戦略的提携とは?メリットや種類、事例を徹底解説!

経営環境の変化が激しい昨今、一から経営資源を獲得したり、苦手な分野を克服するのは非効率かつハイリスクです。

いくら確度の高い経営戦略を策定しても、実現するまでに多大な時間を要する場合は、得られるメリットが半減したり、成功する可能性が下がったりします。

そこでおすすめとなるのが、他社との戦略的提携です。

他社と戦略的提携を行えば、よりスピーディーに販路拡大や新製品開発といった目標を達成できます。

今回の記事では、戦略的提携を検討している社長の方に向けて、メリットやデメリット、実際にあった事例をご紹介します。

戦略的提携(アライアンス)とは?

はじめに、戦略的提携がどのようなものかについて、M&Aと比較しつつ解説します。

戦略的提携の意味

戦略的提携とは、複数の会社が契約を締結した上で、お互いに連携しながらビジネスを行う戦略です。

なお戦略的提携は、「アライアンス」とも呼ばれています。

近年日本では、市場のグローバル化や製品ライフサイクルの短命化などにより、企業が単独で経営上の目標を達成することが難しくなっています。

そのような背景から、2021年現在では大手の株式会社を中心に、戦略的提携を行う企業が増加しています。

戦略的提携とM&Aの違い

戦略的提携と類似する戦略に「M&A」と呼ばれるものがあります。

複数の企業が関与する点では同じですが、基本的にはまったく異なる手法です。

M&Aとは、片方の会社が他方の企業またはその事業を買収したり、複数の会社が合併によって一つの法人格になる手法です。

要するに、M&Aでは経営権の移転が発生するわけです。

一方で戦略的提携は、M&Aとは異なり経営権の移転を伴わず、お互いの企業が経営の独立性を維持して行うものです。

言い換えると、戦略的提携では当事者となる会社の間で緩やかな関係性が築かれるのです。

戦略的提携の目的

NTTデータ経営研究所では、実際に戦略的提携を行った企業を対象にアンケートを行い、その結果が記載されたレポートを発表しています。

そのアンケートによると、企業がアライアンスを実施する目的は以下であることが分かります。

・既存市場における新製品、サービスの開発

・市場シェアの拡大

・新規市場における新製品、サービスの開発

・販路拡大

・コスト削減

・技術や知識、ノウハウ、人材の補完

新商品・サービスの開発や販路拡大など、売上の増加に直結する目的で戦略的提携を実施する企業が多いと言えます。

参考記事:企業間アライアンスの成功と失敗を分ける分水嶺とは?NTTデータ経営研究所

戦略的提携のメリットとデメリット

戦略的提携は、メリットとデメリットの両面がある経営戦略です。

メリットとデメリットを天秤にかけた上で、戦略的提携を実施するかどうかを決めるのが重要です。

メリット

戦略的提携を実施すると、主に以下に挙げた5つのメリットを得られます。

スピーディーに事業を展開できる

戦略的提携では、複数の企業が作業を分担し合って販路拡大や製品の開発などに取り組みます。

また、ただ単に業務を分担するだけでなく、お互いの経営資源を活用しあうことで、生産性や効率性の向上にも努めます。

そのため、自社のみで事業を行う場合と比べて、よりスピーディーに目標を達成できます。

業界内における競争力が高まる

お互いが持つ弱みの補完やシナジー効果の発生、生産規模の拡大など、戦略的提携で期待できる効果は多岐にわたります。

こうした効果を享受することで、競合他社に対する競争力は大幅に高まります。

競争力が高まることで、「より顧客のニーズを満たす商品の開発・販売」や「市場シェアの大幅な拡大」といったメリットを得られるでしょう。

協力関係を簡単に解消できる

一度M&Aによって事業や会社を取得すると、後から買収や合併を無かったことにはできません。

一方で戦略的提携は、あくまで契約に基づいた関係です。

そのため、想定していた効果を得られないと判断したら、すぐに協力関係を解消することが可能です。

事前の想定よりも効果を得られないと判断したタイミングですぐに提携関係を解消すれば、資金や時間などを無駄にせずに済みます。

提携先の業績や戦略に左右されない(独立性を維持できる)

