商品やサービスを新しく販売する際、その商品やサービスを誰にどうやって販売すべきかは重点的に考えなくてはいけません。
消費者のニーズが多様化している昨今、ただ自社の売りたいものを手当たり次第に売っていては、会社経営を継続できるだけの利益は得られません。
商品・サービスを誰にどうやって販売するかを考える際、「ターゲットマーケティング」と呼ばれる手法がとても役立ちます。
マーケティングの数ある理論の中でも非常に基本的な理論であるものの、とても実用性が高いため知っておいて損はありません。
今回はターゲットマーケティングについて、意味やメリット、実施するプロセスなどを解説します。
ターゲットマーケティングとは
ターゲットマーケティングとは、自社事業のターゲットを設定した上で、そのターゲットに受け入れられるような商品・サービスの提供方法を考えていく手法です。
ターゲットマーケティングでは、市場を細分化(セグメンテーション)し、その中から最も自社に適している市場をターゲットとして(ターゲティング)、 そのターゲットに最も効果的なマーケティング手段を考えます(ポジショニング)。
一連のプロセス(セグメンテーション→ターゲティング→ポジショニング)の頭文字をとって、ターゲットマーケティングは別名「STP分析」とも呼ばれています。
要するにSTPの一連のプロセスを経ることで、お客さんに受け入れられる4P(商品、価格、流通手段、プロモーション)を考えるのが、ターゲットマーケティングの特徴です。
ターゲットマーケティングのメリット
ターゲットマーケティングの活用により、以下2つのメリットを得られると言われています。
メリット①:自社の取るべき戦略や施策を明確にできる
ターゲットマーケティングを行うと、どのような市場のどのような顧客がどのようなニーズを持っているかを大まかに整理できます。
顧客や市場について理解を深める結果、自社の取るべき戦略や施策を明確にしやすくなります。
たとえば学生で安さを重視している若い顧客層をターゲットとするのであれば、若者に人気のSNSや有名人などを活用して、安さを全面的に売り出したマーケティングが効果的かもしれないと判断できます(あくまで例えですが・・・)。
市場や顧客について理解を深め、自社の戦略や施策を明確にできる点はターゲットマーケティングの大きなメリットです。
メリット②:競争を回避できる
ターゲットマーケティングでは、STPのプロセスを通じて競合他社の戦略や立ち位置を把握できます。
競合他社と被らない立ち位置を確立する (ポジショニングを行う)事で、他社との競争を回避した上で収益を得られます。
他社と同じ土俵で競争してしまうと、価格競争や市場シェアの奪い合いにより、十分な利益を得られないリスクが高まってしまいます。
そのリスクを軽減できる点で、ターゲットマーケティングは効果的な手法と言えるでしょう。
ターゲットマーケティングのプロセス(手順)
ターゲットマーケティングのプロセスは、「セグメンテーション→ターゲティング→ポジショニング」の順番で進められます。
ここでは、ターゲットマーケティングの各プロセスについて詳しくご説明します。
①セグメンテーション(市場細分化)
ターゲットマーケティングでは、まず初めにセグメンテーションと呼ばれるプロセスを行います。
セグメンテーション(市場細分化)とは、ある市場を似たようなニーズを持つ消費者のグループに分けていくプロセスです。
セグメンテーションの基準としては、主に以下があります。
- ジオグラフィック基準
地域や気候、人口密度などの「地理的な」基準により市場を細分化する方法
例)関東と関西
- デモグラフィック基準
年齢や性別、所得などの「人」に関する基準で市場を細分化する方法
例)学生と社会人
- サイコグラフィック基準
価値観やライフスタイルなどの「個人の心理」に関する基準で市場を細分化する方法
例)インドアとアウトドア
- 行動変数基準
商品に対する知識や使用頻度など「行動」に関する基準で市場を細分化する方法
例)ライトユーザーとヘビーユーザー
上記の基準で市場を細分化することで、自社のサービスや商品に適したセグメントを明確にできます。
たとえばキャンプ用品を販売するのであれば、「インドアの人よりもアウトドアの人を対象とした方が良い」という具合に判断できます。
なおセグメンテーションを行う際には、細分化された各市場が以下5つの要件を満たす必要があるといわれています。
- 市場規模や顧客の購買力を測定できる
- マーケティングの活動ができる市場である
- 十分な利益を得られるほどの市場規模がある
- 細分化された市場毎に顧客の特徴が異なる(マーケティング施策に対する反応が異なる)
- 市場内の顧客を惹きつけられるマーケティングを行える
要するに、十分な利益を得られて、かつ自社がマーケティングを簡単に行える市場である必要があるのです。
②ターゲティング(標的市場の決定)
セグメンテーションが終わったら、ターゲティングのプロセスを実行します。
ターゲティングとは、細分化された市場の中から自社が狙う市場を決定するプロセスです。
ターゲティングを行う際には、自社の商品・サービスの性質や強みとなる経営資源などを基に、標的市場を決定するのがオススメです。
たとえば自社が学生向けのサービスや商品ですでにある程度成功しているのであれば、ノウハウを活かせる学生をターゲットとするのが良いかもしれません。
なおターゲティングの設定を考える際には、コトラーの考え方を参考にするのをお勧めします。
経営学者であるコトラーは、「無差別型」「差別型」「集中型」の計3つの標的市場の決定方法を提唱しています。
- 無差別型
セグメント間の違いを無視して、全ての市場に同じ商品を提供する方法です。
要するに、各セグメントに共通して受け入れられる要素に着目して、万人ウケする商品やサービスを提供する方法です。
消費者のニーズは多様化しているので、基本的には無差別型によるマーケティングはオススメできません。
ですが経営資源や知名度の面で強い大企業に限っては、食料品などを無差別型マーケティングで展開するのは効果的だと思います。
- 差別型
各セグメントごとのニーズに合わせて、それぞれで異なるサービスや商品を販売する方法です。
たとえばソフトバンクグループが、マルチブランドにより様々な価格設定のサービスを提供しているのは差別型マーケティングと言えるでしょう。
各市場のニーズに適した商品を販売するため、単一市場に集中する場合と比べて多くの収益を得られる可能性が高いです。
しかし一方で、各市場ごとにコストがかかるため、単一市場に集中する場合と比べて非常に多くのコストがかかってしまいます。
- 集中型
細分化した市場の中から、特定の1つの市場に集中して商品やサービスを開発・販売する方法です。
少ない経営資源を効率的に活用できるため、中小企業やベンチャー企業に適しているターゲティングの方法だと言えます。
一方でその市場で収益を得られなくなると収入源がなくなるため、相対的に相対的にリスクの高い方法でもあります。
ターゲティングのやり方を詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてください!
