計画的陳腐化とは?モデルチェンジが行われる理由を解説

スマートフォンやパソコン、車、ファッションなどに関する商品は、頻繁にモデルチェンジやバージョンアップが行われています。

中には旧モデルの発売から1年前後で新モデルを発売するケースもあり、なぜそんな短期間で新商品を販売するのか疑問に思った経験がある方もいるでしょう。

実は短期間で新製品を販売する背景には、企業の行う「計画的陳腐化」という施策があります。

計画的陳腐化は、上手に活用すれば業績を大きく伸ばせる戦略となります。

今回は、そんな計画的陳腐化の意味や具体的なやり方、事例をわかりやすく解説します。

計画的陳腐化とは

計画的陳腐化とは、製品のモデルチェンジを頻繁に実施し、消費者に対して常に新しい製品を提供し続けるマーケティング手法です。

基本的に市場に出回る商品は、市場に売り出されてから(導入期)、徐々に購入する顧客を増やしていき(成長期・成熟期)、最後には徐々に需要が減少(衰退期)していって市場から姿を消します。

このような市場に出てから衰退するまでのプロセスは、「製品ライフサイクル」と呼ばれます。

計画的陳腐化は、顧客の需要が減少する衰退期に突入する前にモデルチェンジを行うことで、新たな顧客の需要を喚起するマーケティング施策なのです。

計画的陳腐化の狙い(メリット)

計画的陳腐化を行えば、買い替え需要により一定期間でより多くの売り上げを得られる可能性があります。

たとえば車の場合、手入れしながら乗っていれば10年前後は持つと言われています。

自動車会社側からすると、10年間は買い替えによる売り上げを得られない訳です。

そこで計画的陳腐化により5年に一度新しいモデルを販売すれば、これまで乗っていた車に「時代遅れ」とか「性能が低い」という印象を植え付けることができます。

その結果、本来は10年に一度しか購入してもらえない車を、5年に一度購入してもらえるようになり、結果的に売り上げを伸ばせる可能性があるのです。

計画的陳腐化の具体的な手法

一口に計画的陳腐化と言っても、その手法は主に3種類に分けられます。

1つ目は、「心理的陳腐化」や「デザインの陳腐化」と呼ばれる手法です。具体的には、特に性能面では変わりないものの、デザインを一新することで計画的陳腐化を図ります。

見た目を大きく変えることで旧モデルを「時代遅れである」と認識させ、新しい製品を購入させるのがポイントです。

2つ目の手法は、「機能面での陳腐化」です。具体的には、旧製品に新しい性能を付け加えた製品を販売します。

旧製品に時代遅れというイメージを植え付けるのが可能なのはもちろん、新しい機能を使いたいとユーザーに思わせる効果も期待できます。

3つ目の手法は「材料面での陳腐化」です。具体的には、わざと製品寿命が短くなるように設計したり、質の低い材料を使うことで、新モデルに替えざるを得ない状況を作り出します。

半ば強引的に買い替え需要を喚起できるものの、わざと性能を落とす手法であるため、多方面から批判を浴びるリスクがあります。

実際に材料面での陳腐化を行っていたことが発覚して、iPhoneなどを販売するアップルは集団訴訟を起こされました。

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計画的陳腐化の事例

計画的陳腐化は、実際に多くの企業で活用されています。

今回は、数ある中から有名でわかりやすい事例を2つご紹介します。

事例①:アップル製品

iPhoneやMacBookなどのアップル製品は、計画的陳腐化の最たる例です。

iPhoneやMacBookは、1〜2年という短いスパンで定期的に新モデルが販売されます。

本来スマートフォンやパソコンは、手入れをしっかり行えば3〜5年は持ちます。

ですがアップルでは、毎回新しい機能を付けたりデザインを一新することで、1〜2年という短いスパンでの計画的陳腐化を大成功させています。

事実、毎年のようにiPhoneの新モデルが発売されるたびに、日本ではアップルストアの前に行列ができています。

「アップル」の持つブランド力も相まって、同社の計画的陳腐化は顧客の購買意欲を強力に喚起できているのでしょう。

事例②:自動車

古典的な例で言うと、普段多くの人が乗っている自動車も計画的陳腐化の一例です。

たとえば「トヨタ」が販売しているカローラと言う車種では、定期的に新モデルが販売されています。

定期的にデザインや性能を一新した新モデルを販売することで、根強いファンの囲い込みにもつながっていると考えられます。

また海外を見渡すと、アメリカの代表的な自動車メーカー「GM」でも計画的陳腐化を重点的に行っていました。

本来は買い替えまでに時間がかかる点や一回あたりの購入金額が大きいため、計画的陳腐化により得られる恩恵は非常に大きいものとなります。

計画的陳腐化はマーケティングで役立つの?

ではマーケティングの活動において、計画的陳腐化は本当に役に立つのでしょうか?

この章では、現代の消費者の考え方や経営環境を基に、計画的陳腐化の有用性を検証します。

近年は環境への配慮から批判が多い

新しい製品を販売するには、その都度試作品や完成品の製造に原材料や電力などのエネルギーがかかります。

そのため近年は、環境にとって良くないという批判も多く寄せられるようになっています。

度を超えた計画的陳腐化は訴訟に発展するリスクもある

加えて、「わざと品質の悪い材料を使う」などの度を超えた計画的陳腐化は、訴訟に発展するリスクもあります。

というのも、決して価格が安くない商品を半強制的に買わせることにつながるため、消費者からの反発を招きやすいためです。

事実、アップルがiPhoneの旧モデルの動作速度をわざと遅くしていたことを認めた際には、アメリカ国内で集団訴訟に発展しました。

売り上げを増やそうと思って行った施策により、企業に対する消費者のイメージを下げかねない点には十分な注意が必要です。

こうしたリスクを避けるには、消費者の反感を買うレベルでの計画的陳腐化は控えるべきと言えます。

上手く使えば大きく業績を伸ばせる

批判やリスクの多い計画的陳腐化ですが、うまく活用すれば消費者の需要を喚起し、業績を大幅に伸ばせる可能性もあります。

たとえば計画的陳腐化に伴い、常に流行の最先端をいくようなデザインや性能を追加すれば、反感を買うことなく短期間での買い替えを喚起できるでしょう。

重要なのは、企業本位ではなく「顧客の利益にもなる計画的陳腐化」を行うことです。

企業の利益と顧客の利益、それぞれを実現して初めて、計画的陳腐化による恩恵を長期的に得られるのです。

計画的陳腐化のまとめ

計画的陳腐化には、批判の声や時代遅れの手法という声も少なくありません。

しかしいまだ多くの企業が活用しているように、計画的陳腐化はメリットの大きいマーケティング手法です。

この記事を読んでいる皆さんも、ぜひご自身の携わるビジネスで計画的陳腐化を取り入れてはいかがでしょうか。

計画的陳腐化をよりくわしく学びたい方は、「アップルのリンゴはなぜかじりかけなのか?」という本を読むのがオススメです。

計画的陳腐化はもちろん、アップルが消費者の心を掴み続ける理由や、その背景にある戦略がわかりやすく紹介されています。

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