SWOT分析は、自社の経営戦略を策定する上でとても有用なフレームワークです。
しかしSWOTが表す意味ややり方を知ったところで、いざ分析しようとなると中々簡単にはいかないと思います。
「強みや弱みは例えばどんなものを設定するのか?」とか「強みを活かして機会を掴むって例えばどんな戦略?」などの疑問が出てくるのも当然です。
そこで今回は、SWOT分析を用いて実在する有名企業を勝手に分析したいと思います。
SWOT分析を実際に使用する際の手助けとなれば幸いです。
なお今回は「アパレル業界」と「飲食業界」の中から、有名な2社を事例として取りあげます。
SWOT分析とは?SWOT分析の意味とやり方
そもそもSWOT分析とは、強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(opportunity)、脅威(Threat)の計4つの観点から分析することで、効果的な経営戦略を考えるフレームワークです。
企業の内部環境だけでなく企業を取り巻く外部環境も一緒に分析することで、多面的な視点から経営戦略を策定できる点がSWOT分析のメリットです。
SWOT分析は、まず初めにSWOTの4要素を整理し、そこから具体的な経営戦略を策定する形で進めていきます。
SWOT分析の概要や具体的なやり方については、過去の記事(以下のリンク先)で詳しく解説しています。
SWOT分析の基本について知りたい方は、下記の記事を是非ご参照ください!
SWOT分析とは、経営やマーケティングの戦略策定で用いられるフレームワークです。SWOT分析のやり方を知っておくと、質の高い経営戦略やマーケティング施策を立案しやすくなります。そこで今回は、SWOT分析を行う目的やメリット、やり方を[…]
SWOT分析の事例①:アパレル業のF社
まず一つ目の事例として、アパレル業界の大手F社を例としてSWOT分析を行ってみようと思います。
F社は国内最大のアパレルメーカーであり、近年は海外進出での大躍進を遂げています。
F社といえば◯ニクロのイメージが強いですが、実は◯UもF社のグループ会社が運営しているブランドだったりします。
そんなF社について、自分なりにSWOT分析をしてみようと思います。
手順①:SWOTの各要素について整理する
まず初めに、F社の強みや弱み、機会、脅威を整理します。
4つの要素を整理した結果は以下のようになります。
強み(Strength)
F社には、主に以下2つの強みがあると考えられます。
- マルチブランド戦略による幅広いターゲットへの訴求
先ほどお伝えしたように、F社では複数のブランドを運営(マルチブランド)しています。
比較的安い価格で高品質な商品を販売する◯ニクロや、圧倒的な安さやトレンド性を追求する◯Uなど、コンセプトの異なるブランドを複数展開することで、幅広いターゲット層への訴求を図っています。
アパレル市場内で多くの顧客から支持を得られている点は、F社最大の強みであると思います。
- SPA(アパレル製造小売業)のビジネスモデル
F社では、商品のデザインから原材料調達、製造・販売までの工程を自社で一貫して行う「SPA(アパレル製造小売業)」というビジネスモデルを行なっています。
本来なら他社に外注する部分を自社で行うことで、高品質の商品を安く販売するのを実現できています。
SPAによるコストリーダーシップ政策を実現できている点も、F社の大きな強みです。
弱み(Weakness)
一方でF社には以下のような弱みもあると考えられます(とは言っても業界全体で見ると素晴らしいですが)。
- 安さに訴求しているため高価格での販売が困難
安さを売りにしている以上仕方ない部分ですが、今から高価格で商品を販売しようと思っても中々難しいです。
「F社ブランド=安い」というイメージが幅広い顧客に根付いている以上、高価格な商品を販売しても中々顧客の支持を得にくい可能性があります。
- デザイン性がある商品が少ない
◯ニクロや◯Uなどのブランドは、安さやトレンド性の面では優れているものの、どうしても高級ブランドと比較するとデザイン性の面では劣ってしまいます。
安さを訴求している以上、デザイン面についてはある程度仕方がないかもしれませんが・・・。
機会(Opportunity)
機会としては、何と言っても「海外市場での人気上昇」が挙げられます。
収入が増加してきた東南アジアや中国の人から幅広い支持を集めており、主要ブランドでは前年比で2桁台の増収を記録するほど業績が好調です。
脅威(Threat)
ユニクロが直面する脅威としては、以下の2点が考えられます。
- 海外ブランドの国内進出
近年はZARAやH&Mなど、海外アパレルブランドの国内進出が加速しています。
若干値段は高いもののデザイン性が優れている海外ブランドの商品は、多くの顧客から支持を集めるに至っています。
