働き方改革が進む中、従来のように管理職のみを育成する人事制度が通用しなくなっています。
変化の激しい経営環境を生き抜く上では、高度なスキルや技能を持った人材育成が重要となっています。
そこで近年多くの企業が導入しているのが「複線型人事制度」です。
複線型人事制度を利用すれば、高度なスキルを持つ人材を効率的に育成できます。
また、従業員の希望する働き方を尊重できる制度であるため、モチベーションアップや退職の防止にもつながります。
今回の記事では、そんな複線型人事制度とは何かを分かりやすく解説します。
複線型人事制度とは
複線型人事制度とは、複数のキャリアやコースを社内に設定し、社員に選択させる人事制度です。
一般的には、下記2つのうちいずれかの方法でコースやキャリアが分けられます。
管理職・専門職・専任職に分ける方法
社員の適性に応じて3つのコースに分ける方法です。
各コースの概要は下記のとおりです。
・専門職コース:特定の業務領域に関する専門家として、業務執行を管理する人材
・専任職コース:実務的な知識や技能を活かし、現場での職務遂行を担う人材
総合職・一般職に分ける方法
こちらは、働き方に応じて2つのコースに分ける方法です。
各コースの概要は下記のとおりです。
・一般職コース:昇進や昇格に制限はあるものの、業務の負担が小さく転勤がないコース
複線型人事制度のメリット
複線型人事制度は、会社はもちろん従業員にとってもメリットがある制度です。
この章では、複線型人事制度の導入で得られるメリットを2つご紹介します。
専門的なスキルや技術を高めやすい
複線型人事制度により専門職や専任職を導入した場合、そうしたコースに入った人材は特定分野に関する業務のみを行うことになります。
本業以外の業務を行う必要がないため、専門的なスキルや技術を効率的に高めることができます。
従業員は自身の市場価値を明確に伸ばせる一方で、会社は質の高い人材を効率的に育成できます。
複線型人事制度は、従業員と会社双方にとってメリットをもたらす制度なのです。
従業員はライフプランや個人的な事情に応じて進路を選択できる
複線型人事制度を導入すれば、各従業員のライフプランやキャリアプラン、個人的な事情に応じて、柔軟に進路を選択させることができます。
たとえばエンジニアとしてスペシャリストを目指したい場合は専門職コース、部長以上の役職になって経営に携わりたい場合は管理職コース、といった感じで自由にコースを選択できます。
一方で総合職と一般職にコースを分ければ、親の介護で転勤できないなどの事情を抱える社員にも配慮が可能となります。
そのため、転勤拒否などの理由で退職される事態を防止できます。
また、自分の希望に応じた働き方ができるため、モチベーションの向上にもつながるでしょう。
複線型人事制度のデメリット
一方で、複線型人事制度には2つのデメリットもあります。
メリットのみならずデメリットも把握した上で、実際に複線型人事制度を導入するかどうか決めましょう。
導入に手間やコストがかかる
複線型人事制度を導入するとなると、コースごとに給与体系や評価システム、業務プロセスなど、あらゆる要素を一から決定する必要があります。
今までの制度を抜本的に変えることになるため、導入までに多大な手間とコストがかかってしまいます。
コースごとに評価制度に差が生じる
複線型人事制度では、コースごとに従業員の評価方法を決定します。
そのため、コースごとに評価制度に差が発生してしまいます。
たとえば専門職と管理職では、求められる能力やスキルが大きく異なります。
必要なスキルや能力が異なる中で、社員が公平だと感じる評価制度を策定するのは簡単ではありません。
場合によっては、従業員から不満の声が生じるリスクもあるでしょう。
複線型人事制度のまとめ
複線型人事制度は、高い技能を持った人材を育成したり、従業員のモチベーション向上に役立つ制度です。
しかし一方で、新たに導入するとなると手間やコストがかかる上に、公平な評価制度を作るのは簡単ではありません。
複線型人事制度を導入する場合は、事前に手間やコストを算出し、社内外に悪影響が及ばないかを十分に検討しておきましょう。