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サービスマーケティングとは?〜目に見えないサービスを上手く売る方法〜

サービスマーケティング

マーケティングの勉強をしている方であれば、「マーケティングミックス」や「マーケティングの4P」というフレームワークを一度は耳にしたことがあると思います。

事業を進めていく上で有用なフレームワークではあるものの、実は形のある製品(ジュースや装飾品など)を対象としたものであり、ホテルやテーマパークなどの無形のサービスに関してはやや不十分だったりします。

ホテルやテーマパークなどの「サービス」に関しては、サービスマーケティングという考え方が役立つと思います。

そこで今回は、前編と後編に分けてサービスマーケティングの意味やサービスの特性と課題、サービスマーケティングのフレームワークである7Pなどについてわかりやすく解説してみようと思います。

サービスマーケティングの考え方を知れば、目に見えないサービスを上手く売る手がかりを得られる・・・かも知れません。

まず前編では、サービスマーケティングの意味とサービスの特性・課題について解説します。

サービスマーケティングとは

サービスマーケティングとは、目に見えない「サービス」の特性に着目したマーケティング戦略または考え方を意味します。

自動車や家電などの製品を販売するためのマーケティングの考え方は、目に見えないサービス業には適していない部分があります。

そこでサービスをいかに上手く売り出すかを考える際には、サービスの特性を考慮したマーケティング戦略を練る必要があります。

近年IT技術の急速な発展や経済のグローバル化などが進行し、サービス業の生み出す経済効果は非常に大きくなっています。 

むしろアメリカや日本などの先進国では、年間GDPの約7~8割がサービス業によって生み出されているとも言われています。

サービス業の重要性が増している昨今、マーケティングに携わる人や自身で事業を営む方にとって、サービスマーケティングへの理解は不可欠といっても過言ではないでしょう。

サービスの特性とサービスマーケティングで解決すべき課題

サービスマーケティングを実施するためには、サービスが持つ(有形の製品には無い)特性と、そこから分かるマーケティングの課題を理解しなくてはいけません。

サービスには、主に以下5つの特性があると言われています。

特性①:無形性(非有形性)

サービスの最たる特性といえば、実体を持たないという「無形性」でしょう。

自動車やジュースであれば、目で見たり、触ったり匂いを嗅いだりすることで、製品が「そこ」にある事実を認識できます。

しかしサービスの場合、五感を使ってサービスが「そこに存在する」という事実を明確に認識できません。

例えば美容室で髪を切ってもらう場合、「髪を切ってもらう」サービスを目で見たり触ったりはできません。

この特性があるために、サービスには「購入前に同サービスの実態を認識しにくい」という難点があります。

自動車であれば目で見たり体験で乗ってみる事で比較できますが、実際に髪を切ってもらうまでは、どの美容室の腕が良いのかは分かりませんよね。 

以上の無形性のデメリットを解消する為に、サービスマーケティングを展開する際は、「サービスの有形性を高める」という課題を解決する施策を考える必要があります。

簡単にいうと、サービスの内容や品質を事前に理解しやすくする様なシステムを作る事が課題になります。

例えば美容室であれば、実際にカットした人の写真や口コミをHP上に載せる事で、どんなサービスを得られるのかを目で見て分かるようにします。

事前にサービスの内容を理解できる事で、お客さんに安心してサービスを購入してもらいやすくなります。

特性②:非均一性(品質の変動性)

サービスの二つ目の特性は、非均一性(品質の変動性)です。 

非均一性とは、「サービスを提供する場所や人によって品質が変動しやすい」という特性です。

自動車や電化製品などの製品であれば、機械とマニュアルさえあれば全く同じものを作れます。

一方で美容室のサービスであれば、新人の美容師さんと人気店のカリスマ美容師さんでは、多少なりとも腕は違うでしょう。

サービスを行う人によって品質が変動しやすいとはいえ、お客さんからしたら常に同じクオリティのサービスを受けたいはずです。同じ5,000円を払っているのに、出来栄えが異なるのは不公平です。

この非均一性のデメリットを克服する為に、サービスマーケティングを展開する際は、「マニュアルや従業員教育により、業務を可能な限り標準化する」という課題を解決しなくてはいけません。

