少子高齢化や製品ライフサイクル(一つの製品が市場で生き残れる期間)の短縮化など、日本の企業を取り巻く環境はますます悪化しています。
ただでさえ人口減少により顧客を獲得しにくくなっているのに、ようやく商品やサービスを開発して売り出しても、すぐに他の製品やサービスに顧客を奪われてしまうケースが増えており、多くの企業が苦慮しています。
今回の記事では、そんな日本企業の多くが抱えている課題を解決し得る「リレーションシップマーケティング」という考え方をご紹介します。
リレーションシップマーケティングとは?
リレーションシップマーケティングとは、顧客との関係性を重視するマーケティング手法の総称です。
一人一人の顧客との良好な関係を長期的に構築し、お客さんが自社に対して強いロイヤリティを抱くようになる状況を目指してマーケティング活動を行います。
つまり簡単に言うと、「お客さん一人一人を大事にして、自社サービスや商品のファンになってもらうようにマーケティング活動を展開する手法」です。
リレーションシップマーケティングはどうやって行うの?(リレーションシップマーケティングの特徴)
リレーションシップマーケティングは、一体どうやって行うのでしょうか?他のマーケティング手法との違いを踏まえながらご紹介します。
特徴①:利益をもたらす顧客を対象とする
従来から行われていた4 Pマーケティング(マスマーケティング)では、あるセグメントに属する全ての顧客を対象にマーケティングを展開します。
一方でリレーションシップマーケティングでは、自社の商品やサービスを購入し、利益をもたらしてくれる顧客に重点を置いた施策を行います。
具体的には、利益をもたらす優良顧客を特定した上で、そうした顧客に対してのみ特別なサービスや特典を設定する施策が考えられるでしょう。
近年は、パレートの法則(全ての顧客のうち20%に相当する顧客が、全売上高の80%分をもたらす)という考え方が有効であると考えられています。
パレートの法則に基づくと、優良顧客に重点を置くリレーションシップマーケティングは、とても合理的な手法だと言えるでしょう。
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特徴②:新規顧客ではなく既存顧客を重視する
リレーションシップマーケティングでは、新規顧客の獲得よりも既存顧客との関係維持を重視します。
具体的には、新規顧客の獲得に費用を費やす代わりに、既存顧客との関係維持・強化に役立つ施策に資金を投入する施策が考えられます。
新規顧客を獲得するためには、顧客との関係構築に時間がかかったり、膨大な広告費が必要となります。
一方で既存顧客との関係維持・強化には、一から関係構築することや広告宣伝が殆ど不要です。
要するに新規顧客を獲得する場合と比べて費用や労力がかからないため、効率的に利益を得られるのです。
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特徴③:顧客ごとのニーズに対応する
リレーションシップマーケティングにより顧客との長期的な関係を構築するためには、顧客の満足度を高めて、自社サービスや商品のファンになってもらう必要があります。
そのためリレーションシップマーケティングでは、顧客ごとに異なるニーズに手厚く対応することを重視します。
顧客の小さな要望に一つ一つ応えていくことで、固定客化や顧客生涯価値の増加を図っていくのです。
リレーションシップマーケティングを行うメリット
リレーションシップマーケティングは、経営やマーケティングに対して下記3つのメリットをもたらします。
メリット①:少ないコストで効率的に利益を得られる
リレーションシップマーケティングが持つ最大のメリットは、「少ないコストで効率的に利益を得られる点」です。
言い方は少々悪いかもしれませんが、利益を落としてくれる顧客との関係に対して予算の大半を割くので、費用を無駄にせず利益を効率的に稼ぐことができます。
最小限の費用で最大限の利益を得られるため、経営資源が乏しい企業こそ積極的に活用すべきマーケティング手法です。
メリット②:顧客のニーズに沿ったサービスや商品を提供しやすくなる
リレーションシップマーケティングを実施する過程では、メールや電話などでお客さんと双方向的にコミュニケーションを取る必要があります。
お客さんとの双方向的なやりとりを通して、顧客が抱えているニーズや悩みをダイレクトに知ることができます。
