既存の事業を拡大したり新しい事業を立ち上げる際には、必ずと言って良いほど資金調達が必要となります。
資金調達が重要なのは何も大企業に限った話ではなく、中小企業も同様です。
今回の記事では、中小企業の現状を熟知した中小企業診断士が、中小企業が活用できる資金調達の方法を詳しく解説します。
資金の調達を検討している中小企業の経営者や、個人事業主、フリーランスの方は必見です!
中小企業における資金調達の現状
まず初めに、中小企業における資金調達の現状を確認しておきましょう。
中小企業では、一体どのような資金調達の方法が用いられているのでしょうか?
中小企業における資金調達については、中小企業庁が公表している中小企業白書(2016)を基にご説明します。
ここで面白いのが、無借金経営をしている企業と、借り入れをしている中小企業で最も活用している資金調達の方法が異なるという点です。
無借金経営の場合は、資金調達の方法として「内部留保」を最も活用しています。次に、経営陣の個人資金を挙げています。
一方で借り入れをしている中小企業は、「金融機関からの借り入れ」により資金調達している割合が85.8%と圧倒的に多いです。
なおスタートアップや大手企業では馴染みのある出資(増資)については、無借金企業で1.5%、借り入れがある企業で0.6%と非常に低いです。
以上より、大半の中小企業にとって出資(増資)はあまり馴染みのない資金調達の方法であると言えます。
中小企業の資金調達方法
中小企業の資金調達方法は、「負債」、「株式の発行・交付」、「資産の売却」、「補助金・助成金」の4種類に分けられます。
この章では、それぞれの方法ごとにメリットやデメリット、具体的な手段について解説します。
負債を増やす形で行う資金調達
中小企業にとって最も馴染みがある資金調達方法と言えば、負債を増やすことで資金を調達することでしょう。
ほとんどの中小企業が活用している金融機関からの借り入れも、負債を増やす形で行う資金調達に該当します。
負債は簡単にいうと「借金」であるため、原則的には相手(銀行など)に元本を返さなくてはいけません。
また、ほとんどの場合有利子での借り入れとなるため、元本の返済に加えて利子の支払いが必要となります。
メリット
負債にも様々ありますが、共通して「資金調達後も自由に経営しやすい」というメリットがあります。
詳しくは後述しますが、株式の交付や補助金・助成金による資金調達では、仕組み上経営に口出しされやすくなったり、資金を調達するのに厳しい条件を満たす必要があります。
一方で負債は、元本や利子の支払いさえしていれば文句を言われないので、引き続き自由に会社を経営できます。
特に過去に返済実績があったり、安定的に良い業績をあげている中小企業であれば、有利な条件(低金利)で資金調達できたり、多額の資金を簡単な審査で調達できます。
デメリット
最も注意すべきデメリットは、元本の返済や利子の支払いにより、資金繰りが悪化するリスクがある点です。
どれほど安定的な事業を行っていても、政治や景気、取引先などの影響で収入が減少するリスクがあります。
毎月の返済額は基本的に変わらないため、収入が減った時期に赤字になる可能性があります。
赤字が続いてしまうと、最悪の場合廃業せざるを得なくなるリスクもあります。
特に中小企業は、事業による収入が不安定となりやすいので注意が必要です。
具体的な手段
負債による資金調達には、具体的に下記の手段があります。
・信用保証協会による制度融資
・銀行からのプロパー融資
・日本政策金融公庫の融資
・ビジネスローン
・社債の発行
株式の発行・交付による資金調達
発行した株式を交付し、その対価として現金を得る形で資金調達する方法もあります。
負債とは違い借金ではないため、受け取った現金を返済する必要はありません。
ただしこの方法で資金調達するほど、経営陣の持ち株(議決権)比率は低下します。
メリット
最大のメリットは、資金の返済や利子の支払いにより、資金繰りが悪化する心配がない点です。
利子や元本の支払いがないため、資金繰りの悪化を気にせず好きなだけ資金を調達できます。
また、経営のノウハウを豊富に持つVCや、会社を成長させた経験がある起業家に出資してもらえば、事業の成長をサポートしてもらえます。
デメリット
デメリットは、経営陣の持ち株比率が低下し、意思決定をスムーズにできなくなるリスクがある点です。
株式会社では、重要な事項(事業売却や取締役の解任など)を株主総会により決議します。具体的には、議決権株式のうち一定数以上の賛成を得られれば、決議が可決されます。
経営陣が議決権のほとんどを持っていれば、スムーズに重要事項を決議して次の行動に移ることが可能です。
