資金調達の手法と聞くと、おおくの方は銀行などからの融資やベンチャーキャピタルからの出資を思い浮かべるでしょう。
しかし資金調達の手法には、皆さんが知らないようなマイナーなものも少なくありません。
今回は、そんなマイナーな資金調達手法の一つ「少人数私募債」にスポットを当てようと思います。
「少人数私募債」のメリットとデメリットをそれぞれくわしく解説するので、資金調達に興味のある方はぜひ参考にしてください!
少人数私募債とは?どんな資金調達の手法なのか
少人数私募債は、50人未満の投資家に対して社債を発行する形で行う資金調達です。
通常の社債と同様に、企業は投資家側に対して定期的に利子を支払う義務と、元本を返済(償還)する義務を負います。
くわしくは後述しますが、割と手軽に遂行できる点から、ベンチャー企業や小規模な中小企業でも活用しやすい資金調達の手法です。
少人数私募債のメリット
出資や融資と比べた場合、少人数私募債には下記5つのメリットがあります。
無担保・無保証人で資金調達できる
一般的な融資で必要となる担保や保証人を設定せずに資金調達できる点は、少人数私募債における最大のメリットです。
まず担保を設定せずに済むため、仮に返済が不能となっても所有する不動産などを売却されずに済みます。
また保証人の設定も不要なので、万が一会社が倒産してしまっても、経営者個人は返済義務を負わずに済みます。
つまり返せなくなった場合のリスクがほぼないため、経営者は資金返済ができなくなる状況を心配せずに資金調達できるわけです。
フレキシブルに利率や返済期間を設定可能
少人数私募債の有する二つ目のメリットは、割とフレキシブルに利率や返済期間を設定できる点です。
金融機関からのプロパー融資や制度融資の場合、基本的には資金の貸し手が利率や返済期間を設定します。
一方で少人数私募債では、会社側が自身の都合や事業計画などに応じて、自由に返済期間や利率を設定できます。
ただしあまりにも会社にとって有利な条件で設定すると、誰も社債にお金を出してくれません。
極端な話ですが、利率0.001%で返済期間が50年の社債なんて、たとえ仲が良い相手から頼まれても出資したくないですよね。
ある程度自由に決められるメリットこそあるものの、投資家側が得られるメリット(リターン)も十分考慮しなくてはいけません。
毎月の返済による資金繰り悪化の心配がない
融資とは違い、毎月元本の返済や利息の支払いを行う必要がない点も少人数私募債のメリットです。
毎月元本の返済や利息が発生する融資の場合、業績が悪化した時期と重なってしまうとたちまち資金繰りが悪化します。
そうした資金繰りの悪化リスクがない点は、とくに業績が不安定な会社や設立直後の法人にとっては魅力的なメリットでしょう。
簡単に資金調達を実行できる
少人数私募債の持つ4つ目のメリットは、割とカンタンに資金調達を行える点です。
少人数私募債の発行手続きは、募集要項の作成と取締役会(または株主総会)による決議のみで完了します。
公的機関への届け出などの面倒な手続きが不要であるため、手軽に資金を集めることができるでしょう。
議決権(経営権)を渡さずに資金調達できる
株式への出資による資金調達と比べた場合、議決権(経営権)を渡さずに資金調達できる点も少人数私募債の大きなメリットです。
ベンチャーキャピタルなどからの出資を受けた場合、資金の返済義務がない点はメリットとなるものの、原則的に議決権の一部を握られることになります。
議決権の一部を握られることで、重要な意思決定(事業売却の遂行など)をVCの賛成なしには行えなくなる恐れがあります。
一方で少人数私募債はあくまで「社債による資金調達」であるため、融資と同様に議決権を渡すことなく資金調達できます。
経営権を保持したまま資金調達できる点は、オーナー経営者やスタートアップの経営者にとっては大きなメリットとなります。
「投資」と「融資」はよく混同されがちですが、実は両者は全く異なる資金調達の手段です。新規事業を立ち上げたり起業した方は、事業に必要な資金を調達する必要があります。その際基本的には「投資」か「融資」のいずれかを選ぶことになるのですが、[…]
少人数私募債のデメリット
少人数私募債にはおおくのメリットがあるものの、万能な資金調達の手法というわけではありません。
少人数私募債の利用に際しては、下記2つのデメリットを許容できるか吟味することが重要になります。
返済の猶予が原則不可能
少人数私募債を吟味する上で、一番注意してほしいデメリットが「返済の猶予が原則不可能である点」です。
融資の場合は、業績悪化などを理由に元本の返済が困難であれば、返済を猶予してもらえます。
一方で少人数私募債を用いると、よほどのことがない限り、あらかじめ定めた返済日(償還期日)に元本を返さなくてはいけません。
業績が今後どうなるか分からないことを考えると、返済猶予が原則できない点は致命的なリスクとなります。
私募債にお金を出してくれる人を見つけないと資金調達できない
根本的な部分ですが、少人数私募債にお金を出してくれる人を自力で見つける必要がある点は、見方によってはデメリットとなるでしょう。
金融機関に出向けば利用できる融資とは異なり、少人数私募債により資金調達する場合は、基本的に経営者自身で私募債を買ってくれる人を見つける必要があります。
優良な企業だったり経営者の周りに潤沢な資金を所有する人が多い場合は、少人数私募債により資金調達することは難しくないでしょう。
しかしそうでない限り、少人数私募債にお金を出す人を見つけるのは困難です。
時間をかけて取引先や親戚を説得すれば、なんとか少人数私募債の発行で必要な資金を集められるかもしれません。
ただし、即座には資金調達できないため、今すぐ事業に資金が必要なケースには少人数私募債は不向きです。
今すぐ資金調達する必要がある場合には、最短即日で資金調達できるファクタリングがおすすめです。
ファクタリングは会社のもつ売上債権を売却する形で資金調達する手法なので、ビジネスローンなどと比べるとリスクが小さいです。
見知らぬ調達手段なので不安に思う方は、下記のような一般社団法人が行なっているファクタリングのサービスを用いると安心です。
少人数私募債のメリット・デメリットまとめ
今回の記事では、資金調達の手段である「少人数私募債」のメリットとデメリットをお伝えしました。
少人数私募債には「無担保・無保証人」や「フレキシブルな設計が可能」などのメリットがあるため、中小企業でも用いやすい制度となっています。
しかし一方で、返済猶予が原則できない点やご自身で出資者を見つける必要がある点など、デメリットも少なくありません。
少人数私募債の利用を考える際は、メリットとデメリット、他の資金調達手法を比べることが重要となります。