誰が行なっても同じクオリティとなるようにサービスを展開できるようになれば、お客さんの信頼性や満足度を向上させられるでしょう。

特性③:不可分性

三つ目の特性は、サービスは生産と消費が同じタイミングで生じるという特性(不可分性)です。

有形の製品であれば、製造してからお客さんが消費するまでにはタイムラグがあります。一方で美容室などのサービスでは、生産(髪を切る)と消費(髪を切るというサービスを受ける)が同時に発生します。

この特性がある為に、「サービスを幅広い地域の人に届けられない」ですとか、「一度に少数の人にしかサービスを提供できず非効率」などのデメリットが生じてしまいます。

そこでサービスマーケティングでは、不可分性に対応する為に「一度に複数のお客さんにサービスを届けられる仕組み作り」や「サービスを記録・保存する」事を課題としています。

たとえば美容室であれば、「自分で上手く髪を切る方法」をセミナーで紹介すれば、一度に多くのお客さんにサービスを届ける(マネタイズする)事ができます。

もしくは髪を切る方法を動画で保存・公開する事でも、課題を解決できるでしょう。

特性④:消滅性

四つ目は、「サービスは貯蔵または保存できない」 という特性です。

これは分かりやすいかと思います。美容室やテーマパークで行うサービス(「髪を切る」とか「お客さんを楽しませる」)は、どうやっても保存できませんよね。

貯蔵や保存ができない為に、サービスの販売には「需要の変動に対処しにくい」という難点があります。

自動車やジュースなどの有形財であれば、売れ残っても在庫として保存し、明日以降に再び販売する事ができます。もしくは急激な需要増加が生じた際には、生産量を増加させれば済む話です。

しかしサービスの場合、 貯蔵や保存ができない為、需要が急激に増減しても生産量(ある一人がお客さんに与えるサービスの量)自体を変えることは基本的にできません。

そこでサービスマーケティングでは、消滅性に対応する為に「需給管理の強化」を課題としています。

需給管理の徹底は「需要の変動性」という特性に対する課題でもありますので、後ほど詳しく解説します。 

特性⑤:需要の変動性

最後にご紹介するのは、サービスに対する需要は変動しやすいという特性(需要の変動性)です。

たとえばテーマパークであれば、学校や会社が休みの休日の方がお客さんが多いですよね。美容室であれば七五三や入学式などの季節になると、通常よりも需要が増加するのは想像に難くないでしょう。

このようにサービスの需要は変動しやすいものの、先ほどもお伝えした通り、サービスは保存できない為、需要の変動に対処しにくいのです。

ではどうしたら良いかというと、サービスマーケティングでは「需給管理の強化」という課題を解決することで、需要の変動に対処します。

まず需要の管理については、需要が多い時と需要が少ない時の差を少なくする施策を行います。

具体的には、「ピーク時の需要を非ピーク時に移す」必要があります。

ピークの移動に関する施策としては、旅行のツアー料金が最たる例でしょう。

GWや夏休みなどの価格は非常に高価格である一方で、何もない期間の平日などはピーク時と比べてかなり低価格です。

このように時期によって価格を変動させることで、需要の変動を最小限に抑える効果が期待できるのです(現実にはGWや夏休みの方が需要は多いですが・・・)。

需要の変動を最小限に抑える事で、「需要はあるのに人員不足等により供給できない」といった事態を回避できます。

余談ですが、旅行会社が時期によって価格を変化させるのには、「需要の変動を抑える」目的以外にも、「需要の多い時に価格を高くする事で、効率的に利益を得る」目的もあると個人的には思っています。

この点について詳しく知りたい方は、お時間があれば以下の記事をご参照してみてください。

business-kurage.hatenablog.com

サービスマーケティングの意味や特性、課題についての解説は以上になります。

後編の記事では、サービスマーケティングによってどのようにサービスを売り出していくかを考える上で役立つ「7P(サービスマーケティングミックス)」というフレームワークと、7P(サービスマーケティングミックス)を使って、あのディズニーが成功している要因を考えてみようと思います。

サービスマーケティングについてさらに詳しく知りたい方は、ぜひ後編の記事もご覧になってください!

business-kurage.hatenablog.com