前回の記事でもお伝えしたように、新製品の価格設定はその後の事業運営の成否を左右し得る重要な意思決定です。
新製品の価格設定は、新製品の特性や市場の動向を踏まえ、慎重に実施する必要があります。
そんな新製品の価格設定方法には、主に「ペネトレーションプライシング」と「スキミングプライシング」という二種類があります。
前回の記事では「ペネトレーションプライシング」についてお伝えしたので、今回はスキミングプライシングについて解説します。
スキミングプライシングの意味やメリット、適用要件など、新製品の価格を付ける上で特に大切なポイントをわかりやすくお伝えします。
新製品の価格設定にお悩みの方は、是非ご参照ください!
スキミングプライシング(上澄吸収価格政策)とは?
スキミングプライシングとは、新製品の価格をかなり高く設定し、早い段階で事業に投資した資金を回収しようとする価格設定の方法です。
市場の上澄み(富裕層やイノベーターなど)をターゲットとしている点から、上澄吸収価格政策とも言われています。
売り出し当初は高価格を付けるものの、後々競合企業が参入してきた際には価格を下げて対抗するケースが一般的です。
ペネトレーションプライシングとは対照的に、新製品の発売当初から利潤の獲得を目指している点がスキミングプライシングの特徴です。
※ペネトレーションプライシングについては、下記の記事をご参照ください!
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スキミングプライシングにより新製品の価格を決定するメリット
スキミングプライシングによる新製品の価格設定には、以下3つのメリットがあります。
市場に導入した直後からたくさんの利潤を見込める
ペネトレーションプライシングでは、導入当初はほとんど利潤を得られません。
一方でスキミングプライシングでは、原価よりも大幅に高い値段で新製品を売りだします。
そのため、市場に導入した直後からたくさんの利潤を得られる可能性があります。
たくさんの利潤を早い段階から獲得することで、さらに事業へ投資を行ったり、他の事業にその利潤を回したりできる点はスキミングプライシングに特有のメリットです。
新製品の開発費用を短時間で回収できる
通常新しい製品を開発するには、多大なコストを要します。
設備投資や人件費、マーケティング費用などを含めると、初期投資を回収するまでにはけっこうな時間がかかります。
一方で高めの価格をつけた商品では、商品さえ売れれば設立当初からたくさんの利潤を得られます。
なのでペネトレーションプライシングと比べると、より短時間で新製品の開発費用を回収できます。
「高級な製品」というブランドイメージを確立しやすい
前回の記事でもお伝えしましたが、私たち消費者は最初に購入した時の価格がその後の購買意思決定の基準となったり、商品に対するイメージが決まります。
例えば最初にリーズナブルな大衆ブランドであると認識されると、その後そのブランドには「安くて大衆的な商品」というイメージがつくというわけです。
ですので、商品の質にも左右されるものの、最初に高価格で売り出すことで、「高級な製品」といったブランドイメージを確立しやすくなります。
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スキミングプライシングが適している新製品の要件
有名な経営学者であるコトラー氏は、スキミングプライシングが適している新製品の要件として次の3つを挙げました。
高価格をつけるにふさわしいほど品質やイメージが優れている
スキミングプライシングを活用するには、その新製品が高価格をつけるにふさわしいほど、品質やイメージが優れている必要があります。
これまでの商品と大差ない普通の製品や、大して性能やデザイン・イメージ面が良くない製品だと、値段を高くしても買ってもらえません。
スキミングプライシングを使う際は、他社製品とは大きく異なり、かつ十分良質な性能やイメージがあるかどうかをあらかじめ確認しましょう。
高価格にしても強い需要がたくさん見込める
根本的な部分ですが、高価格にしても需要がなければ、誰も新製品を購入しないので売り上げも利潤も得られません。
新製品が高価格でも買ってもらえるには、革新的な商品に熱狂的な需要を持つイノベーターと呼ばれる人たちが一定数存在する必要があります。
あらかじめマーケティングリサーチを行い、強い需要を持つイノベーターの存在が一定数確認できたら、スキミングプライシングを適用しても良いでしょう。
容易に低価格で市場に参入できない・価格弾力性が低い
他社が容易に低価格で同種の商品を売り出せる状況だと、スキミングプライシングで高価格をつけたとしても、十分な利潤を得られません。
基本的に消費者は、同種の商品であれば安い方を購入するからです。
スキミングプライシングを新製品に適用するには、容易に商品を安く売り出せない程度には、参入障壁が高い必要があります。
もしくは需要の価格弾力性が低い商品に対しても、スキミングプライシングは適しています。
需要の価格弾力性が低いというのは、価格を下げても需要量があまり増加しないことを意味します。
よって需要の価格弾力性が低いと、仮に他社が低価格で売り出せたとしても、引き続き高価格で商品を売りだして利潤を得られる可能性が高いです。
スキミングプライシングのまとめ
今回は、新製品の価格設定方法の一つであるスキミングプライシングについて解説しました。
スキミングプライシングを適用すると、売り出しを始めてから短時間で新製品の開発費用を回収できます。
しかし新製品に対する需要がなかったり、良質な性能がなければ、スキミングプライシングのメリットを十分得られない可能性があります。
前回から二回にわたって、新製品の価格設定方法を解説してきました。
お伝えしてきたとおり、「ペネトレーションプライシング」と「スキミングプライシング」では、得られるメリットや適している要件に違いがあります。
新製品を売り出す際は、状況や目的に応じて適切な価格設定の方法を選択しましょう。
新製品に限らなければ、商品・サービスの価格設定の方法には、他にも様々な種類があります。
以下の記事でいくつかご紹介しているので、もし良かったら参考にしてみてください!
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