競合関係にある他社に打ち勝つ為には、競合他社が容易に真似できない強み(≒コアコンピタンス)を持つ必要があります。
しかし競合他社と比べて、自社の持つどの経営資源が強みとなるのか、いまいち分からないという方も多いかと思います。
そこで今回は、自社の強みを理解する上で役立つ「VRIO分析」について解説しようと思います。
VRIO分析について知りたい方は必見です!
VRIO分析とは?
まず初めに、VRIO分析について最低限知っておくべき知識をご紹介します。
VRIO分析の意味
VRIO分析とは、「Value(価値)」「Rarity(希少性)」「Imitability(模倣困難性)」「Organization(組織)」の計4つの観点から経営資源を分析することで、自社の競争優位性(コアコンピタンス)を判別するための手法です。
「VRIO」がそれぞれ表すもの
Value(価値)
VRIO分析における価値とは、経済的な価値を意味します。
簡単にいうと、その企業に対してどれほどの利益をもたらすのかを表します。
より多くの利益をもたらしている経営資源ほど、「価値がある」とVRIO分析では判断します。
Rarity(希少性)
VRIO分析における希少性とは、市場における珍しさを意味します。
簡単にいうと、ある経営資源がその市場において、どの程度珍しいのかを表します。
あまり他社が持っていない経営資源ほど、「希少性が高い」とVRIO分析では判断します。
Imitability(模倣困難性)
VRIO分析における模倣困難性とは、経営資源を真似する難易度を意味します。
簡単にいうと、その経営資源を真似する(獲得する)事が、どの程度難しいのかを表します。
主に下記4つの要件に該当する場合は、模倣困難性が高いと言えます。
- その企業独自の歴史(過去の出来事)によって生み出されている
- 経営資源をどうやって獲得したか、根拠のある答えを出せない
- 顧客や取引先からの信頼や技術の進歩など、社会的な要因によって生み出された
- 特許権や商標権によって、経営資源が保護されている
Organization(組織)
VRIO分析における組織とは、経営資源を利用する組織(会社)を意味します。
組織体制が確立しており、その経営資源を使いこなせていれば、より競争優位性は高まります。
以前の記事で競争優位性について詳しく解説しているので、もしよければご参照ください!
ビジネスに携わる方であれば一度は耳にしたことがあるであろう「競争優位性」できるビジネスマンが使う印象がある用語ですが、意味がふわっとしていて、具体的に何を意味するのかイマイチよくわからないという方もいるかと思います。そこで今回は、自[…]
VRIO分析を行うとどんなメリットがあるの?
VRIO分析を実施すれば、以下3つのメリットがあると思っています。
メリット①:自社の競争優位性(コアコンピタンス)を詳細に分析・把握できる
競争優位性とは、他社と比べて優れている能力や経営資源を意味します。
具体的には、他社と差別化された製品やサービスを提供できる能力や、通常よりも低コストで提供できる能力が該当します。
VRIO分析では、資源を4つの項目に細分化した上で、競争優位性を分析できます。
ただ単に競争優位性の有無を分析できるだけでなく、競争優位性の強さを4段階で分析できるため、より詳細に自社の強みを特定できます。
これが、VRIO分析における一つ目のメリットです。
メリット②:より精度の高い3C分析やファイブフォース分析、SWOT分析を行える
VRIO分析で分析した競争優位性は、戦略を構築する上で役立つ他の分析にも応用できます。
例えば3C分析やファイブフォース分析では、自社の現状分析に役立てる事ができます。
またSWOT分析では、Strengths(強み)の項目として、VRIO分析の結果を用いる事ができます。
このように他の分析手法に応用できる点も、VRIO分析におけるメリットの一つです。
SWOT分析について詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧になってください。
SWOT分析とは、経営やマーケティングの戦略策定で用いられるフレームワークです。SWOT分析のやり方を知っておくと、質の高い経営戦略やマーケティング施策を策定しやすくなります。そこで今回は、SWOT分析を行う目的やメリット、やり方を[…]
VRIO分析の使い方
次に、VRIO分析の使い方をご紹介します。
VRIO分析では、「Value(価値)」→「Rarity(希少性)」→「Imitability(模倣困難性)」→「Organization(組織)」の順番で分析を進めていきます。
イメージ的には、前の項目を満たしていたら次の項目を満たしているか分析し、満たしていなければ次の項目の分析には進まない感じです。
具体的には、以下のようにフローチャート形式で進めていくと良いでしょう。
STEP1:Value(価値)があるか確認
まず初めに、経営資源に経済的な価値があるか(利益を生み出すものか)確認しましょう。
価値がある場合はSTEP2に進みますが、ない場合はこの時点で分析を終了します。
ある経営資源に価値がない場合、「競争劣位」にあると言えます。
そのままでは競合他社に業績や市場シェアの面で負ける恐れがあるため、早めに対策する必要があると言えるでしょう。
例えば「技術力」という経営資源が利益を生み出さないのであれば、利益を生み出せるまでに技術力を強化する必要があるでしょう。
STEP2:Rarity(希少性)があるか確認
経営資源にValue(価値)があると分かったら、次にRarity(希少性)があるかを分析します。
希少性があればSTEP3に進みますが、ない場合はこの時点で分析を終了します。
ある経営資源に価値はあるものの希少性がない場合、「競争均衡」にあると言えます。
