スターバックスといえば、世界的に大成功しているコーヒーチェーン店です。
今や世界中に多くの固定客を抱えるスターバックスですが、その創業は1971年とけっして早くありません。
一般的にビジネスの世界では、いち早く市場に参入した企業ほど有利(≒先発優位性がある)と言われています。
1970年代にはすでにたくさんのコーヒーチェーン店があったため、スターバックスは後発企業でした。
それにも関わらず、スターバックスはアメリカを中心に多くの顧客から支持を集めてきました。
ただ単に成功しているどころか、一般的なコーヒーチェーンよりも高い価格帯であるにも関わらず、老若男女から大人気です。
ではなぜ、後発である上に価格面でも特段有利でないスターバックスが大成功したのでしょうか?
今回の記事では、スターバックスが成功した要因を経営戦略の側面から考察していきます。
スターバックスの経営戦略=差別化に基づくマーケティングの徹底
スターバックスの経営戦略を一言で表すと、「差別化に基づく徹底的なマーケティング」です。
「差別化に基づくマーケティング」こそが、スターバックスがコーヒーチェーンとして世界的な大成功を収めている要因と言えます。
差別化戦略とは、顧客にとって魅力的な独自性を打ち出すことにより、値段以外の面で競争優位性を確立する経営戦略です。
つまり、競合他社とは異なる価値を顧客に提供する経営戦略=差別化戦略というわけです。
数あるコーヒーチェーン店の中で後発企業であるスターバックスが成功したのは、先発の企業とは異なる価値を顧客に提供したからに他なりません。
では一体、スターバックスは既存コーヒーチェーンに対して、どのような差別化を図ってきたのでしょうか?
次章からは、スターバックスが実践している差別化の内容をお伝えします。
「ビジネスで成功するには差別化が大事!」こんな感じのフレーズを、経営やマーケティングに携わる方であれば一度は耳にした経験があると思います。考えてみると差別化は大事だなあ・・・と何となくは思うでしょうが、差別化はなぜ大事なのでしょうか?[…]
「商品」ではなく「体験」の提供
スターバックスが成功した最大の理由は、「体験」を顧客に提供することで差別化を実現した点にあります。
スターバックスができるまでは、カフェといえば「コーヒーを飲む場所」というイメージが一般的でした。
しかしスターバックスを創業したシュルツ氏は、「居心地の良さを体験できる場所」としてスターバックスを始めました。
具体的には、内装をお洒落にしたり、ソファの設置やゆったりとした音楽を流すことで、くつろぎやすく居心地の良い空間を作り出しました。
つまり既存のカフェチェーンが「商品」を提供する一方で、スターバックスは「体験」を提供するという形で差別化を行ったのです。
一般的に、後発企業が先発企業と同じような商品・サービスを同じ値段で提供する場合、多くの顧客は見慣れている・使い慣れている既存企業の商品・サービスを利用します。
そのため、価格面で勝負しない限り後発企業が先発企業に勝つのは困難です。
一方でスターバックスの場合、既存のカフェとは抜本的に異なるコンセプトを打ち出したため、消費者に「後発のカフェ」ではなく「スターバックス」という独自のブランドとして認識されたのです。
だからこそ、後発かつ値段が高くても多くのファンを獲得できたと考えられます。
商品やサービスをたくさん売るには、一体何を重視すれば良いのでしょうか?このような問いを投げかけられたら、多くの人は性能の良さや利便性の高い商品・サービスを作れば良いと思うでしょう。確かに間違ってはいませんが、もしかしたらそれだけでは[…]
多くの人が集まる洗練された地域への出店
スターバックスの経営戦略を分析してみると、出店地域にも大きな特徴があります。
具体的にスターバックスでは、洗練された地域に店舗を出店する経営戦略をとっています。
たとえば東京で言うと、丸の内がある千代田区や六本木がある港区、表参道がある渋谷区など、流行に敏感な人が多く、かつオシャレなイメージの強いエリアに多くの店舗を出店しています。
「いかにもスターバックスがありそうな街」に多くの店舗を出店するからこそ、スターバックスでは「高価格」や「オシャレ」、「洗練されている」といったブランドイメージを維持できているのです。
参考:スタバが「スタバのありそうな街」にある理由 読売新聞オンライン
企業名を押し出さない「デ・ブランディング」の活用
スターバックスの経営戦略を考える上では、「デ・ブランディングの活用」も無視できません。
デ・ブランディングとは、ブランド名を使わずにブランディングを行うマーケティング施策です。
スタバによく通う方ならご存知かもしれませんが、スタバのロゴには「スターバックス」というブランド名が入っておらず、人魚のイラストだけが描かれています。
「ブランド名を出さずに、ブランディングなんて出来るのか?」と思うかもしれませんが、ブランド名を前面に押し出すと、かえって営業っぽさが出て逆効果になるリスクもあります。
また、「Aブランド=a商品」といったように、特定のブランドに固定のイメージがついてしまい、新商品を販売する上で足かせとなる場合もあります。
当初スターバックスでも、ブランドのロゴにブランド名を載せていました。
ですが創業40周年のタイミングで、商品ラインをより広くしたり顧客に親しみを持ってもらう目的で、ロゴからブランド名を消しました。
その結果、常に消費者に対して新しいイメージを植え付けることに成功し、今でも新しいファンを獲得できています。
また、街中にロゴが自然に溶け込むことで、スターバックスというブランドに対する親しみやすさは高まったと言われています。
スターバックスの親しみやすさや新しさは、「ブランド名を出さない」という高度な経営戦略からもたらされているのです。
参考:スタバやナイキ、なぜあえてブランド名を「隠す」?自社を否定し成長する卓越戦略
顧客との双方向的なコミュニケーションの徹底
スターバックスは差別化の一環として、顧客との双方向的なコミュニケーションを徹底した経営戦略を実践しています。
たとえばスターバックスでは、テレビCMなどの広告を一切活用せず、SNS(ツイッター)で新商品の宣伝やアンケートを行っています。
テレビCMなどのマス広告は、どうしても情報の発信が一方通行となりやすいです。
一方でSNSの場合、若者にとって馴染みがある上に、アンケート機能などを活用できるため、双方向的なコミュニケーションを取りやすいです。
スターバックスは、SNSを用いた双方向のコミュニケーションを徹底することで、効率的にブランド知名度の向上や親しみやすいブランドの形成を実現しています。
その結果、メインターゲットとなる若者層から絶大な支持を集めることに成功しています。
少子高齢化や製品ライフサイクル(一つの製品が市場で生き残れる期間)の短縮化など、日本の企業を取り巻く環境はますます悪化しています。ただでさえ人口減少により顧客を獲得しにくくなっているのに、ようやく商品やサービスを開発して売り出しても、す[…]
スターバックスの経営戦略まとめ
スターバックスでは、商品やサービスはもちろん、店舗の立地やブランディング、顧客とのコミュニケーションなど、あらゆる面で既存カフェチェーンとの差別化を図っています。
徹底的な差別化戦略を推進した結果、同社は「スターバックスでしか体感できない価値」を確立できました。
こうしたスターバックスの経営戦略は、成熟した市場に後発参入したい企業にとって、モデルケースとも言える事例です。
今後飲食や小売などの成熟市場に参入したい起業家は、スターバックスの実践した経営戦略や具体的な差別化の施策からヒントを得ると良いかもしれません。
経営戦略とは、目標・ビジョンの達成や事業の成長に向けて、どのような戦い方で行動すべきかを明確にする指針です。 近年は、少子高齢化や大不況、経済のグローバル化などの影響により、単純に商品やサービスが優れているだけでは、長期的な存[…]