戦略的提携では、お互いに経営の独立性を維持し続けることができます。

そのため、仮に提携先の業績が悪化しても、自社にまで深刻な影響が及ぶリスクは低いです。

また、パートナーとなる企業の経営戦略などに従う義務もないため、引き続き自由に企業経営を行えます。

M&Aと比べて手軽かつ低コストで実施できる

M&Aの場合、買収費用や仲介会社への手数料などで多大な労力や費用がかかります。

一方で戦略的提携は、提携相手と契約を締結するだけで実現できます。

そのため、M&Aよりも圧倒的に手軽かつ低コストで、他社の技術やノウハウなどを利用した事業の運営が可能となります。

デメリット

一方で戦略的提携には、以下に挙げた2つのデメリットがあります。

デメリットも十分理解した上で、アライアンスを実施するかどうかを決定しましょう。

自社の技術やノウハウを相手に奪われるリスクがある

お互いに別の法人である以上、戦略的提携が永久的に続くケースは基本的にありません。

お互いに共同の目的を達成したら、その時点で提携関係は解消され、再びライバル同士に戻ることがあります。

そのため戦略的提携の最中には、相手企業からノウハウや技術といった強みを吸収しようとする動きが活発になる可能性があります。

こうした動きが活発化すると、自社にとって競争優位性であるノウハウなどを相手に奪われてしまい、自社の強みが失われる事態になり得ます。

戦略的提携を実施する際は、協力と同時に「強みの奪い合い」が発生し得ることを忘れないようにしましょう。

情報漏洩によって取引先や顧客に損失を与えるリスクがある

取引先や顧客に対して損失を与えるリスクがある点も、戦略的提携にあたって注意すべきデメリットです。

複数の会社が協力して商品開発や販路拡大を行うには、お互いが持つ顧客や取引先の情報を提供しあう必要があります。

相手企業が情報をずさんに管理していると、取引先や顧客に関する機密情報が外部に漏れてしまうリスクがあります。

最悪の場合は、金銭面で実害が生じることもあり得ます。

こうした事態を避けるためにも、秘密保持契約をしっかり締結した上で戦略的提携に取り組むようにしましょう。

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戦略的提携の種類

戦略的提携は、大きく「業務提携」、「資本提携」、「資本業務提携」の3種類に分けられます。

この章では、それぞれの概要や方法をわかりやすくご説明します。

業務提携

業務提携とは、業務に関する分野について複数の企業が協力し合うことです。

具体的に業務提携は、「販売提携」、「生産提携」、「技術提携」の3種類に大別されます。

販売提携

販売提携とは、商品やサービスの販売面で戦略的提携に取り組むことです。

相手企業と自社のブランド力や販売網、販売員などの経営資源を相互活用し、売上の増加や販路拡大、シェア向上などを目指します。

新しい分野に事業を広げるケースや、技術力・企画力と販売力のいずれかを弱みとする企業同士が協力する場合におすすめの手法です。

具体的には、以下にあげた手法で販売提携を実施します。

・フランチャイズ契約:特定のサービス・商品を提供する権利を本部から与えてもらった上で事業を行い、対価として継続的にロイヤリティを支払う(物流の業界などで一般的)

・販売店契約:メーカーから商品を仕入れて、在庫を抱えながら販売を行う(自動車の業界などに多い)

・代理店契約:ある企業の代わりに商品を販売し、対価として手数料を受け取る(保険の業界などに多い)

