過去記事でお伝えしているように、少ない費用で売上高を増やす上では、新規顧客よりも既存顧客にフォーカスするのが得策です。
今回の記事では、既存顧客にフォーカスしたマーケティング施策として、「アップセル」と「クロスセル」の意味やメリットなどをお伝えします。
アップセルやクロスセルを成功させるポイントについても考察しているので、もしよければ参考にしてください。
アップセルとは
まず初めに、アップセルの意味と具体例をご紹介します。
アップセルの意味
アップセルとは、ある商品やサービスを購入した・購入を検討している顧客に対し、同種類のさらに高額な商品やサービスを販売する行為です。
以前4,000円の商品を購入した顧客に対して、同じ種類の商品でそれ以上の価格の商品をオススメして購入してもらいます。
アップセルが成功すれば、顧客の買う一商品あたりの収益を増やす効果が期待できます。
アップセルの具体例
例えば、MacBookの購入を検討している顧客に対して、より値段の高いMakBook Proをオススメして購入してもらうのがアップセルの一例です。
もう少し身近な例で言えば、スターバックスで通常のコーヒーを購入しようとした際に、より高価な水出しコーヒーをオススメされるケースがアップセルに該当します。
クロスセルとは
次に、クロスセルの意味と具体例をご紹介します。
クロスセルの意味
クロスセルとは、ある商品やサービスを購入した・購入を検討している顧客に対して、その商品・サービスと関連したモノを販売する行為です。
購入する(した)商品と一緒に使用することで、より満足度が高まるモノをオススメして購入してもらいます。
クロスセルが成功すれば、顧客一人当たりが購入する商品数を増やす効果が期待できます。
クロスセルの具体例
クロスセルは私たちの身近な場面で、頻繁に活用されているマーケティング手法です。
例えばスマートフォンを購入する際、必ずと言って良いほどスマホカバーや保護シールの購入を勧められます。
またファストフード店などの飲食店では、ある食べ物を頼んだ際に、飲み物や付け合わせの食べ物をオススメされるケースが多々あります。
アップセルとクロスセルの違いを端的に
アップセルとクロスセルの違いを端的に表すと、以下のようになります。
- アップセル→ある商品・サービスに関して「より高いモノ」を販売
- クロスセル→ ある商品・サービスに関して「関連性が高いモノ」を販売
スタバに行ってコーヒーを注文した際に、水出しコーヒーをオススメされるのが「アップセル」、一緒に食べるスコーンをオススメされるのが「クロスセル」と覚えれば分かりやすいかもしれません。
アップセル・クロスセルのメリット(目的)
アップセルとクロスセルは、それぞれやり方こそ異なるものの、行う目的やメリットは同じです。
アップセルとクロスセルのメリット(目的)は、「客単価・ライフタイムバリュー(LTV)の増加」です。
客単価は一回の買い物でお客さんが支払う総額、ライフタイムバリューとはある顧客が一定期間にわたり特定の企業に対してもたらす総利益をそれぞれ意味します。
客単価を単純な式で表すと、「商品単価(購入した商品の値段)×購入点数」となります。
例えばある顧客が、300円の商品2個と500円の商品を1個購入した場合、客単価は300×2+500×1=1,100円になります。
客単価の式を見て勘付く方もいると思いますが、アップセルは商品単価を上げる方法、クロスセルは購入点数を増やす方法です。
つまりアプローチが違うだけで、アップセルとクロスセルのいずれを行っても、最終的には客単価の増加に繋がるのです。
また客単価が増加すれば、それに伴ってライフタイムバリューも増加します(購買頻度などの条件変わらない限り)。
要するにアップセルとクロスセルには、既存顧客からの売上高を増やす効果が期待できるメリットがあるのです。
リレーションシップマーケティングの取り組みで、アップセルやクロスセルを取り入れると、よりマーケティングの効果が高まると思います。
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アップセル・クロスセルを成功させるポイント
アップセル・クロスセルは一見すると簡単な施策に思えますが、実際やるとそこまで簡単ではありません。
ただ闇雲にアップセルやクロスセルを実施すると、費用を無駄にかけて結果が出なかったり、かえって顧客の満足度を低下させる危険もあります。
この項では、アップセルとクロスセルを成功させるポイントをご紹介します。
既存顧客を対象とする
アップセルやクロスセルは、新規の顧客よりも既存顧客を対象とした方が成功すると言われています。
アップセルやクロスセルの手法で新規顧客にアプローチする場合、商品を手にとって確かめているタイミングで他の商品を勧めることになります。
その顧客が本当にその商品を購入する意思があるのか、もしくは提案する商品のニーズがあるのか分からない状況で提案することになるため、成功する可能性はあまり高くありません。
また信頼関係(自社に対するロイヤリティ)が全くない状態で、他の商品を勧めてしまうと、不信感を抱かれてしまい、かえって得られるはずの利益を得られなくなるリスクも出てきます。
一方で既存顧客であれば、その顧客の好みを知っている上に、顧客との関係性をある程度構築できている状態で、他の商品を勧めることができます。
そのため、新規顧客に対してアプローチする場合と比べて、アップセルやクロスセルが成功する可能性が高くなります。
1%でもアップセル・クロスセルの成功可能性を高めたいのであれば、既存顧客をターゲットとするのをオススメします。
顧客のニーズに合うものをオススメする(押し売りしない)
アップセルやクロスセルは、あくまで顧客のニーズに合うものをオススメする手法であって、決して押し売りで利益を増やす手法ではありません。
例えば焼き魚定食を食べたいお客さんに対して、より値段が高い刺身定食を押し売りして頼ませるとしましょう。
「高いお金を払ってまで刺身定食を頼んだけど、やっぱり焼き魚が食べたかった」とお客さんに思われてしまったら、かえって不信感を抱かれてそれ以降利用してもらえなくなるかもしれません。
顧客の満足度低下を招かないためにも、自社の利益視点ではなく顧客のニーズ視点で、アップセルやクロスセルを実施するのが重要です。
お客さんが欲しいものを的確に提案できれば、例え高い商品であっても、他の種類の商品であっても買ってもらえるでしょう。
顧客のニーズを知るには、過去のお客さんの購買履歴などを分析し、その人の持つニーズを分析するのが効果的です。
顧客のデータを基にマーケティングを行う手法は一般的に「CRM」と呼ばれており、顧客ロイヤリティの向上などに大きな効果を発揮します。
CRMについて知りたい方は、下記の記事を参照してみてください。
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アップセルとクロスセルのまとめ
今回の記事では、アップセルとクロスセルの簡単な意味やメリット、実施するポイントをお伝えしました。
既存顧客からの売上高を伸ばすのは、新規顧客の獲得コストを考えると非常に重要です。
身近なことからでも良いので、アップセルやクロスセルに挑戦してみても良いと思います!