突然ですが会社経営を成功させるには、何が必要だと思いますか?
人それぞれ思い浮かべる答えは違うと思います。たとえば優秀な人材と答える方もいれば、資金力や事業内容と答える方もいるでしょう。
自分的にはあらゆるものが成功させる上では大切で、特定の答えがあるとは思っていません。
しかし確実に言えるのは、経営資源が乏しい中小企業やベンチャー企業にとっては、「どんな市場でどんな戦略をとるのか」は成功を左右する要因だということです。
経営資源を豊富にもつ大手企業がひしめく中で、同じような戦略で経営資源に乏しい企業が立ち向かっても、ほとんど勝てる可能性はないでしょう。
経営資源が乏しいのであれば、そのような「強者」とは戦わずして勝つ方法を模索する必要があるでしょう。
強者と戦わずして勝つには、ニッチャー戦略が効果的だと言われています。
そこで今回の記事では、ニッチャーの意味や、中小企業にニッチャー戦略をおすすめする理由などについてお伝えしようと思います。
ニッチャーとは?ニッチャーの意味や事例を解説
ニッチャーとは、採算性の悪さや市場規模の小ささ、そもそもその分野に気づいていないなどの理由で、大手のリーダー企業が参入していないニッチな市場で事業を行う企業を意味します。
またニッチャー企業がとる戦略を、文字通り「ニッチャー戦略」と呼びます。
例えば自動車市場で、軽自動車の販売事業に特化している「スズキ」がニッチャー企業の成功事例として知られています。
また、時間がないサラリーマン向けの理容室「QBカット」を営む「キュービーネットホールディングス」もニッチャー企業と言えるでしょう。
なおニッチャーは、経営学者コトラーが提唱した企業の競争別地位の一つです。
他には、フォロワーやリーダー、チャレンジャーなどが存在します。
ニッチャーとは反対に、果敢にリーダー企業に立ち向かうチャレンジャー戦略も面白いので、よかったら参考にしてみてください。
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なぜ中小企業にニッチャー戦略をオススメするのか(ニッチャーのメリット)
ニッチャー戦略は、経営資源に乏しい中小企業にとてもオススメの経営戦略です。
なぜオススメするのかというと、ニッチャーは経営資源の量で圧倒的に勝っているリーダー企業と戦わずして、大きな収益(利益)を得られる可能性があるからです。
経営資源をあまり持っていない多くの中小企業にとって、リーダー企業(大手企業)の主戦場で真っ正面から戦うのは自殺行為だと思います。
リーダー企業の大半は、大半の中小企業が束になっても敵わないくらいの多くの資金や人員を持っています。
自由に使える資金や人員をより多く持っている方が、事業を成長させる速度が速くなる上に、できることがより多くなります。
そんなリーダー企業に真っ正面から同じ土俵で戦っても、人員や資金力の差で完膚なきまでにやられる可能性が高いでしょう。
一方でニッチャーの場合、リーダー企業がいない状況で事業を営むことができます。
圧倒的な差を持つ相手と戦わなくて良いので、市場で勝ち残れる可能性が高まります。
ましてやニッチ市場には競合企業が少ないので、価格競争に巻き込まれるリスクが低いです。
つまり自社の望んだ価格で商品やサービスを提供しやすいので、より大きな利益を手元に残せるメリットも期待できるのです。
ニッチャー戦略を取る上で注意すべき点(ニッチャー戦略のデメリット)
中小企業にとってメリットの大きい戦略ですが、ニッチャー戦略には注意すべき点(デメリット)もあります。
まず最も大きなデメリットは、そもそも市場規模が小さすぎて十分な収益を得られないリスクがある点です。
リーダー企業が参入しない(独壇場を確立できる)市場にこだわるあまり、市場規模が小さすぎる(顧客の人数が少なすぎる)ところで事業を行うリスクがあります。
市場規模が小さすぎると、そのニッチ市場を独占できたとしても、わずかな収益しかえられません。
ニッチャー戦略をとる場合は、最低限満足できるほどの収益が見込めるほどの市場規模であるかどうかを事前に確認しましょう。
なお顧客からニーズのある市場を見つける上では、ジョブ理論という考え方が役立つと思います。
ジョブ理論を応用すれば、消費者の真のニーズをとらえた上で新規事業のアイデアを見いだすことができます。
以前ジョブ理論について分かりやすく要約した記事を書いたので、読んでみてくれると嬉しいです!
