新しくビジネスを始める時や経営が行き詰まった時には、経営戦略を策定したり再構築する必要があります。
しかし経営戦略といっても、抽象的すぎてどのように策定すれば良いか分からないという方が多いと思います。
そこで役に立つのが、「市場」と「製品」という2つの軸から経営戦略を考える「アンゾフの成長マトリクス」です。
今回の記事では、アンゾフの成長マトリクスで考える経営戦略の一つ「新製品開発戦略」について、成功させるポイントや成功事例などをわかりやすく解説します。
新製品開発戦略とは?
まず最初に、新製品開発戦略がどのような経営戦略なのか見ていきましょう。
新製品開発戦略の概要
新製品開発戦略とは、すでに進出している市場(既存市場)に新しい製品(新規製品)を投入する経営戦略です。
例えばカレーライス専門店を経営している企業であれば、新しい味のカレーを販売するのが新製品開発戦略です。
新製品開発戦略は、自社の経営戦略を考える上で役に立つ「アンゾフの成長マトリクス」で出てくる戦略の一つです。
アンゾフの成長マトリクスには、新製品開発戦略以外にも下記のような経営戦略があります。
・新市場開拓戦略(既存製品をこれまでとは異なる市場で販売する戦略)
・多角化戦略(新しい市場で新しい製品を販売する戦略)
アンゾフの成長マトリクスを使うことで、「製品」と「市場」という軸から明確な経営戦略を考えやすくなります。
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新製品開発戦略の具体的な方法
新製品開発戦略では、主に下記2つの方法で収益の増加を目指します。
・色や大きさなどが異なる追加機種を開発する
実際の新製品開発のプロセスについては、下記の記事が参考になると思います。
新製品開発戦略を採用する際は、こちらも記事も参考にしてみてください。
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新製品開発戦略を成功させるポイント
新製品開発戦略を成功させるには、下記2つのポイントを満たすことが重要です。
顧客のニーズを理解し、そのニーズに適した商品を開発する
どれほど高性能の商品を開発しても、それが顧客にとって興味がないものであれば収益を得ることができません。
新製品開発戦略で収益を得るには、顧客の持つニーズを理解し、そのニーズを満たす商品やサービスを提供することが必要です。
商品の性能やデザインはもちろん、流通方法や価格、プロモーション方法など、あらゆるマーケティング要素を顧客のニーズに応じて考えるのがポイントです。
新製品を開発するためのコアコンピタンスを強化する
コアコンピタンスとは、「競合他社と比べて圧倒的に優れた能力」とか「持続的な競争優位性をもたらす経営資源」を意味し、ブランド力や経営ノウハウ、高度な技術力などが該当します。
たとえ顧客のニーズを理解しても、そのニーズを満たすだけの商品やサービスを作ることができるだけの技術力やノウハウがなければ、売り上げは得られません。
普段から自社の強みとなる技術力やノウハウの強化に努め、いつでも顧客のニーズに応えられるようにしましょう。
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新製品開発戦略のメリットとデメリット
新製品開発戦略は、どのような企業にも適した万能な経営戦略という訳ではありません。
ここでお伝えする新製品開発戦略のメリットとデメリットを踏まえ、自社に適した経営戦略かどうか判断してみてください。
新製品開発戦略のメリット
新製品開発戦略には、下記2つのメリットがあります。
既存の技術力やノウハウを活かせる
新製品開発戦略では、すでに販売している商品の色やデザイン、機能などを変えた商品を販売します。
そのため、既存の技術力やノウハウを引き続き有効活用した上で、収益の増加を目指せます。
新しい技術力やノウハウを身につける必要がないため、まったく新しいビジネスを始める場合と比べて失敗するリスクが小さいです。
ブランドの延命を図ることが可能
一つのブランドで長期的に収益を得られる点も、新製品開発戦略のメリットです。
例えばAppleの販売しているiPhoneは、色や機能などを変えることで数年にわたって継続的にヒットしています。
根強いブランド力やブランドのファン(固定客)を引き継げるため、安定的な収益の獲得も期待できるのです。
新製品開発戦略のデメリット
一方で新製品開発戦略では、下記2つのデメリットがあるので注意です。
製品開発に多大なコストや手間がかかる
新製品を開発するためには、市場調査やデザイン、研究開発など、あらゆる部分で多額のコストがかかります。
また、顧客のニーズを満たす商品やサービスを開発するには、費用のみならず多大な手間や時間もかかります。
市場自体が衰退している場合には不向き
そもそも新製品開発戦略は、既存市場の顧客に対して商品やサービスを販売する経営戦略です。
そのため、そもそも市場自体が衰退し、顧客の需要や数が減少している場合には十分な効果を得られない可能性があります。
その市場の商品やサービス自体に対する需要が減少している以上、ちょっとデザインや機能を変えただけでは顧客のニーズを満たすことは困難です。
市場自体が衰退傾向にあるならば、新市場開拓戦略や多角化戦略に切り替えることも視野に入れなくてはいけません。
新製品開発戦略に成功しているコカ・コーラの事例
最後に、新製品開発戦略に成功している企業の事例としてコカ・コーラを取り上げます。
コカ・コーラといえば、コーラをはじめとして、コーヒーや爽健美茶など、数多くの飲料ブランドを展開し、大成功を収めています。
そんなコカ・コーラが大成功している背景には、圧倒的なブランド力や長年培ってきたノウハウを発揮した新製品開発戦略にあります。
例えばコーラ一つに絞っても、通常のコーラに加えて、健康志向の「コカ・コーラ ゼロ、ライム味の「コカ・コーラ クリアライム」など、味や特徴の異なる数々の新商品を販売してきました。
こうした新製品を数々開発する背景には、「栄養成分や内容量も含めて、製品ラインナップ全体のバランスを徹底的に考え抜く」という同社の考え方が如実に表れています。
新製品開発戦略を導入したい方は、コカ・コーラの成功事例を参考にすると良いでしょう。
新製品開発戦略のまとめ
ブランド力や技術力などの強みを持っている場合、新製品開発戦略はとても強力な経営戦略となります。
しかし一方で、市場自体が衰退していたり、新製品を開発できるだけの資金力がない場合には、実行して成果を得るのは難しくなります。
効果を得られるケースが限られているため、自社の事業に適した経営戦略かどうかを見極めた上で、新製品開発戦略を取り入れましょう。