう簡単に実施できる戦略ではありません。

というのもマルチブランドの実施に際しては、以下2つのデメリットが付きまとうからです。

デメリット①:経営資源が分散してしまう

複数のブランドを同時に育成するとなると、単一ブランドを展開する場合と比べてどうしても経営資源が分散してしまいます。

ブランドを育成するためには、プロモーションや開発などに多大な時間や費用、労力を要します。

一つのブランドを育成するだけでも多大な経営資源が必要になるにも関わらず、同時に複数のブランドを展開すると、どれも中途半端になってしまう可能性があります。

要するに、全てのブランドを成功させようとするあまり、「二兎を追うもの一兎も得ず」という事態にもなりかねないのです。

よほど豊富に経営資源を保有しているとか、各ブランドの戦略に自信を持っているなどの根拠がない限り、マルチブランドはハイリスクな戦略である点に変わりはありません。

デメリット②:ブランドごとの差別化が難しい

マルチブランドは、「同一の」商品カテゴリー内で複数のブランドを展開する戦略です。

別の商品ならともかく、同じ商品カテゴリーの商品の間で差別化を図るのは簡単ではありません。

水とかトイレットペーパーなど、差別化自体難しい商品カテゴリーも少なくありません。

商品の差別化を図る難しさは、マルチブランド戦略の成功を難しくしている大きな要因だと思います。

マルチブランド戦略を取り入れるのであれば、あらかじめ商品間の差別化をしっかり考えておくのが大事でしょう。

商品やサービスに対して顧客が持つニーズを見極める上では、「ジョブ理論」というフレームワークがとても役立ちます。

新規事業のアイデアを発想する際にも役立つジョブ理論については、以前書いた記事で取り上げています。

もし興味があれば、参照にしてみてください!

business-kurage.hatenablog.com

マルチブランドの成功事例

先ほどお伝えした通り、マルチブランドは難しいブランド戦略です。

しかしながら、中にはマルチブランドにより成功を収めている企業も存在します。

今回はマルチブランドを成功させている事例を3社ご紹介します。

成功事例①:シチズン

日本を代表する時計メーカー「シチズン」は、成長戦略の核としてマルチブランドを据えている企業です。

シチズンはマルチブランド戦略により、中価格帯の「CITIZEN」ブランドのみならず、高価格帯の「ARNOLD&SON」、低価格帯の「INDEPENDENT」などのブランドを複数展開しています。

マルチブランドによりあらゆる価格帯の商品を販売することで、シチズンは時計市場全体での地位を確固たるものとしています。

成功事例②:ソフトバンク

日本屈指の大企業ソフトバンクでは、モバイル通信サービスのカテゴリーでマルチブランド戦略を取り入れています。

具体的には、「SoftBank」「Y! mobile」「LINE MOBILE」の3ブランドを展開しており、各ブランドには以下の特徴があります。

  • SoftBank→大容量のデータを扱える。ヘビーユーザーや商用目的の人が対象
  • Y!mobile→比較的低価格でデータ容量は中くらい。ライトユーザーが対象
  • LINE MOBILE→とても低価格でデータ容量は少ない。学生などがターゲット

このように3つのブランドを展開することで、ビジネスマンから学生まで、幅広い層に自社サービスを利用してもらえているのです。

マルチブランド戦略が成功していることも、未だソフトバンクの快進撃が続いている要因の一つだと考えられます。

マルチブランドに関するまとめ

今回はマルチブランド戦略について、メリットやデメリット、成功事例をご紹介しました。

経営資源が分散しやすい点やブランド間の差別化が困難である点など、マルチブランド戦略を遂行する上では無視できないデメリットがつきまといます。

現実的には難しい戦略ではあるものの、上手くいけば既存顧客の他者ブランドへの流出を防ぎやすくなるなどのメリットを得られます。

マルチブランドを成功させるには、一つ一つのブランド間の差別化を意識し、緻密な戦略を練ることが重要となるでしょう。