この影響により、F社のブランド含め国内アパレル企業の多くは苦戦を強いられるようになりました。
- インフレによる人件費上昇
F社は製品の製造を中国や東南アジアで行なっています。
しかし近年は、中国や東南アジアの経済発展に伴い、現地人材の人件費も増加傾向にあります。
それにより、これまで通りの低コストで製品を製造するのが難しくなっています。
手順②:SWOT分析の結果から経営戦略を考える
SWOT分析の結果が出たら、それを基に経営戦略を考えます。
例えばですが、F社の場合は以下のような戦略を考えていきます。
- 強み×機会:SPAにより生産した低価格商品を海外で展開する
- 強み×脅威:SPA戦略をさらに強化し、インフレによる人件費上昇をカバーする
- 弱み×機会:デザイナーとのタイアップ商品を海外市場で売り出す
- 弱み×脅威:安さを全面的に追求し、低価格志向の顧客にターゲットを絞る
SWOT分析の事例②:飲食業界のS社
次に二つ目の事例として、ファミレスチェーンを展開するS社を事例として、SWOT分析を行なってみようと思います。
S社が展開するファミレスは、圧倒的な低価格で美味しい食事を楽しめる点で、ファミリー層や学生層から多くの支持を得ています。
そんなS社について、自分なりにSWOT分析をしてみようと思います。
手順①:SWOTの各要素について整理する
まず最初に、強みや弱み、機会、脅威について整理します。
4つの要素を整理した結果は以下のようになります。
強み(Strength)
S社の強みとしては、主に以下3つがあると考えられます。
- オーストラリアに自社農場を保有している
S社では、主力商品のハンバーグ類やドリア類に使う材料を、オーストラリアにある自社農場で作っています。
他社から仕入れるのではなく自社で作ることで、美味しいものを圧倒的な低価格で販売するのを実現しています。
- 徹底的な計画生産
徹底的な計画生産も、S社の強みである「低価格」を実現する要因の一つとなっています。
あらかじめいつまでに何kg生産すると決めておく事で、無駄な費用をかけずに必要な分だけ原材料を作るのに成功しています。
弱み(Weakness)
正直S社の弱みはあまり思い浮かばなかったのですが、強いて言うのであれば「安いから美味しくない」と思う人が一定数存在するのが弱みかなと思いました。
とはいえ、実際にはそんな人がいるのかも疑問なのであくまで参考までに留めておいてください汗
機会(Opportunity)
S社にとっては、「安いものをおなかいっぱい食べたい」と思う顧客が一定数存在するのが大きな機会となっていると思います。
高価格の商品は、不景気になると売れ行きが落ち込むかもしれません。
一方で低価格の商品は、不景気の時はもちろん好景気の時でも、お金がない学生などからは常に支持を集められます。
脅威(Threat)
S社にとっては、以下の2点が脅威となり得ると思います。
- 円安による原材料費の高騰
食品に使用している原材料には、自社工場以外から仕入れているものも当然含まれています。
ここ2〜3年は円安傾向にあるため、以前よりも原材料費が高騰している傾向にあります。
この点は、S社含め多くの飲食チェーンにとって脅威となっています。
- 若者の外食離れ
こちらも飲食業界全般に言えますが、近年の若者の外食離れは大きな脅威です。
ニッセイ基礎研究所のデータによると、30歳未満の支出額変化について、バブル期と比べると外食に支出する金額がおよそ半分程度減少しているそうです。
今現在も景気が大きく回復している訳ではないため、外食離れの傾向は続いていると推測できます。
このまま外食離れが続けば、S社にとっては好ましくない事態と言えるでしょう。
手順②:SWOT分析の結果から経営戦略を考える
S社についてもSWOT分析の結果を基に、取るべき経営戦略を考えます。
例えばですが、S社の場合は以下のような経営戦略が考えられます。
- 強み×機会:計画生産や自社農場生産の強化により、低価格志向の客をさらに取り込む
- 強み×脅威:「外食でも十分安い!」と思わせるような、安さを訴求したプロモーション活動の実施
- 弱み×機会:プロモーション活動により、安いのに美味しい理由(自社農場の保有や計画生産など)をアピールする
- 弱み×脅威:原材料の高騰により味の品質を下げないように、複数の原材料先を確保する (リスクの分散)
SWOT分析の事例に関するまとめ
今回は、アパレルと飲食業界の大手2社を事例として、SWOT分析を実施してみました。
正直詳しく実態を知っている訳ではないため、そこまで質の高いSWOT分析とは呼べないと思います。
ですが裏を返せば、少ない情報からでもこんなレベルのSWOT分析はできてしまうのです。
自身の経営している会社であれば、なおさら質の高いSWOT分析を行えるでしょう!
今回の例を見て、SWOT分析の大まかなやり方を理解してもらえていれば幸いです。