生産提携

生産提携とは、片方の企業がもう片方の企業に対して、一部の生産について委託する手法です。

委託する側にとっては、自社の生産規模を上回る量を生産することで、売り上げを増やせる点がメリットです。

一方で受託する側は、設備の稼働率工場の効果を期待できます。

技術提携

技術提携とは、お互いに技術を提供しあったり、共同で技術開発に取り組むことです。

技術開発のスピード向上や、技術開発にかかる費用の削減(リスク分散)などのメリットが期待できます。

資本提携

資本提携とは、片方が他方の企業に出資し、その対価として株式を取得する形で協力関係を築く戦略的提携の手法です。

また、お互いに相手企業の株式を持ち合うケースもあります。

M&Aとは違い、相手企業の経営権を取得しない範囲で株式を持つことが大きな特徴です。

出資を受ける側にとっては、事業に必要な資金を調達できる点がメリットです。

一方で出資する側にとっては、投資することで相手企業との関係性を強固にできる点がメリットです。

ただし、出資を受け入れる側には、相手企業から経営に介入されるリスクが高まるというデメリットが生じます。

また双方に共通するデメリットとして、資金や株式(議決権)の移動を伴うため、業務提携と比較して関係を解消しにくい点が挙げられます。

資本業務提携

資本業務提携とは、資本提携と業務提携の双方を行う手法です。

つまり、出資や株式の交付を行った上で、販売や生産、技術開発などの面で戦略的な提携を図るわけです。

単なる資本提携や業務提携と比べて、より強固な協力関係を築けるのが特徴です。

資金面でも事業面でも連携するため、より販路拡大などの目標達成の可能性も高まるでしょう。

ただし、M&Aに近い形で連携を図るため、関係性を解除するのは困難なので注意が必要です。

戦略的提携(アライアンス)の事例

これまでに多くの企業が、競争力の強化などを目的に戦略的提携を実施してきました。

そこでこの章では、特に有名な戦略的提携の事例を3つご紹介します。

具体例①:トヨタとソフトバンク

2018年4月、自動車メーカーのトップ企業である「トヨタ」と、日本を代表する携帯会社「ソフトバンク」の戦略的提携が発表・配信されました。

両社は戦略的提携の一環として、共同で「MONET Technologies」という会社を設立しました。

2019年2月から事業を始めた同社は、ソフトバンクが持つ「スマートフォンなどのデバイスからデータを収集・分析するプラットフォーム」の技術と、トヨタが持つ「モビリティサービスプラットフォーム(コネクティッドカーの情報基盤)」を連携したサービスを展開するとのことです。

具体的には、利用者の需要に応じて好きなタイミングで配車を行えるサービスや、移動中に料理を作って宅配するサービスなどを提供するそうです。

また、地域社会が抱える課題(交通の不便さなど)に対応するソリューションの誕生・普及も予想されています。

※参考

ソフトバンクとトヨタ自動車、新しいモビリティサービスの構築に向けて戦略的提携に合意し、共同出資会社を設立

ソリューション MONET

具体例②:楽天と日本郵便

2020年12月、金融やITなど幅広い事業を展開する「楽天」と、国内の経済を牽引してきた日本郵便が戦略的提携を発表しました。

両社が戦略的提携による実現を目指すのは「物流のDX化」です。

この戦略的提携では、楽天が保有している受注データの運用や需要予測に関するノウハウと、日本郵便が有する物流網や膨大な荷物データを活用し合うとのことです。

それにより両社は、荷物を出荷する企業や受け取る消費者、物流業者など、すべてのユーザーが満足できる物流プラットフォームの構築を目指すそうです。

具体的には、効率的な配送システムの構築や、荷物を受け取りやすくするためのアプリ開発などを実施する予定です。

両社の戦略的提携が進むにつれて、物流のデジタル化は急速に進むでしょう。

※参考

日本郵便と楽天、物流領域における戦略的提携に向けて合意 楽天

楽天、日本郵便と物流提携 日経新聞

具体例③:LINE Payとメルペイ

2019年3月、LINEの子会社である「LINE Pay」とフリマのアプリを手掛けるメルカリのグループ子会社「メルペイ」の戦略的提携がPRされました。

両社は、両社いずれかの決済方法を導入するだけで、両方のサービスを使えるようにする目的で戦略的提携を行いました。

この戦略的提携によりユーザーは、ポイントを貯めやすくなるなどのメリットを得られるようになっています。

以上より、ユーザーの利便性を重視した戦略的提携であったと言えるでしょう。

※参考

LINE Payとメルペイが提携、2019年初夏にも加盟店相互開放へ 日経クロステック

【LINE Pay】メルペイと戦略的業務提携 LINE

戦略的提携(アライアンス)のまとめ

このコンテンツでは、戦略的提携のメリットやデメリット、種類を網羅的に解説しました。

お伝えした通り戦略的提携は、スピーディーかつ低リスクで販路拡大やサービスの開発などを実現する手段として非常に有効です。

メリットが大きいため、ソフトバンクや楽天といった大企業も戦略的提携を実践しています。

低迷している業績を回復させたい方や、事業を短期間で大きく拡大したい方は、ぜひ戦略的提携にチャレンジしていただければと思います。

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