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また市場が拡大した結果、ニッチ市場ではなくなり、大手企業(リーダー企業)が参入してくる可能性もあります。
仮に大手企業が参入してくると、ニッチャー戦略の優位性がなくなり、それまで通り収益を得られなくなる恐れがあります。
この点はニッチャーが最も注意すべき点なので、後ほど対策方法を解説します。
ニッチャーがとるべき戦略
ニッチャー企業が事業を行う上では、以下の戦略をとるのが定石だと言われています。
集中化戦略を徹底する
集中化戦略とは、自社の能力に適する一部の市場に特化して、差別化やコスト面で優位に立とうとする経営戦略を意味します。
つまりニッチ市場に狙いを定めて、その市場内で徹底的な差別化や低コスト化を図ることがニッチャーにとって最善の手なのです。
ニッチ市場の中でリーダー企業の戦略をとる
限られたニッチ市場の中で、リーダー企業のように行動するのもニッチャーにとって重要な戦略です。
つまりニッチ市場の中で、「非価格対応」、「同質化政策」、「周辺需要拡大政策」などを行うのがニッチャーには必要です。
それぞれの戦略の意味は以下のようになります。
- 非価格対応
価格競争を回避するために、価格以外の面で顧客に自社の良さを伝える
- 同質化政策
自社にとって脅威となるチャレンジャー企業の差別化戦略を真似る事で、差別化による競争優位性を無効にさせる
- 周辺需要拡大政策
消費者のさらなる需要を喚起し、市場の大きさを拡大する
ニッチャー戦略を成功させるポイント
最後に、ニッチャー戦略を成功させるポイントを考えてみましょう。
ニッチャー企業がニッチ市場で成功するには、下記2つの要素が必要だと考えられます。
- ニッチ市場の中でトップを目指す
- 大手企業(リーダー企業)が参入した際に向けて万全の対策をとる
上記の要素を達成する上では、下記2つのポイントを意識するのが良いと思います。
高い技術力や独自のブランド力を築き上げる
ニッチ市場で十分な収益を得るには、小さい市場の中でより多くの顧客から支持を集める(市場シェアを獲得する)必要があります。
ニッチ市場でより多くの顧客から支持を得るには、高度で独自の技術力やブランド力を築き上げるのが一番ではないでしょうか。
高度な技術力や独自のブランド力があれば、比較的競争が緩いため、経営資源の少なさというハンデがあっても、十分トップを目指せる可能性があります。
また大手のリーダー企業が万が一参入してきても、ブランド力などを理由にその時点で自社が顧客から絶大な支持を得られていれば、引き続き市場内での覇権を握れる可能性があります。
一方でコスト優位による集中化戦略も目指せるものの、経営資源の量で勝る大手企業であれば、ニッチャーのコスト優位は比較的簡単に打ち崩しやすいと思います。
以上の理由から長期的な目線で見ると、コスト優位よりも技術やブランドによる差別化集中戦略をとった方が、ニッチャーにとっては良いのではと思います。
なおVRIO分析を用いると、自社の持つブランドや技術力がどの程度の価値を持つのかを分析できます。
下記の記事で考察しているので、興味のある方は参照してみてください!
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複数のニッチ事業を行う
いくらブランド力や技術力で優位に立てたとしても、リーダー企業が参入した時点で、大きく市場シェアを失うリスクは0にできません。
万が一のことを考えると、多角化により複数のニッチ事業を行うのが、リスク分散につながって良いと思います。
複数の事業を行っていれば、ある一つのニッチ事業が大手の参入によりダメになっても、全体としての収益力は維持できます。
一つのニッチ事業がある程度上手くいったら、他のニッチ事業にチャレンジするのが自分的にはおすすめです。
多角化のメリットについては、過去の記事でも考察しているのでよかったらご覧になってみてください。
消費者のニーズが多様化していることや、一つの事業やサービスが生き残れる期間が短くなっている現状から、経営の多角化を図る企業が増えています。 中には、「企業はとにかく多角化すべき」という意見や考え方を発信している方もいます。 変化の激[…]
ニッチャーに関するまとめ
今回の記事ではニッチャーの意味や戦略、ニッチャーが成功するためのポイントを考えてみました。
「強者と戦わずして勝つ」という考え方に基づいたニッチャー戦略は、「技術力やノウハウはあるけどお金や人員が足りていない」という中小企業やベンチャー企業におすすめの戦略です。
とはいえ、ほとんど企業経営に関するノウハウや経験がない場合、たとえニッチャー戦略を実践しても失敗する可能性が高いです。
時間や費用を無駄にしないためにも、まずは起業のノウハウを徹底的にスクールで学習するのがオススメです。
起業スクールには色々ありますが、新規事業の立ち上げを経験した中小企業診断士としては、”Cash Engine”という起業スクールがオススメです。
実際にニッチャーとして事業を成功させている起業家から実践形式で講義を受けられるため、経営者として必要な知識を網羅的に習得できるでしょう。
とはいえ実際にスクールに通うと高いので、まずは無料でやっている体験授業を受けてみると良さそうです。