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選択と集中〜最小の経営資源で最大の結果を出す上で不可欠な戦略〜

選択と集中

外部環境の変化の激しい昨今、多角化により経営のリスクを分散すべきという考えが広まっています。

しかし他方で、あえて自信のある事業ドメインに経営資源を集める「選択と集中」という経営戦略により成功をおさめた企業も実在します。

特に経営資源の量が少ない中小企業にとっては、「選択と集中」はものすごく合理的な行動です。

そんな「選択と集中」とは、いったいどのような経営戦略なのでしょうか?

この記事では、選択と集中の意味や成功・失敗事例、成功させるポイントなどをわかりやすくお伝えします。

なお中小企業に「選択と集中」をオススメする理由は最後の章でお伝えするので、ぜひご参考にしてくれると嬉しいです!

選択と集中とは?

まずはじめに、選択と集中の意味や実践手段をお伝えします。

「選択と集中」の意味

選択と集中とは、自社が強みとする事業を見さだめた上で、その事業に経営資源を集める経営戦略であり、多角化している企業に有効です。

簡単にいうと、苦手なビジネスは辞めてしまって、自信のあるビジネスに特化して取り組む経営戦略です。

「選択と集中」はピーター・ドラッカー氏が主張した考え方であり、ドラッカー氏からコンサルティングを受けたウェルチ氏が世間に広めたことで知られています。

ウェルチ氏はドラッカー氏の助言通り、自社がいちばん自信を有する事業のみに特化する経営戦略を遂行しました。その結果、ウェルチ氏が経営する会社は大成功をおさめました。

ウェルチ氏の実績もあいまって、現在に至るまで「選択と集中」はおおくの多角化企業で実際に実践されています。

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「選択と集中」を実践する手段

選択と集中の実践に際しては、主力事業以外をどうするのかが気になると思います。

基本的には、事業規模を縮小もしくは完全にそのビジネスから退きます。

ただし状況次第では、M&Aにより事業を売却する手段も活用できます。

単純に事業を縮小・退く場合とは違い、事業売却すれば売却利益を獲得できます。売却した利益を「特化する事業」に投入すれば、より選択と集中の効用を増やせるでしょう。

ただし事業を売却すると、取引先や従業員から反感を買うおそれがあるため、実践に際しては慎重な行動が求められます。

「選択と集中」を意識した経営戦略のメリットとデメリット

選択と集中を意識した経営戦略には、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?

この章では、選択と集中のメリットとデメリットをそれぞれわかりやすくお伝えします。

選択と集中のメリット

選択と集中を実践すると、下記2つのメリットを得られます。

メリット①:効率的に収益を増やせる

同種・同量の経営資源を使うと仮定すると、苦手なところよりも自信がある事業ドメインの方がよりおおくの収益を得られます。

選択と集中により自信があるドメインに特化することで、より効率的に収益を増やせます。

例えば苦手な仕事では1時間働くことで1万円、得意な仕事では1時間働くことで2万円得られるとしましょう。

それぞれの仕事を1時間ずつ行うと、1+2=3万円の収入になります。

他方で選択と集中により、苦手な仕事に費やす時間を得意な仕事に費やすとどうなるでしょうか?2+2=4万円稼げるようになり、苦手な仕事に時間を費やした場合よりもおおく稼げます。