しかし、発行した株式を第三者に渡すほど経営陣の持ち株比率は低下します。
その結果、重要な意思決定のたびに外部株主からの賛成を得る必要が出てきて、スムーズに事業を運営できなくなります。
最悪の場合、決議の内容に反対されて実行に移せなかったり、一定数以上の議決権を握られて経営陣では何も決定できなくなるリスクもあります。
具体的な手段
株式の発行・交付により資金調達には、主に下記の手段があります。
・既存株主への株主割当増資
・VC(ベンチャーキャピタル)からの出資
・エンジェル投資家からの出資
・新株予約権の発行
・M&A(株式譲渡など)
特にベンチャーと呼ばれるような中小企業は、VCからの出資やエンジェル投資家からの出資により資金調達するケースが多いです。
また、M&Aにより会社や事業を売却して、次の事業を行うための資金を調達するケースも増えています。
下記のサービスでは、どのくらいの値段で自社を売却できるかを、無料で簡単に調べることができるそうです。
M&Aにより資金調達したい方は、まずはこうした無料査定で調達できる金額を知っておくと良いでしょう。
資産を売却する形で行う資金調達
外部の第三者に頼らなくても、自社が抱えている資産を売却すれば資金調達できます。
事業で使っている機械設備や在庫はもちろん、売掛債権や営業権といった目に見えない資産もお金に換えることができます。
メリット
最大のメリットは、余分な手間やリスクを負わずに資金を調達できる点です。
負債や株式の交付による資金調達には、元本の返済義務や議決権を握られるといったリスクがあります。
加えて事業の収益性や安定性を審査されるため、ある程度時間や手間もかかります。
一方でこの方法は、自社が持っている資産を売却するだけなので、手間もリスクもほとんどかかりません。
また、最短で即日から調達できるケースも多いため、今すぐ資金を調達したい中小企業には最適な方法です。
デメリット
手軽かつリスクなく資金調達できるものの、希望する金額を調達できるとは限りません。
例えば事業用の機械設備は、使用期間が長いほど劣化しているため、買った時よりも圧倒的に安い値段でしか売却できないケースが多いです。
具体的な手段
中小企業が実行できる具体的な手段としては、下記のものがあります。
・在庫の売却
・有価証券の売却
・ファクタリング
・営業譲渡(事業譲渡)
まとまった金額を即座に調達したい場合には、ファクタリング(売掛債権の売却)がおすすめです。
ファクタリングは、簡単にいうと後からもらえる売掛金を、前倒しで今すぐ貰える方法です。
取引先や売掛金の金額が多いほど、短時間で多額の資金を調達できるのがファクタリングの魅力です。
具体的にどのくらいの資金を調達できるかは、下記のリンク先で手軽に診断できるようです。
無料である上に、詳細な個人情報を入力せずに調達額をチェックできるので、安心して利用できます。
中小企業の経営者はもちろん、個人事業主やフリーランスでも利用できる点もおすすめポイントです。
補助金や助成金の活用
意外と知られていませんが、国や地方自治体が運営している補助金や助成金を活用して、資金調達する方法もあります。
新規事業や起業はもちろん、IT導入や事業承継、海外進出、人材確保など、あらゆる目的に応じた補助金や助成金が用意されています。
メリット
最大のメリットは、返済義務がない上に議決権の一部を渡す必要もない点です。
資金繰りが悪化するリスクや経営権を失うリスクがないため、基本的に自由に資金を利用できます。
デメリット
国や地方自治体が運営している制度であるため、受給するためには厳しい条件を満たさなくてはいけません。
加えて、条件を満たしても必ず資金を調達できるとは限りません。
そのため、補助金や助成金のみを頼りにした資金計画はオススメできません。
具体的な手段
中小企業が活用できる補助金や助成金には、主に下記のものがあります。
・IT導入補助金
・小規模事業者持続化補助金
・キャリアアップ助成金
・人材確保等支援助成金
中小企業の資金調達まとめ
今回は、中小企業の資金調達について、現状や具体的な方法をご紹介しました。
多くの中小企業は、金融機関からの借り入れに頼っているのが現状です。
しかし世の中には、金融機関からの借り入れ以外にも、さまざまな資金調達の方法があります。
置かれている状況次第では、借り入れではない他の資金調達方法が適している可能性もあります。
例えばまとまった資金を得たいならば事業売却や増資、今すぐ資金を得たいならばファクタリングが適しているでしょう。
中小企業が資金調達を成功させるには、自社に適した最適な方法を見つけ出すことが重要となります。