皆さんは「M&A」という言葉を聞くと、どんなイメージを抱きますか?
多くの方は、大企業が絡んだ大規模な合併や買収を思い浮かべるかと思います。
しかし近年は、中小企業がM&Aを活用するケースも徐々にですが増加しています。
そこで今回は、中小企業がM&Aを行うメリットや成功のポイント、案件の探し方などについて私見を述べてみようと思います。
中小企業のM&A件数が増加している理由
中小企業庁が公表しているデータによると、中小企業が絡んでいるM&Aの件数は、確実に増加していることが推測されます。
ではどうして、中小企業のM&Aが増加しているのでしょうか?
中小企業によるM&Aが増加している背景には、以下2つの理由があると思われます。
件数増加の理由①:多くの中小企業で事業承継のタイミングが到来している
最も大きな理由は、多くの中小企業で事業承継のタイミングが到来していることでしょう。
事業承継とは、先代の経営者(現経営者)から後継者(次期経営者)に、会社の経営権や資産を引き継ぐ行為を指します。
現在日本全国で高齢化が進行していますが、この傾向は中小企業の経営者にも当てはまります。
経営者の間でも高齢化が進行しているため、多くの中小企業では後継者に事業承継する必要性に迫られています。
しかし一方で、「自身の子供や従業員に会社を受け継いでもらえない」という課題を抱える中小企業(の経営者)も少なくありません。
子供や従業員に会社を引き継いでもらえなければ、経営者が亡くなったり体調を崩した時点で、やむなく事業を畳む必要が出てきます。
そこで最近では、自社を買い取ってもらう(M&Aをしてもらう)形で、全くの第三者に事業承継する件数が増えつつあります。
事業承継の新しい手段として「M&A」を選ぶ経営者が増えているために、中小企業がM&Aを行う件数が増加していると推測されます。
件数増加の理由②:エグジット手段としてM&Aが選ばれるようになった
中小企業の中でも「ベンチャー企業」は、長期的に事業を続けるというよりも、数年で急成長し、IPOかM&Aによるエグジットを目指すのが一般的です。
エグジットを簡単に言うと、会社を成長させて多額の利益を得ること(厳密には異なりますが・・・)です。
一昔前まで日本のベンチャー企業は、IPOによるエグジットを目指すのが一般的でした。
しかし近年は、得られる額は少ないものの、より短時間かつ確実にエグジットしやすいM&Aを選択するケースが増えています。
こうしたベンチャー企業を取り巻く環境の変化も、中小企業のM&Aが増加している要因の一つと考えられます。
中小企業がM&Aを行うと得られるメリット
中小企業がM&Aを行う場合、期待できるメリットは下記の3つがあると思います。
メリット①:スピーディーに事業展開できるようになる
一般的に新規で事業を始める場合、その事業を成長させるためには多大な時間と費用がかかります。
時間や費用を費やしたとしても、必ず成功するとは限りません(むしろ失敗の方が圧倒的に多いですよね・・・)。
ただでさえ流行り廃りが激しい昨今に、一から事業を成長させるのはリスクが大きいです。
そこでM&Aにより既存事業を買収してしまえば、新規事業の成長に要する費用や時間を省略できます。
この点は、経営資源に乏しく、新規事業を一から成長させることが困難な中小企業にとっては、M&Aの大きなメリットだと思います。
メリット②:事業承継の手段になる
先ほどお伝えした通り、M&Aは中小企業にとって事業承継の手段にもなり得ます。
「後継者がいないから」などの理由で廃業してしまうと、それまで経営者が育ててきた会社の実績やノウハウなどが全て無になってしまいます。
せっかく順調にいっている会社を廃業するのは、非常に勿体無い事だと思います。
また、従業員にとってはある日突然職を失う事にもなります。
この通り会社をたたむと、経営者自身にとっても従業員にとっても損失が大きいのです。
しかしM&Aを活用すれば、会社を存続させられるので上記の事態が発生する心配はありません。
見知らぬ人に会社を渡したくない気持ちも分かりますが、会社自体が無くなってしまうよりはマシだと私自身は思います。
メリット③:たくさんの利益を得られる可能性も
M&Aにより会社や事業を売却すると、多かれ少なかれ売却代金を受け取れます。
業績が良い会社や将来性のある事業であれば、数千万円〜数億円もの価格が付く可能性もあります。