その結果、当初よりも顧客に受け入れられやすいサービスや商品を提供できるようになるでしょう。
顧客とのコミュニケーションにより、さらに顧客のニーズを踏まえたサービスや製品を提供しやすくなる点は、リレーションシップマーケティングに特有のメリットです。
メリット③:自社のサービスや商品を宣伝してもらえる
リレーションシップマーケティングにより自社のファンを創ることは、経営やマーケティングに非常に強いメリットをもたらします。
リレーションシップマーケティングの施策が上手くいけば、自社サービスや商品のファンを増やすことができます。
自社の強烈なファンとなった顧客は、自社のサービスや商品について、口コミやSNSで良さを宣伝してくれます。
要するに、リレーションシップマーケティングにより宣伝費を全くかけずに自社サービスを世の中に広められるかもしれないのです。
リレーションシップマーケティングの成功事例〜リッツカールトンはなぜファンが多いのか?〜
リレーションシップマーケティングのメリットをよく知ってもらうために、実際に企業経営で行われている成功事例をご紹介します。
今回はリレーションシップマーケティングの成功事例として、かの最高級ホテル「リッツカールトン」の取り組みを見てみましょう。
リッツカールトンではCRMシステム(詳しくは後述)を使って、お客さんのデータを一元管理しています。
そして蓄積された情報を活用し、一人一人の好みに合わせたサービスを展開することで、熱狂的なリピーターを獲得し続けています。
リレーションシップマーケティングを実践している企業は他にもありますが、「顧客に対するサービスの繊細さ」はリッツカールトンの右に出る企業はいないと言っても過言ではありません。
特筆すべきは、お客さんの好みに合わせて部屋の冷蔵庫に置かれる水の種類が変わる点です。
お客さんによって水の種類まで変えるのは驚きです。
そうしたきめ細やかな対応を心がけているからこそ、世界的にサービスを展開できているのでしょう。
リレーションシップマーケティングとはやや話がズレますが、リッツカールトンが行う数々の施策は経営やマーケティングのお手本とも言えるものばかりです。
たとえばルームサービスでは、ごく普通のコーラを1,000円で売っているそうです。
ただのコーラを売っているにも関わらず、多くのお客さんに満足してもらえる理由は、「贅沢な環境で美味しくコーラを飲む」という価値を顧客に提供できているからであると言えます。
マーケティング(特にブランディング)について勉強したい方には、リッツカールトンの成功事例を参考にするのを強くオススメします。
リッツ・カールトンが100円のコーラを1,000円で販売できる理由は、「コミック版 100円のコーラを1,000円で売る方法」で詳しく紹介されています。
リレーションシップマーケティングを効果的に行う方法〜CRMシステムの活用〜
リレーションシップマーケティングの効果を高める上では、「CRMシステム」がとても役立ちます。
CRMシステムとは、顧客の過去の行動を蓄積・分析した上で、顧客との長期的な関係構築を実現するためのシステムです。
具体的にCRMシステムでは、「どんな顧客がいつどんなサービスを利用したか」という情報を一つ一つ蓄積することができます。
蓄積された情報を使えば、例えば優良顧客に特別なサービスを誕生日などのタイミングで提案したり、ちょうどサービスを利用するタイミングでリマインド通知を行いやすくなります。
顧客一人一人に対して手厚いマーケティングを行うとなると、どうしてもアナログ(手動)では限界があります。
できたとしても時間や労力が膨大にかかるため、リレーションシップマーケティングのメリットが失われてしまいます。
一方でCRMシステムを活用すれば、顧客の情報を一元的かつ自動的に管理できるため、負担を負わずに効果的なリレーションシップマーケティングを実施できるようになります。
つまりCRMシステムは、リレーションシップマーケティングを効率的に遂行するツールなのです。
メリットこそあれデメリットは基本的にないので、リレーションシップマーケティングを行う際はCRMシステムを活用するのがオススメです。
少ないコストで利益を増やすには、既存顧客にフォーカスした施策が効果的です。既存顧客からの購買額や購買頻度を増やせれば、比較的少ないコストで全社的な売上高を増やせる可能性があります。今回の記事では、既存顧客にフォーカスした施策を行う上[…]