マーケティングの業務に携わる方や経営者であれば、「ターゲティング」という用語に馴染みがあると思います。新規事業を始めるに際して、ターゲティングは誰もが行うプロセスです。誰もが行うプロセスであるものの、事業の成功を左右する重要なマーケ[…]
③ポジショニング(自社の立ち位置の決定)
ターゲティングにより標的市場を決定したら、最後にポジショニングを行います。
ポジショニングとは、標的市場内の既存他社のポジション(価格設定や商品やサービスの持つイメージなど)を基に、自社の立ち位置を決定するプロセスです。
要するに、競争優位性を築けるようにマーケティングの4P(商品、価格、流通、プロモーション)を考えるプロセスです。
なおこのプロセスでは、「ポジショニングマップ」を用いるのが便利です。
ポジショニングマップとは、値段や品質、デザイン性などの軸を持った図表であり、視覚的に競合他社の位置付けを把握するのに役立ちます。
ポジショニングマップについては、下記サイトの記事が詳しく説明されていて参考になると思います。
価格やデザイン性などの観点から競合他社の立ち位置を把握し、自社の取るポジションを考えていきます。
よほどの事がない限り、競合他社がいないポジション(マップ上の空白部分)を狙った方が、競争を回避しながら利益を得られる点で良いと思います。
ターゲットマーケティングのプロセスは以上になります。
ターゲットマーケティングの効果を高めるには、より多くのターゲット顧客を効率的に獲得することが重要です。
ターゲット顧客を効率的に獲得する際には、GeAIneというサービスを活用するのがオススメです。
GeAIneでは人工知能により新規顧客の獲得を自動化できるため、少ないコストで効率的かつ労力をかけずにターゲット顧客を獲得できます。
無料での資料ダウンロードやお問い合わせで詳しいサービス内容を知ることができるので、ぜひ参考にしてください。
ターゲットマーケティングの限界
ターゲットマーケティングのメリットをご紹介しましたが、ターゲットマーケティングにも限界はあります。
年齢や年収、好みなどでセグメンテーションしたとしても、その中の顧客全員が全く同じニーズを持っているとは限りません。
たとえば辛いものが好きな人の中でも、好きな辛さの種類は一人一人若干異なるでしょう(唐辛子が好きな人もいれば、わさびが好きな人もいるでしょう)。
また同じ商品を購入しているからといって、全員が同じ動機でその商品やサービスを購入しているとは限りません。
ジュース一つとっても、単純に喉が渇いたから買う人もいれば、何となく日々の日課になっているから購入する人がいたりと、ニーズは様々です。
このように厳密にみていくと、顧客のニーズや商品を購入する動機は1人1人異なります。消費者のニーズが多様化かつ複雑化している昨今、事業を成功させる上では消費者の真のニーズを捉える重要性が増しています。
しかしターゲットマーケティングでは、このような1人1人の違いを無視して、顧客を一括りにして市場を考えます。
そのためターゲットマーケティングでは、顧客のニーズに適したサービスや商品を作り出す上でどうしても限界があります。
顧客のニーズを満たす事業を展開するには、顧客の行動を徹底的に観察し、真のニーズを見つけ出さなくてはいけません。
そこで考えられたのが「ジョブ理論」です。
ジョブ理論を活用すれば、顧客の行動観察を通じて、顧客の抱える真のニーズを満たすサービスや商品を考え出すことができます。
ジョブ理論については、以下の記事で使い方やメリットをまとめているので、是非ご覧になってみてください!
ビジネスで成功するには、顧客の持つ真のニーズを把握し、そのニーズを満たす商品やサービスを提供する必要があります。しかしアンケートやインタビューなどで得られる顧客のニーズは、実は真の意味でのニーズではないケースが大半です。というのも、[…]
ターゲットマーケティングに関するまとめ
今回の記事では、ターゲットマーケティングの意味やメリット、プロセスをご紹介しました。
顧客のニーズを掴む上では限界はあるものの、簡単に自社の取るべき戦略や施策を考えられる点でターゲットマーケティングは有用な手法です。
ただしターゲットマーケティングを行っただけでは利益は生まれないので、しっかりとターゲット顧客を獲得する施策も行いましょう。
ターゲット顧客の獲得では、前述した人工知能で新規顧客開拓を自動化できるGeAIneを活用するのがオススメです。