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イノベーションのジレンマとは?〜大企業や優秀な経営者ほど陥りやすい!?〜

イノベーションのジレンマ

ビジネスに携わっている方であれば、「顧客目線」や「顧客主義」、「お客様に寄り添う」、「顧客のニーズが第一」等のワードを一度は耳にした経験があるかと思います。

一見すると正しいように思えますが、実はこれが思わぬワナだったりします・・・。

「あんな経営者も優秀で、業界トップクラスの会社がどうして赤字に?」と思った事はありませんか? 

その背景には、「イノベーションのジレンマ」があるかもしれません。 

今回は、優秀な経営者や大企業こそ陥りやすい落とし穴である「イノベーションのジレンマ」について、意味や事例、解決策をご紹介します。

イノベーションのジレンマとは?

イノベーションのジレンマとは、ある市場で成功している企業が顧客の要望を重視しすぎるあまり、破壊的なイノベーション(次世代のサービスや技術)に対応できなくなり、結果的に業績や市場シェアを大きく低下させてしまう現象です。

イノベーションのジレンマは、「ハーバード・ビジネス・スクール」で教員をやっていたクレイトン・クリステンセン教授が書籍で発表した理論で、全米を中心に大きな反響を呼びました。

今では近代経営を代表する理論となり、大学ではもちろん、中小企業診断士の試験でも度々取り上げられる理論となっています。

イノベーションのジレンマは、身近な生活で例えると分かりやすいかもしれません。

ガラケーが主流だった頃、自分たち消費者は携帯業者(変な言い方ですが)に何を望んでいたでしょうか?ほとんどの方はガラケーに付いているカメラや着メロの性能向上を望んでいて、誰も「スマートフォン」みたいな万能なデバイスを望んではいなかったと思います。

しかしそんな中、スマートフォンが市場に出回ってからは、世の中の人の大半はガラケーの使用をやめてスマートフォンに移行したと思います。

仮に顧客の要望(ガラケーの性能アップ)にのみ応えていて、技術開発などを軽視している企業がいた場合、その後その会社はどうなっていたでしょう。

おそらく顧客シェアは大きく低下し、業績はまたたく間に悪化するでしょう。

このように、これまでとは全く異なる技術が市場の主流となった際、その技術に全く目もくれていなかった(つまりイノベーションのジレンマに陥っていた)企業は、たちまち業績を悪化させてしまいます。

少し考えれば誰でも分かりそうなことですが、冒頭にお伝えした通り、顧客を多く抱えている大企業や優秀な経営者ほど、イノベーションのジレンマに陥りやすいです。

大企業や優秀な経営者ほど、イノベーションのジレンマに陥りやすい理由は、次の項で解説します。

イノベーションのジレンマに陥る理由

イノベーションのジレンマに陥る背景には、主に以下3つの理由があると思います。

顧客の要望に耳を傾けすぎている

ある商品を利用している顧客は、性能の改善やバリュエーションの増加など、既存製品の延長線となる要望しか持ちません。

一方で、革新的な技術は顧客が発している要望から出てくる訳ではありません。

大抵の場合は、「世の中にとって役に立ちそう」とか「顧客はこのような課題を潜在的に抱えているだろう」と考えたベンチャー企業が生み出します。

そもそもお客さんのほとんどは、自分自身が潜在的に抱えているニーズや悩みに気づけません。気づけないがゆえに、既存製品の延長線上にある性能改良などの要望を発する訳です。

そして自分の悩みを「より革新的かつ効果的」に解決するサービスや製品が出てきたら、既存のサービスや製品の使用をやめて、新しいサービスや製品を使うようになります。

つまり何が言いたいかというと、「顧客の要望に耳を傾けてるだけでは、革新的な技術を生み出せないのではないか」という事です。

「お客さんの希望を満たす」事は一見すると100点の行動に思えますが、イノベーションのジレンマを引き起こす理由となり得るので注意が必要です。

大企業や合理的な考え方をする人にとって、革新的な技術やアイデアは魅力的に見えにくい

すでに成功している大企業にとって、イノベーションを起こす前の先進技術は、性能が劣る上に利益を生み出せるかどうか不明瞭であるので魅力的に見えにくい、という側面があります。

