多くの起業家は、株式市場への上場を目指して会社経営を行います。
上場すれば経営陣は多くの利益を得られます。また、社会的な信用力が高くなることで、資金調達を行いやすくなる点もメリットです。
上記のように上場には多くのメリットがあるため、名の知れた大企業は大半の場合上場しています。
しかし一方で、DMMやサントリーなど一部の大手企業は、上場できるにも関わらず敢えて非上場のままでいます。
上場によるメリットは大きいにも関わらず、なぜ一部の大手企業は非上場の道を選んでいるのでしょうか?
結論から述べると、非上場の会社は上場企業では得られない独自のメリットを得られるためです。
非上場の会社が得られるメリットは数多くありますが、今回は特に重要な下記5つのメリットを解説します。
- 自由かつスムーズに経営できる
- 長期的な目線で経営を行える
- 敵対的買収のリスクがない
- 利益の全てを享受できる
- 上場に費やすコストや手間を削減できる
上記に挙げたメリットがあるので、非上場のまま経営を続けるのも一つの選択肢としてアリだと思います。
今現在会社経営をしている方はもちろん、今後起業したいと考えている方はぜひ参考にしてくれると嬉しいです!
メリット①:自由かつスムーズに経営を行える
何と言っても自由かつスムーズに経営を行える点が、非上場企業の持つ最たるメリットです。
そもそも株式会社では、持ち株比率(厳密には議決権付き株式数)に応じて、ある株主が行使できる権利が変わってきます。
そのため外部の株主が大部分の株式を保有する上場企業の場合は、株主たちの意向によって経営を進めることになります。
株主を無視した経営を行うと、株主の権限により経営陣の立場から追いやられる恐れがあります。
一方で非上場企業では、基本的に自社の経営陣の間で株式を保有することになります。
よって非上場の場合は、外部の株主を気にせず自由に会社を経営していけます。
また上場している会社とは違い、非上場の会社では重要な意思決定(M&Aや役員の選任など)に際して株主に同意を求める必要がありません。
スムーズに経営上の意思決定を行える点も、非上場ならではのメリットと言えるでしょう。
メリット②:長期的な目線で経営を実行できる
非上場を敢えて選ぶ二つ目のメリットは、長期的な目線で経営を実行できる点です。
会社経営を続けるには、目先の利益ばかりではなく、長期的な目線で利益を追求する必要があります。最初のうちは、赤字覚悟で新規事業や研究開発への投資などを行わなくてはいけません。
しかし企業に投資する大部分の株主は、利益を得る目的で企業の株式を保有しています。
そのため、外部の株主が多数を占める上場企業では、チャレンジングな新規事業や研究開発の実施を認められない恐れがあります。
一方で非上場企業では、前述した通り外部の株主から同意を得る必要がないので、長期的な目線で新規事業や投資に取り組めます。
長期的な目線で企業経営を考えると、非上場企業の形態を選ぶのはメリットが大きいと言えます。
メリット③:敵対的買収のリスクがない
敵対的買収のリスクをほぼゼロにできる点も、非上場を選択する魅力的なメリットの一つです。
敵対的買収(M&A)とは、経営陣の同意を得ないままに会社を買収する行為です。
上場企業の場合、市場を通じて原則誰でも好きなだけ株式を買うことが可能です。つまり上場企業は、常に敵対的買収のリスクに晒されているわけです。
敵対的買収が成功すると、経営陣の職から強制的に引きずり下ろされることになり、これまでの頑張りが水の泡となります。
ゴールデンパラシュートやポイズンピルなど、敵対的買収への対策方法は数多くあります。ですが100%敵対的買収を阻止できるとは限りません。
しかし敵対的なM&Aを100 %阻止する方法があります。それが「非上場企業で経営陣が全株式を取得しておく方法」です。
非上場企業に関しては、市場を通じた株式買収が不可能です。ですので経営陣が全株式を保有していれば、敵対的買収を100%阻止できます。
敵対的なM&Aのリスクに怯えずに会社を経営できる点は、業績が良い非上場企業にとっては非常に魅力的なメリットです。
メリット④:利益の全てを享受できる
利益を周囲の人間で独占できる点も、非上場企業に特有のメリットです。
株式が分散している上場企業の場合、外部の株主に対して配当金を利益の中から捻出して支払う必要があります。
一方で非上場企業では、外部の第三者に配当金を支払う必要がないため、株式を保有する経営陣や従業員の間で利益を分配できます。
経営陣や普段頑張っている従業員の間で全ての利益を共有できる点は、非上場ならではのメリットと言えます。
メリット⑤:上場に費やすコストや手間を省ける
最後にご紹介する非上場のメリットは、上場に費やすコストや手間を省ける点です。
多くの起業家が目指す上場ですが、実は上場には多額のコストや手間がかかります。
例えばマザーズへの上場では、上場審査に合計で5,000万円ほどの費用が必要です。加えて上場を維持するためにも、年間で5,000万円から1億円ほどの費用が発生します。
費用のみならず、情報開示のための資料作成などの手続きに手間も要します。
上記のように、上場を果たしてそれを維持するには、莫大な資金や手間が発生するという手痛いデメリットがあります。
非上場の道を選べば、上記の費用や手間は発生しません。
上場やその維持に必要な費用や労力を他の部分に割ける点は、非上場企業にとってとても大きなメリットとなるでしょう。
非上場にはデメリットがあることも忘れてはいけない
上記でお伝えしたように、非上場を選ぶと魅力的なメリットを多く得られます。
ですが一方で、非上場企業には下記のデメリットもあるので注意が必要です。
- 上場企業というステータスや社会的信用力を使えない
- 資金調達がしにくい
- 独りよがりで視野が狭い経営になりやすい
要約すると、自由に経営を行える代わりに事業を拡大させる上では不利となる点が非上場のデメリットです。
上記のデメリットがあるために、非上場ではなく上場の道を選ぶ大手企業の方が多いのは事実です。
会社を経営する際には、非上場と上場化のメリットとデメリットそれぞれを十分比較検討し、自社にとってどちらの選択肢が最善であるかを慎重に検討する必要があります。
非上場企業が得られるメリットのまとめ
今回の記事では、非上場企業が得られる5つのメリットをご紹介しました。
確かに非上場の企業には、社会的なステータスが低かったり、資金調達を行いにくいといったデメリットは存在します。
しかし一方で、自由に長期的な目線で企業を経営できるなど、非上場の道にはデメリットと同じくらいメリットもあります。
経営者の考えや自社の状況を踏まえて、非上場のままでいるのか、それとも上場するのかを選ぶのが大事です。
今後起業する予定の方は、闇雲に上場を目指すのではなく、非上場に特有のメリットにも目を向けておくのがオススメです。