セブンイレブンは、国内最大手のコンビニチェーンであり、誰もが一度は利用したことがあると思います。
そんなセブンイレブンの売上高(チェーン全店)は5兆102億円であり、業界2位のファミリーマート(2兆9,651億円)や業界3位のローソン(2兆2,961億円)と比べても、圧倒的に大きな収益を挙げています。
では、そんなコンビニチェーン業界で圧倒的な地位にあるセブンイレブンでは、どのような経営戦略を策定・実行しているのでしょうか?
この記事では、セブンイレブンが実践する3つの経営戦略と経営戦略上の課題を分かりやすく解説していこうと思います。
セブンイレブンが実践する3つの経営戦略
セブンイレブンが実践している経営戦略は、「ドミナント戦略」、「差別化戦略」、「多角化戦略」の3種類に分けられます。
この章では、セブンイレブンがそれぞれの経営戦略をどのように実践しているかを具体的に説明していきます。
限られた地域で多くの店舗を運営するドミナント戦略
セブンイレブンが実践する経営戦略の中で、最もユニークなのが「ドミナント戦略」です。
ドミナント戦略とは、特定のエリア内で集中的に店舗を出店する経営戦略です。
具体的には、数百メートル〜数キロ間隔で自社の店舗を出店します。
「徒歩圏内に全く同じ店舗があっても意味がないのでは?」とか「自社の店舗同士で顧客の奪い合いにならないの?」と疑問に思う方は多いと思います。
ですが、限られたエリアで集中的に店舗を出店すると、その地域に住むお客さんの間で認知度を高めることができます。
また、配送に費やす時間やコストの削減、地域ごとに異なるニーズへの対応が可能になる、といったメリットがあります。
上記のようなメリットがあるため、特定のエリアにおけるNo.1を獲得する上でドミナント戦略は最も効果的な経営戦略と言っても過言ではありません。
ドミナント戦略で着実に各地域のNo.1を獲得してきたからこそ、セブンイレブンは圧倒的な売上高や認知度を誇るようになったのです。
「なんでこんな近い場所にファミリーマートが複数あるのだろう」首都圏や地方都市に住んでいる方ならば、このような疑問をふと感じたことがあるでしょう。「近くに店舗を構えても意味なさそう」と思うかもしれませんが、実は同じ地域に複数の店舗を構[…]
PB商品への注力による差別化戦略
セブンイレブンは、売上高だけでなく営業利益率(売上高に占める営業利益の割合)も、競合他社と比べて圧倒的に優れています。
ローソンやファミリーマートの営業利益率が1%台である一方で、セブンイレブンは約5%と非常に高いです。
本業で稼ぐ力を表す営業利益率が高い背景には、PB(プライベートブランド)商品に注力する差別化戦略があります。
長年セブンイレブンは、経営陣の方針にしたがって顧客のニーズに寄り添った自社製品の開発に取り組んできました。
その結果「セブンプレミアム」や「セブンカフェ」といった、ブランド力の高いヒット商品を次々と生み出してきました。
こうした競合他社とは異なるオリジナル商品・ブランドで差別化していることが、圧倒的な利益率の高さにつながっているのです。
「ビジネスで成功するには差別化が大事!」こんな感じのフレーズを、経営やマーケティングに携わる方であれば一度は耳にした経験があると思います。考えてみると差別化は大事だなあ・・・と何となくは思うでしょうが、差別化はなぜ大事なのでしょうか?[…]
関連性の高い事業分野への多角化戦略
ドミナント戦略や差別化戦略だけでも圧倒的な業績を生み出す源泉となっていますが、多角化戦略も業績に大きく貢献する経営戦略となっています。
多角化戦略とは、従来とは異なる新しい市場で新しい製品を販売する経営戦略です。
たとえばセブンイレブンでは、「セブン銀行」という名称で銀行業界への多角化を果たしています。
銀行業界への参入を果たしたことで、セブンイレブンを利用するお客さんは、買い物だけでなく店舗に設置されたATMで現金の入出金や振り込みなどの手続きも行えるようになりました。
単なる買い物の場所から銀行としても活用できる場所としたことで、セブンイレブンはより一層お客さんから支持される企業となりました。
このように、セブンイレブンはコンビニ事業と関連性が高い分野への多角化を果たし、相乗効果により大きく業績を伸ばす経営戦略に秀でています。
難しいと言われる多角化戦略のモデルケースとして、セブンイレブンの事例は大いに参考となるでしょう。
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セブンイレブンが抱える経営戦略上の課題
業界内で圧倒的な売上高を誇るセブンイレブンですが、その経営戦略にはいくつかの課題があります。
この章では、セブンイレブンの社長交代の際に語られた2つの課題についてご説明します。
各店舗からの情報が本部に届きにくい
ドミナント戦略を積極的に推し進めてきたことで、セブンイレブンの店舗数は膨大な数となっています。
店舗数が増えすぎた影響で、各店舗が抱える現場の課題などの情報が本部に届きにくい、という課題が生じているとのことです。
そこでセブンイレブンでは、全役員が各店舗を訪問して加盟店オーナーと話し合い、個々の店舗が抱える課題を洗い出し、対策を進めるとのことです。
24時間営業に否定的な意見が多い
従来コンビニといえば、24時間常に空いているのが一般的でした。その利便性の高さも相まってセブンイレブンは多くの顧客を獲得してきました。
しかし近年は、加盟店オーナーから24時間営業に対して否定的な意見が寄せられており、営業時間を短縮したい旨の申し出が寄せられているとのことです。
これまでは通用していた経営戦略ですが、昨今は過労死の問題もあり、24時間営業を続けるのは企業イメージの低下にもつながりかねません。
そこでセブンイレブンでは、営業時間に関する実証実験を重ねつつ、加盟店オーナーと話し合いを進めながら問題に対処すると発表しています。
セブンイレブンの経営戦略まとめ
普段何気なく利用しているセブンイレブンは、実は合理的で的確な経営戦略に基づいて運営されていることが理解できたかと思います。
今回お伝えしたセブンイレブンの事例のみならず、特定の業界で大成功を収めている企業には緻密な経営戦略があるケースが大半です。
1%でもビジネスで成功する可能性を高めたいならば、参入したい(している)業界で成功している企業の経営戦略を分析し、役立つ部分を自社に取り入れてみると良いでしょう。
経営戦略とは、目標・ビジョンの達成や事業の成長に向けて、どのような戦い方で行動すべきかを明確にする指針です。 近年は、少子高齢化や大不況、経済のグローバル化などの影響により、単純に商品やサービスが優れているだけでは、長期的な存続・成長は[…]
※参考文献
https://www.7andi.com/library/dbps_data/_template_/_res/ir/library/co/pdf/2017_05.pdf
社長交代会見で語られたセブン-イレブンの経営課題と戦略大転換 ダイヤモンド・チェーンストア
https://www.7andi.com/ir/file/library/kh/pdf/2020_0409kh.pdf
https://www.family.co.jp/content/dam/family/ir/library/references/fact_2002_wq0.pdf
https://www.lawson.co.jp/company/ir/library/pdf/hosoku/hosoku_45_all.pdf