新しい商品やサービスを売り出す際、価格をいくらにすべきかは非常に悩ましい部分です。
高くすれば利益率は良くなるものの、買ってもらえる確率が下がります。一方で安くしすぎると、利益率やブランド力の低下につながります。
商品の価格設定方法は様々ありますが、今回の記事では「心理的価格設定」について取り上げます。
心理的価格設定とは、消費者の心理的な要因に基づいて価格を決定する方法です。
心理的価格設定では顧客の心理に基づいて価格を設定するので、ハマれば大きく利益や売り上げを伸ばせる可能性があります。
今回は特に有名な心理的価格設定の方法を4つご紹介します。
商品やサービスの価格設定にお悩みの方はぜひ参考にしてください!
端数価格
まず最初に、心理的価格設定の手法の中でも特に有名な「端数価格」をご紹介します。
端数価格の意味と例
端数価格とは、300円や5,000円といった区切りの良い価格ではなく、298円や4,999円といった中途半端な価格を設定する心理的価格設定の方法です。
スーパーや通販などあらゆる場面で活用されており、数ある心理的価格設定の方法の中でも特に目にする手法だと言えます。
端数価格は価格差以上に割安感を消費者に与えるため、売上高が増える効果を期待できます。
端数価格の実証研究
端数価格の効果を実証するために、フランスの心理学者ニコラス・ゲガンは以下の実験を行いました。
- 実験内容
学生を二つのグループに分けて、片方には2フランのパンケーキ、もう片方には1.99フランのパンケーキを近所の住民に売りに行かせた。
- 実験結果
2フランのパンケーキは約45%の家庭に売れた一方で、1.99フランのパンケーキは約60%の家庭に売れた。
価格差はわずか0.01フラン(日本円では1円)と、実質的にはほとんど値段は同じです。にも関わらず1.99フランにしただけで、約15%も売り上げが増加したのです。
このように商品に中途半端な価格を設定すると、売り上げを大きく増やせる可能性があります。
ただしこの心理的価格設定の手法は、スーパーやコンビニなどで多用されています。普段から見慣れているため、割安感をアピールできない場合もあるので注意が必要です。
参考:
「ジャパネットたかた」から学んだ事:「端数効果」 | Dr.Hisacchi:誰もがわかりやすく健康・予防・医療を理解する事ができるブログ
名声価格(威光価格)
次に、高級品への価格設定に有効な「名声価格(威光価格)」の説明を行います。
名声価格(威光価格)の意味と例
名声価格(威光価格)とは、高級品の持つ高いステータスや品質を訴求するために、わざと高い価格を設定する心理的価格設定の方法です。
名声価格は、高級ブランド品や宝石、美術品といった高級で希少な商品に用いられるのが一般的です。
名声価格には、高級品としてのブランド力を高める効果や、高い価格を付すことで顧客に「良い商品だろう」と思わせる効果があります。
わざと高い価格をつける理由
ブランド品や宝飾品にわざと高い価格を設定する理由は、価格自体が商品の良し悪しを左右する一因となるためです。
多くの消費者は、程度の差はあれど価格により商品の品質を判断する傾向があります。
そのため、高級ブランドの商品に対して安い価格を付けてしまうと、「品質が他のブランドよりも低いのでは?」と思われて、ブランド力が下がる恐れがあります。
ブランド力を維持するために、高級品には高い価格を設定する必要があるのです。
また高い価格を設定することで、顧客に品質が優れていると判断してもらいやすくなります。
言い換えると、品質に自信があったりブランド力の高い商品については、価格を下げるのは好ましくありません。
慣習価格
次に、心理的価格設定を行う上で重要となる「慣習価格」についてお伝えします。
慣習価格の意味と例
慣習価格とは、消費者の間で広く浸透している価格帯を意味します。
例えばペットボトル飲料の場合は、100円〜150円くらいが慣習価格となります。
長期間同じ価格が慣習的に用いられることで、消費者の間で慣習価格が定着していきます。
慣習価格が存在する商品ではどのように価格を設定すべきか?
慣習価格が存在する、つまり消費者の間で一定の価格帯がある程度定着している商品については、基本的に慣習価格に沿って商品を販売するのがセオリーです。
例えばペットボトル飲料であれば、100円〜150円くらいの価格を設定します。消費者にとってはイメージ通りの価格となるため、十分数の需要を取り込める可能性があります。
一方で慣習価格が存在する商品については、広く受け入れられている価格よりも高くしてはいけません。
慣習価格よりも高い値段を設定すると、消費者からは「割高」とか「ぼったくり」などと思われます。
その結果、同じ商品であっても大きく需要量(売り上げ)が減少してしまいます。普通のペットボトル飲料が500円で売っていても、買おうとは思いませんよね。
慣習価格のある商品をより高額で販売したいのであれば、商品に付加価値をつける必要があるでしょう。
段階価格(松竹梅の法則)
最後に、段階価格(松竹梅の法則)をご紹介します。
今回ご紹介する心理的価格設定の中でも、特に即効性のある手法なのでぜひ参考にしていただければ嬉しいです。
段階価格(松竹梅の法則)の意味と例
段階価格とは、ある商品・サービスについて、中身(品質や容量など)が少しずつ異なる三種類の商品(サービス)を用意し、それぞれの値段を段階的に設定する手法です。
日本では値段の高い順番に「松・竹・梅」の三種類が多用されるため、松竹梅の法則とも呼ばれます。ただし必ずしも「松・竹・梅」の三種類である必要はなく、「ゴールド・シルバー・ブロンズ」などのようにランクが分かる名前であれば問題ありません。
段階価格は、「異なる値段が設定された三種類の商品が存在する場合、人は高くも安くもない真ん中の価格帯の商品を購入する」という心理学の理論に基づいています。
詳しい説明は省略しますが、行動経済学や心理学の書籍などを参考にすると、段階価格の有効性を理論的に理解できます。興味のある方は各自で調べてみてください。
段階価格(松竹梅の法則)を活用するポイント
段階価格を活用する際には、もっとも顧客に販売したい商品を真ん中の価格帯に設定するのがポイントです。
先ほどお伝えしたように、人間には「高くも安くもない商品を購入する」という心理的な傾向があります。
そのため、真ん中の価格帯を売りたい商品に設定すれば、その商品を単独で販売する場合よりも売れ行きが良くなる可能性があります。
また段階価格を導入することで、高い商品を買ってもらいやすくもなります。高価格の商品を単独で販売すると、強固なブランド力や他社よりも圧倒的に優れている部分がなければ中々購入してもらえません。
一方で、この商品よりも高価格の商品と低価格の商品を同時に販売すれば、「高くも安くもない商品を選択する」という心理が働くため、価格が真ん中の商品(≒買ってもらいたい商品)を購入してもらいやすくなります。
心理的価格設定のまとめ
今回は、心理的価格設定の方法を4つご紹介しました。
行動経済学や心理学の分野で実証されている通り、私たち消費者は必ずしも合理的に商品を購入するかどうかを決定できるとは限りません。
むしろその日の気分や値段への印象など、心理的な部分で購買を決定するケースも少なくありません。
商品の価格を決定する際には、こうした消費者の心理的な部分も考慮すると、より売れ行きが良くなるかもしれません。
なお価格設定の方法には、他にも様々なものがあります。
より詳しく価格設定の方法について知りたい方は、下記の記事を参照してください!