多角化している企業でもこの例と同様に、強みを活かせる主力事業に特化することで、よりおおくの収益を得られるメリットを得られるのです。

メリット②:コストカットにつながる

選択と集中の有する二つ目のメリットは、コストカットの効用を得られる点です。

自信がある事業ドメインに特化すれば、多角化している企業と比べて、一つの事業における作業の標準化や習熟化が進みやすくなります。

標準化や習熟化により、労働時間の圧縮や原材料のカットにつながり、結果的にコストを減らせるようになります。

コストのカットに伴いおおくの利益を手元に残せるようになる点は、選択と集中による著しいメリットと言えます。

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選択と集中のデメリット

著しいメリットを見込める経営戦略ですが、選択と集中には以下のようなデメリットがあります。 

デメリット①:経営上のリスクが上がる

選択と集中を実践する上で、外部環境の変化に対応しにくくなるデメリットは絶対忘れてはいけません。

複数のビジネスを実践する企業であれば、 ある事業の業績が急降下しても、他の事業で収益を獲得することで経営を存続できます。

 他方で選択と集中を実践すると、仮に技術力の進歩や市場ニーズの変化により業績が急降下した場合に、他の事業でカバーできないため、倒産するリスクが増えます。

特に近年は、技術力の進歩や消費ニーズの多様化に伴い、一つのビジネスで安定的に利益を得つづけることが難しくなっています。

変化の激しい現代においては、選択と集中はハイリスクな経営戦略である点に注意しておきましょう。

デメリット②:後々大きく伸びる分野を切り捨てるおそれがある

選択と集中では、採算性が高い事業のみを残し、それ以外の事業を全て切り捨てます。

たしかに選択と集中を実践すれば収益性は上がるものの、長期的に見ると甚大な機会損失を招くおそれがあります。

今現在収益性が低くても、後々大化けして「金のなる木」になる可能性は十分あります。

このような潜在性の大きいビジネスを切り捨ててしまうと、長期的に見るとかえって損失となるかもしれません。

選択と集中の成功事例・失敗事例

選択と集中により華々しい成功をおさめた企業が実在する中で、失敗して大損失をこうむった企業も実在します。

この章では、選択と集中で成功した事例と失敗した事例をそれぞれご紹介します。

選択と集中の成功事例:日立製作所

国内企業の中で、選択と集中により成功した最たる例が日立製作所です。

2000年代後半まで同社は、バブル崩壊やリーマンショックにより業績が著しく低迷していました。

そこで経営改善に向けて同社では、自社の強みである技術力に着目し、選択と集中を実践しました。

具体的には、採算性が取れていなかった家電事業から退いて、「社会インフラ事業」や「情報通信事業」に経営資源を集めました。

選択と集中により同社は、その後に過去最高の当期純利益を記録するなど、見事なV字回復を遂げました。

選択と集中の失敗事例:シャープ

他方で選択と集中に失敗した事例として知られているのがシャープです。

2000年代初頭から同社は、従来の家電事業などに加えて、液晶事業も始めました。そんな液晶事業は大成功をおさめ、同社は急速に業績を伸ばしました。

そこで同社は選択と集中により、好業績をおさる液晶事業へ経営資源を集める戦略をとりました。 

しかし中国や韓国が低価格で液晶製品を販売し始めた影響などにより、液晶事業の業績は悪化し、やがてその悪影響は会社全体に及びました。

液晶事業への選択と集中の失敗もあいまって、同社は鴻海精密工業の傘下に入らざるを得なくなりました。

※参考

事業における「選択と集中」とは?メリット、成功・失敗事例をご紹介 | BizHint(ビズヒント)- 事業の課題にヒントを届けるビジネスメディア

選択と集中を成功させるポイント

デメリットの項でお伝えしたように、選択と集中はハイリスクで難易度の高い経営戦略です。

そんな選択と集中を成功させるには、どのような点に注意すべきなのでしょうか?

この章では、選択と集中を成功させる上で絶対おさえるべきポイントを3つお伝えします。

多面的な視点から集中する事業を見さだめる

選択と集中を実践する際は、自社の経営資源だけでなく、消費者のニーズや技術力の進歩など、外部の環境も考慮した上で特化する事業を見さだめましょう。

たとえ自社の強みを活かせる事業であっても、代替品や強力な競合他社が出現することで、選択と集中による収益性の向上効果を得られない場合もあります。

SWOT分析やファイブフォース分析などのフレームワークを用いて、多面的な視点から集中すべき事業を見さだめるのが大事です。

選択と集中を実行する際に役立つフレームワークについては、下記の記事で詳しくお伝えしています。

ぜひご参照ください!

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長期的な目線で選択と集中を実践する

選択と集中を実践する際には、今後数十年のことも考慮する必要があります。

先ほどお伝えしたように、のちのち大きくグロースする事業をむやみに切り捨てるのは、長期的に見ると損失です。

今現在はダメでも後からグロースしそうな新規事業などがあれば、規模を縮小してでも存続させる戦略も一つの手です。

利害関係者からの理解を獲得する

選択と集中により不採算事業を切り捨てると、その事業に従事していた従業員から反感を買うおそれがあります。

これまでの頑張りが無駄だったと従業員に思われてしまうと、モチベーションが低下してしまい他の事業にも悪影響が及ぶおそれがあります。

また企業に出資してくれている株主からも、「なぜこの事業を辞めてしまうのか?」と反感を買い、出資してもらえなくなるおそれがあります。

企業経営にとって、利害関係者となる従業員や株主は欠かせません。

選択と集中が必要な理由を根拠立ててしっかりと伝えて、従業員や株主から理解をしっかり得ておくのが大切です。

中小・零細企業にとって「選択と集中」と「多角化」のどちらが良いか?

中小・零細企業(ベンチャー含む)にとっては、「選択と集中」により一つの事業ドメインに特化する戦略と、多角化により複数のビジネスを戦略のどちらが良いのでしょうか?

結論から言うと大半の中小・零細企業にとっては、選択と集中の方が適していると考えています。

企業経営を継続するには、人件費や宣伝広告費などを十分賄えるほどの収益を得つづけなくてはいけません。

中小企業や個人事業主は、保有する経営資源の量が少ないです。

そのため多角化を実践すると、ただでさえ少ない経営資源が分散してしまい、どの事業も中途半端となってしまいます。

その結果、人件費や宣伝広告費をまかなえるだけの収益を得られず、企業経営を存続できなくなるおそれがあります。

この点を踏まえると、限りある経営資源で最大限の収益を生み出せる「選択と集中」の方が、保有する経営資源が少ない中小企業に適した経営戦略といえます。

 

確かに選択と集中には、リスクを分散できないデメリットがあります。

ですが経営資源に限りがある中小企業の場合は、そのリスクに目をつぶってでも、まずは一つの事業で十分な収益を得つづける方が良いです。

他の事業に資金を回せるほど一つの事業が成功した段階で、多角化に取り組んだ方が低リスクで確実です。

一つの事業ドメインで成功しないまま多角化に取り組んだ結果、全てが中途半端にならないように注意しましょう。

選択と集中のまとめ

自信がある事業ドメインに特化する「選択と集中」は、限られた経営資源で沢山の収益を得られる経営戦略です。

しかし他方で、収益分散の効用が得られない点や潜在性の大きい事業を切り捨てるおそれがある点など、無視できないデメリットもあります。

選択と集中を実践する際は、多面的な視点や長期的な視点から、事業の選択と集中を実践していく必要があります。

ハイリスクではあるものの、まだ十分成功している事業ドメインがない限り、中小企業は「選択と集中」を意識した経営を実践するのがおう好ましいです。

 まずは「選択と集中」の考え方に基づいて強みを活かせる主力事業に特化し、十分成功してから多角化に取り組むのをオススメします!