顧客の要望を聞いていれば十分利益を得られるにも関わらず、わざわざリスクの高い先進的な技術の開発に取り組もうとは中々思えないのが現実です。

これは何も間違いではなく、いたって合理的な話だと思います。

ほぼ確実に1,000万円得られる投資と、10%の確率で1億円得られるものの90%の確率で5,000万円の損失を出す投資がある場合、よほど資金に困っていない限りわざわざ後者を選ばないかと思います。

すでに確固たる地位を築いている会社(経営者)が、わざわざ自身の地位を失い得る意思決定を行うのは、リスクが高く合理的には思いにくいでしょう。

このように、大企業が合理的な意思決定を追求することも、イノベーションのジレンマに繋がる要因となるのです。

しかしながら、顧客からニーズが永続的にあるとは限りません。イノベーションが発生した時点で、簡単に自身の地位が脅かされるかもしれません。

イノベーションのジレンマを防ぐためには、ある程度リスクを負った挑戦をする必要もあると思います。実はその方が、かえってリスク分散になるケースが多いです。

ここら辺の話は、「多角化経営」や「ポートフォリオ効果」にも通ずる話だと思うので、機会があれば記事にしようと思います。 

※イノベーションの意味や種類について知りたい方は、下記の記事をご参照ください。

www.bizkurage.com

イノベーションのジレンマの事例

イノベーションのジレンマの事例は、何も技術力により製品を作る業界に限らず、様々な業界で巻き起こっています。その最たる例が「居酒屋業界」です。

バブル崩壊後長期的な不景気に陥った日本国内では、一時期低価格で幅広いメニューを揃える居酒屋が流行りました。 

そこで台頭してきたのが「W社(名前を出してトラブるのが怖いのでご想像にお任せします汗)」です。「豊富なメニューの中から、安くたくさん食べられる」というスタイルは、またたく間にお客さんたちの心を掴みました。

しかしその数年後から、食事のジャンルを絞ったり、食材の産地等にこだわったスタイルの居酒屋が流行るようになりました。

いわば飲食業界でのイノベーションとも呼べる事態が生じた事により、イノベーションのジレンマに陥っていたW社はイノベーションに対応できず、急激に業績を悪化させてしまいました。

上記の事例以外にも家電業界やカメラ業界等、日本国内だけでもイノベーションのジレンマと呼べる事例は数多く存在します。 

イノベーションのジレンマの解決策

企業の存続を脅かす「イノベーションのジレンマ」は、どのように解決していけば良いのでしょうか?

イノベーションのジレンマについて色々と考えた結果、以下二つの解決策を実行するのが良いという結論が自分の中で出ました。

両利きの経営(≒多角化)を実践する

「既存の儲かる事業は辞められないけど、イノベーションのジレンマには陥りたくない」と思うのであれば、既存事業と革新的な事業(≒技術開発やサービス展開)を両立すれば解決すると思います。

既存事業で得た利益を基に、リスクを抑えつつイノベーションとなり得る事業に取り組むことで、「既存顧客への対応」と「来たるイノベーションへの対応」を同時に実現できるでしょう。

両利きの経営(≒多角化)の実施により、片方の事業がダメになっても、もう片方で利益を得続けることが可能になると思います。 

多角化のメリットについては、以下の記事で解説しているので、もしよかったらご参考にしてください!

business-kurage.hatenablog.com 

顧客自身が気づいていないニーズを見出す

こちらは具体的な方法論となりますが、破壊的なイノベーションの源泉を掘り出すためには、顧客自身が「気づいていない(ここがポイント)」ニーズを見出すことが大切だと思います。

何故なら散々お伝えしたように、顧客自身は破壊的イノベーションのヒントを発信してはくれないからです。破壊的イノベーションの源泉は、顧客自身が気づいていない潜在的なニーズ(悩み)にあります

顧客との対話や観察を通じて、破壊的イノベーションの源泉となり得るニーズや課題を見つける事が、イノベーションのジレンマに対する解決策となるでしょう。

とはいえ、顧客自身が気づいていない課題やニーズを見つけるのは簡単ではありません。

そこで「イノベーションのジレンマ」の提唱者である"クレイトン・クリステンセン"が最近提唱した「ジョブ理論」の考え方が役立つと思います。

本を読んで学習しましたが、ジョブ理論はイノベーションを起こすことや新規事業を立ち上げる上で、非常に有益な考え方だと思います。

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