本来であれば稼ぐのに数十年かかる金額を、たった一回のM&Aで得られる可能性がある点は、中小企業の経営者にとっては魅力的なメリットだと思います。
※M&Aのメリットをよりくわしく知りたい方はこちら
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中小企業がM&Aを成功させるために意識したいポイント
M&Aって実は必ずしも成功するとは限りません。M&Aを進めるプロセスにはいくつかの落とし穴があり、油断すると大きな損失を被る恐れがあります。
ここでは、中小企業がM&Aを成功させるために、意識して気をつけたいポイントについてご紹介します。
会社を買う時は偶発債務に注意
もし買収した会社に多額の偶発債務がある場合、後々大きな損失を被る可能性があります。
偶発債務とは、今現在は債務ではないものの、後々債務になり得るものです。
例えば買収対象の会社が、製品の製造過程で環境汚染を行なっているとしましょう。仮にその環境汚染により健康被害が生じた場合、莫大な損害賠償責任を負わされるリスクがあります。
M&Aを行う際、どうしても帳簿上の負債(借入金など)だけ確認しがちですが、このように後々損失を及ぼし得る債務の方が実は怖かったりします。
買収後に思わぬ損失を被らないためにも、M&Aの際には偶発債務の存在も慎重に確認する必要があると思います。
情報漏洩のリスクを避ける
中小企業が売り手としてM&Aを実施する際は、特に情報漏洩に注意すべきだと思います。
M&Aの相手と交渉を進めていくプロセスでは、正確に価格を算定するために、基本的に買い手側に対して機密情報も含めた全ての情報を見せなくてはいけません。
仮にM&Aの相手に伝えた機密情報(秘伝の味など)が外部に漏洩してしまうと、自社の強みが失われ、結果的に利益などを十分に得られなくなってしまいます。
M&Aの交渉が白紙になった場合は、引き続き自社で会社経営を続けていく事になります。
その時の事も考えて、M&Aの際には情報漏洩を防止する意味で「秘密保持契約」を結んでおくのが大事だと思います。
秘密保持契約により、相手に伝えた情報を外部に漏洩しない旨と漏洩があった際の賠償責任を約束する事で、自社の秘密が漏洩するリスクを低減できるでしょう。
中小企業がM&Aの案件を見つける(成約させる)方法は?
中小企業がM&Aを実施する際、買い手もしくは売り手を見つけなくてはいけません。
大企業であれば「証券会社」や「銀行」などから紹介してもらえますが、中小企業が行う小規模なM&Aは取り扱ってもらえない可能性が高いです。
そこで中小企業がM&Aを行う際は、下記2つのうちいずれかの方法で案件を見つけるのがオススメです。
M&Aの仲介会社に案件を紹介してもらう
世の中には、中小企業や零細企業が行うM&Aの仲介業を行う仲介会社が存在します。
具体的には、「日本M&Aセンター」さんや、「株式会社ストライク」さんが当てはまると思います。
こうした仲介会社さんにM&Aの案件を紹介してもらうのが、中小企業が取り得る最も一般的な選択肢でしょう。
仲介会社の多くは、単なる案件の紹介に留まらず、契約書の作成や公平な立場での買収価格算定なども行なっています。
そのため、M&Aについて詳しく知らない中小企業の経営者の方でも、安心してM&Aを進めていけると思います。
案件探しから契約締結までを一括でサポートしてくれる点で、中小企業がM&Aを実施する際に仲介会社に相談するのはとてもオススメです。
インターネット上で案件を探す
至れり尽くせりの仲介会社さんですが、M&Aのサポートを行なってもらうに際しては、多額の手数料が発生してしまいます。
数百万円〜数億円もの費用がかかる為、そもそも資金繰りが苦しい中小企業にとっては、あまり仲介会社には相談したくないというのが本音だと思います。
そんな中小企業の経営者の方にオススメなのが、インターネット上でM&Aの案件を探す方法です。
「M&A 案件」や「会社売買 案件」と調べていただければ、M&Aの案件が一覧で乗っているサイトや掲示板が数多くヒットします。
そうしたサイトや掲示板の場合、仲介会社を介す場合と比べて、必要な手数料が安いケースが多いです。
小規模なM&Aを行いたい方や資金繰りが苦しい方は、インターネットでM&Aの案件を探すのも一つの手でしょう。
中小企業のM&Aに関して、自分が最低限知っておいた方が良いと思う事は以上になります。
今回ご紹介した情報を基に、中小企業を経営している方は、M&Aという選択肢について前向きに考えてみてはいかがでしょうか?