経営資源に価値があれば、他社との競争に勝てると思うかもしれません。しかし希少性がなければ、他社が同じものを利用する事で競争劣位に陥る可能性があります。
利益を生み出す(価値がある)経営資源があれば、利益を得られる可能性が無いわけではありません。
しかし業界的にありきたりなもの(希少性がない)であれば、自社以外も同条件で事業を展開できるため、競争に負ける可能性があります。
極端な例で言うと、「自動車を作れる技術力を持っていても、他に自動車を製造できる会社は沢山あるから競争に勝てる(市場シェアを獲得できる)とは限らないよね」って話です。
競争優位性を築くためには、保有する経営資源に希少性も必要であると言えます。
STEP3:Imitability(模倣困難性)があるか確認
経営資源にRarity(希少性)があると分かったら、次にImitability(模倣困難性)があるかを分析します。
模倣困難性があればSTEP4に進みますが、ない場合はこの時点で分析を終了します。
ある経営資源に希少性はあるものの模倣困難性がない場合、「短期的な(一時的な)競争優位性」を持っていると言えます。
希少性がある経営資源であれば、他者が持っていないため競争優位に立てる可能性がとても高いです。
しかし希少性がある経営資源でも、後から模倣できてしまうケースも少なくありません。
例えば最新の金属加工技術を持っているとしましょう。現時点では確かに希少性が高いため、競争優位に立てます。
しかしその金属加工技術が、見よう見まねで真似できてしまうものであった場合、後々他社に同じ技術を模倣され、自社の競争優位性が失われてしまう可能性があります。
要するに、珍しい(希少性がある)経営資源であっても、簡単に真似できてしまう(模倣困難性が低い)場合は、あまり長くは競争優位性を維持できない可能性が高いという訳です。
長期的な競争優位性を築き上げる為には、価値と希少性に加えて「模倣困難性」を併せ持つ必要があるのです。
先ほどの例(金属加工技術)で言えば、特許などにより他社が商用できないようにするか、そもそも見よう見まねでは真似できないような複雑な技術である必要があると言えます。
STEP4:経営資源を活用できるOrganization(組織)が構築されているか確認
「価値」「希少性」「模倣困難性」の全てを併せ持っていれば、長期的な競争優位性をもたらし得ると分析できます。
しかしどれほど優れた経営資源を保有していても、それを使いこなせなければ「宝の持ち腐れ」となってしまいます。
スポーツで例えるならば、強い選手が揃っているにも関わらず、指導者の判断や指揮が誤っている為に負けてしまうイメージに近いです。
そこでVRIO分析では最後に、経営資源を有効活用できる組織が構築されているかを分析します。
組織作りが上手くいっていれば、経営資源を最大限に有効活用できる為、持続的な競争優位性を確立できる可能性が非常に高いと分析できます。
一方で組織作りが上手くいっていないと、「優れた資源を持っているにも関わらずそれを使いこなせていない為、持続的な競争優位性をイマイチ発揮できていない」と分析します。
経営資源を最大限に活用する為には、経営陣から従業員までが経営資源の特性や良さを十分理解し、全社的に競争優位性を築いていく事に注力する必要があります。
もっと簡単にいうと、「社内全体が一丸となって自社の強みを駆使しましょう」ってことです。
「宝の持ち腐れ」にならない為には、強みを活かせる組織作りにも注力していくのが大事だと思います。
VRIO分析を実施する際に役立つテンプレート
上記でお伝えしてきた通り、VRIO分析は経営資源の持つ競争優位性を分析する上で、とても役立つ手法です。
しかし使い方を知ったからと言って、いきなりVRIO分析を一から始めるのは、未経験者の方にとっては難しいかと思います。
そこでVRIO分析の使い方に不安を持っている方は、テンプレートを活用してみるのが良いと思います。
VRIO分析のテンプレートとは、VRIO分析で役立つチェックシートみたいなものです。
シートに書いている項目を埋めるだけで、誰でも簡単にVRIO分析を行えちゃうのでオススメです!
インターネット上で「VRIO分析 テンプレート」と調べていただくと、実務でも役立つテンプレートがたくさん公開されています。
今回は様々あるVRIO分析のテンプレートの中から、 「ferret」さんが公開している無料テンプレートをご紹介します。
こちらのテンプレートは、4つの評価項目ごとに「ABCの3段階評価」と「評価した理由」を記載できるシート形式になっています。
簡潔に見やすい上に、各項目ごとに3段階で評価のランクを付けられる点が良い部分だと思います。
無料でダウンロードできるようなので、VRIO分析のテンプレートが欲しい方は、下記のリンク先からダウンロードしてみてはいかがでしょうか?
VRIO分析のテンプレートです。…
VRIO分析のまとめ
今回はVRIO分析について、使い方やメリットなどを解説しました。
VRIO分析を用いることで、自社の経営資源がどの程度の強みを持っているかを分析できます。
今回ご紹介したVRIO分析は、戦略を考える上で特に重要な「競争戦略」を考える上で役立つ分析手法です。
経営戦略を策定する際には、今回お伝えしたVRIO分析以外にも、さまざまなフレームワークがあります。
他のフレームワークについても知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください!
経営戦略は大きく分けて、経営資源の配分や事業領域の決定などを行う「企業戦略(成長戦略)」と事業ごとに競争に打ち勝つための戦略を考える「事業戦略(競争戦略)」に分けられます。企業戦略にせよ事業戦略にせよ抽象的なので、決めようと思っても「ど[…]